〈前編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

16000字ほど〈前編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 混んでいるテラスから庭に下りた。
 森に囲まれているからか、空気が澄んでいるような、そこにいると気持ち良かった。緑の瑞々しい匂いが身体をつつむ。
 広い庭園は、アートのオブジェと、他の作家のアンティーク作品をあしらったデザインの東屋あずまやがある。
 周りに客がいないときを見計らって携帯で順に撮って、池と水路を目でたどっていると、横に歩いてきた櫂人が少しかがむようにして僕の顔をのぞきこむと言った。
「ツーショは、可能ですか」
 また先に言われた、と僕は胸の内で変な、くやしいような気持ちになりながら、「……はい」と答えた。
 そんな僕の様子に何か勘違いしたのか櫂人は
……無理なら」
 と潔くあきらめるような表情になって体を起こすので僕は慌てて、首を横に振って「いえ、ちがいます、無理ではないです。問題ありません」と言った。
 オブジェの前でツーショットを、並んでセルフィーで撮ろうとして肩の辺りに一瞬、何かの気配があった。
 はっと、そっちを振り返って、見た。
 櫂人は、おそらく、僕の肩に回そうとした手を持ち上げた。とても、気まずそうに。
 いえいえというふうに僕は喜んで、抱きついた。
 東屋ではその懐に身体をくたりと寄せるようにくっついた。

 ロビーでは他の客に、撮ってもらったりして、僕の携帯のフォルダには何枚も櫂人との写真が残る。見返したら、思い出して、今日のことを懐かしんでしまうだろう。
 今日でお別れなのに。
 このツーショットを撮った今日を思い返す未来を考えて、僕はすぐに考えるのをやめて、携帯の画面から顔を上げた。
 
 ミュージアムショップで僕は土産を何にするか悩んだ。これでここの出費も前提システム的には基本、櫂人持ちだ。
 小物チャームと限定カバー、マグカップと迷い、さらに繊細なミニチュアが飛び出る仕掛け本が欲しかったが、それらをねだるには、合計額が少し高くなりすぎる。
 でもこの仕掛け本はここで、買わないと手に入らない代物だった。マグカップも。
 完全に自分の好みで来た場所なのだから、櫂人には小物チャームをねだり、他は自費で買おう。
「自分用です」
 一式、購入バスケットに抱えたものを、一言断ったら、すっと取って櫂人は全部の会計を済ませるものだから、「ちがうのに……」と僕は不満な小声で呟いた。


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