〈前編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

16000字ほど〈前編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 登録して一週間が経ったが、何もなかった。
 信じられなかった。
 最初から直に、ユーザーから予約コンタクトの問い合わせメッセージが送られてくるシステムであったが、問い合わせは一件も無かった。
 自分の紹介ページに押される(いいね)リアクションも一件だけだった。それも匿名設定、たぶん、通りすがりの(いいね)一件。
 まだ『同性向けのレンタル彼氏』についてノウハウ情報はネットにはほとんど存在しなくて、調べられなかった。どうしたらモテるのだろうか。スタンプで一部をぼかしてもなお、造作が整っているとわかるルックスだけでは、足りないのか。
 女性には、どうモテるかもなんとなくわかって、ある意味、魔法使いの仮面を被っているようだったから、振る舞いやすかった。
 ここでは、どうキャラを作ったら、どんなふうにしたらいいかわからない。
 サイト全体を見てみると、みんなしっかりキャラ付けをしている。自分でキャッチコピーでアピールし、セールスコメントが付けられていた。
 あらためて、自分で書いた紹介ページと比べて、よりわからなくなった。
 プロフィールが変?
 僕は……

【紺色と藍色が好きです。】

 この最初の一文、これは常套句なのだけど……たいてい、これで興味を持ってもらえるし、会話もはずむ。
 何をどうしたらモテる、と僕はサイトのシステムのSNSのような、それぞれのミニブログに書きこまれているみんなの投稿をのぞいてみた。
 おしゃれだったり、いたわりだったり、どこかで見たようなおもしろネタだったり、日常を上手にキャラ付けで書いている。(いいね)も多い。
 僕だけ、これも変? 見習おうかなと、自分の投稿を見直した。
 先日、かぼちゃを切ろうとしたらセラミック包丁を折ったとか、書いている。その投稿には(いいね)は匿名一件。

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 引っ越しをして、コンロも二口に、広くなったキッチンスペースで新調したよく切れる包丁を使って自炊をしながら、いったい何を、(いいね)をもらうには書こうか……と考えていると、携帯スマホの画面に電子音と共に通知が表示される。

 日付と、一日コースを予約できるか、という短いメッセージだった。手短な文章。
 いざ、来てしまうと緊張すると思い、僕は迅速な返信を心がけて、でも、文面を悩んで、明るく軽い調子と丁寧と気遣いの配分を選び、返事を送る。

 既読スルーなタイプのようだった。

 素っ気ない文章と、こちらの長い文面と、既読の印が浮かぶやりとり。

 お金を払うのだから、こんなメッセージのやりとりでも、雰囲気から、デート前の気分を楽しめばいいのにと、僕は「どこに行きたい?」とできるだけ好みを聞き出したくて、でも文が長くならないようにと考えつつ、訊いた。希望はない、と返ってくるときのための行き先の候補もさりげなく付け足す。
 すると、なぜか、行きたい場所を訊ねてくる。
 こっちの希望なんて、なぜ訊くんだろう。初回から一日コースを予約するのだ。僕が、相手の、『彼』の望む理想のデートプランを作りたいのに。
 特別な一日デート。オートクチュールなプラン。

 最近の、定番の、デートの人気スポットもたくさん調べてあるけど、こっちの行きたいところへ、行動は自由にしていいなんて、そうじゃない、何も楽しいひとときの夢を魅せられないと思ったが、『彼』が望むなら、と僕は仕方なく、それでも言葉数少ない文面から『彼』の性格を想像して好みを予想して、いくつかの観光スポットを回ることのできるデートプランを考えた。