〈前編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

16000字ほど〈前編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 となりを歩く彼は無言で、横に立つと、やや鍛えていそうな体つきで、手足が長い。僕の顔の近くに、肩がある。携帯を持っている手が大きい。
 さっき、じろじろと人の目のある歩道のそばでは、落ち着いてやりとりできないと思って、腕で促したが、彼は一瞬、戸惑ったように僕を眼鏡の奥から眼をこらした。
 その、鋭いような眼付きに、僕は微かに身をすくめてしまった。可愛い子ぶって、事前のやりとりをするためだと言えなくて
「あの……
 ひとことつぶやいて、携帯を胸に、顔をあっちのほうに行きたいのだと、わかるようにわざとらしく動かす。
 それで、伝わったらしく、彼は考えるような表情で眼鏡に指を伸ばして、フレームにふれないで、下ろした。
 
 こちらを見ないなと横顔を横目で見上げた。
 無愛想、ぶっきらぼうそう、と言ってしまうには、まだ会ったばかりだ。
 こういう間隙かんげきに、自然に観察する。相手に気取られないように、様子をさりげなく。どんな性格か見極める。
 しかし重要なことにはっと気づいて僕は立ち止まった。
 自分の視界の薄い色、視界の端の細い縁。
 サングラスをしたままだ。
 外すのを忘れている。
 待ち合わせの目印で、ずっとかけているつもりではなかったのに、まだかけている。
 怪訝そうにまた彼も足をとめて、こちらを見た。
 これはたった今うっかり外し忘れていたと気づいたんじゃないとよそおって――今ここぞ、というふうに、僕はそぅっと細い縁をつまみ、ゆっくり顔を揺らす。


 風にあずけるみたいに、明るい栗色の髪の毛がふわりとゆれる。
 サングラスの大きなレンズをとり去って、素顔が現れる。
 花が咲き開くように、瞳がまばたく。


 僕は裸眼で彼、櫂人と目が合った。
 怜悧れいり面差おもざし、色白で黒髪の、物静かな印象の青年がこちらを見つめていた。でも、なんだか、呆気に取られたような、ぽかんとしていた。
 僕は、サングラスをとったのを見てどうしてそんな表情になるのかと思って、胸の内では首を傾げつつ
……?」
 困り顔で、曖昧に笑ってみせた。
 すると、櫂人は焦ったように僕から顔をそむけ、前に向き直る。
 黙って歩いていこうとするから、僕は急いでサングラスをニットのポケットにおさめて、追った。