〈前編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

16000字ほど〈前編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 サービス上の「透萌歌ともか」というハンドルネームの由縁は、この有名大手サービスの名称にボーイズとフレンズという単語が含まれていて僕はその名称を目にした瞬間に「とも……」と思ったからだ。その発想はなかったと思ったのだ。それを、そのまま、名前にした。
 いつ呼んでくれるかと、僕は待ったが、駅の改札まで、あたりさわりない会話になった。櫂人は事務用品、文具を取り扱う会社で働いていて、急にまともにこちらを見てセールスの口調で「手帳なども」とつけ加えるものだから、何かのユーモアなのかと思って、僕は古い漫画に出てくる手帳のギャグを言いかけて、我慢した。
 物静かで几帳面そう、でもユーモアのセンスがあるようだ、と僕は心のなかで情報を整理する。

 道中、手をつないでもいいかなと思ったときには、つまり何度か離しても、また、そっと手を伸ばし、つなげるときにはずっと手をつないでいた。その行動は全て僕からで、櫂人くんのほうから手をつないでくることは無かった。
 照れ屋さんかもしれないから、と僕はオーバーサイズの萌え袖に隠して、秘密なかんじで指を絡めてゆるくつなぐ。すると、しっかり掴み返してくる。それが可愛くて、掴み直してくるのが嬉しくて、見上げて僕は目を合わせたくて見つめる。しばらくして、顔が、ゆっくりちょっと気難しいような表情がこちらを向くから、僕はにこっと笑う。
 混雑した電車内で、僕はドアの端を背に、自然なモーションで腕を使って引き寄せた。
 ついさっき初対面とは思えない密着具合に、櫂人は最初は焦ったように間隔をとろうとしたけど、僕はくっついて小声で「混んでるから」と首元で囁いた。そして混みあった客がぎゅうぎゅうと押し合うなかで、手をつないでいた。
 デートなのだ。
 こうすることに慣れている僕も、ちょっと、どきどきした。今日これからの一日のプランについて考えなきゃと思うのに、走り出した電車の揺れと抱きこんでくる櫂人の体格とか、体温とか、手の感触を十二分に感じてしまっていた。
 手慣れた動作で自分から密着したのに、僕はだんだん余裕がなくなって、会話も、必要最低限みたいな、もうすでに言った「混んでますね」、「次の次でおります」、そんな会話しかできなかった。