〈前編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

16000字ほど〈前編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 デート当日、鏡に全身を映してコーディネートを確認する。
 初出勤、ちゃんとキャラを決めておかないと、と鏡に向かって表情から仕草まで可愛い子ぶって見る。ピアスも揺らしてみる。
 美容室に昨日行き、栗色の明るい髪も気合い入れ、出がけの最終チェック。しっかりヘアスタイルも決まっている。僕の髪はふわふわくせ毛なのでまとまるようヘアケアしないと、あまりに綿菓子の雲みたいなのだ。
 持ち物、よしとバッグの中も指差しチェック。
 身体に斜めにもかけられて、持ち手バンドもあるスポーティーでも落ち着いたかんじのバッグ。
 携帯を見る。
 昨夜の『彼』からの、意外な「待ち遠しい」という旨のメッセージを読み返し、深呼吸する。
 「待ち遠しい」なんて、僕が今朝送ろうと思っていたのに。先に言われてしまった。
 待ち合わせには、僕が先に着いて待っていなくては。
 最後に鏡にウインクして、スマイルを浮かべて、セルフィーを数枚撮った。
 画像で雰囲気を確かめて、そうか、何があるかわからない、『彼』の反応次第で全然違う、ゲームセンターとかカラオケとか予定変更あるかなと急に気づいて、焦った気持ちになりながら、靴を履く。
 電車に乗っているあいだも、なんとも、気分が乱高下する。窓に映る自分の立ち姿が固く、こわばっているのを見て取る。
 いやデート業慣れていると言い聞かせても男性相手は初めてなのだから緊張しても当然だ、大丈夫、こちらが連れ回すのだからわがままに何か多少失敗したってごまかせる、と自分を鼓舞する。

 六月の終わり、薄曇りの空は、陽射しはないけど予報では雨降る心配はないらしい。ちょうどいい天気。過ごしやすい、デートに最適な。ときおり気持ち良く清々しいかんじの風が吹くのを感じた。
 待ち合わせ場所に近づくにつれ、僕はそっと周りを見た。
 今日の僕は小さい襟のシャツの上にざっくり編んだような模様のオーバーサイズの、いわゆる萌え袖になるくらいの紺色のニット、太めのボトム。長く歩いても疲れないことを重視しながらも、抜け感のある装い。
 それから待ち合わせ相手にわかりやすいよう、おしゃれなアイテム、サングラスをかけていた。
 細い縁の、薄い色の付いた大きなレンズのサングラスをゆるくズラして、昼間の街の喧騒と歩く人々を見回す。
 待ち合わせ時刻まではあと十分ほど。

 【紺色と藍色が好きです。】と書いた僕の、ハンドルネームである「透萌歌ともか」のページを開いたのち、再度、自分の格好を見下ろす。
 そして『彼』とのやりとりを見返す。
 どんな人、かな。
 二十代半ば、ふたつ年下。
 特徴のない黒髪、今日はあきらかに地味でモノトーンなファッションで、とのこと。
 待ち合わせに際して……俺が見つけるからという言葉になんとなく、どきっとする。