鹿
2023-10-07 22:53:16
10468文字
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ある狂人の独白

凄烈鬼と自由の剣、開催誠にありがとうございます。

このお話は土斎と思って書いておりますが、斎藤は最初から最後までずっと死んでいて、土斎はお互いモブ女性と結婚しています。
予めご了承ください。

 
 恐怖しながらも市民の義務を果たし通報した人間と、夜中にも関わらず懸命に働く医療従事者のおかげで、一命を取り留めた土方だったが、大変なのはその後だった。
「一体どうしてこんなことになったの⁉︎」
「あんたこれから美人のお嫁さんもらおうって時じゃない、なんで事故なんか」
「通りすがりの人に通報されたってどういうことなんだ、お前事故に遭ったんだよな、事件起こしたんじゃないよな⁉︎」
 突然警察から連絡を受け、訳もわからぬまま駆けつけた両親と婚約者はパニック状態である。
「落ち着いてください、ちょっと発見時に勘違い? があったらしく……
「怪我の痛みを誤魔化そうと無意識に笑ってしまうという症状が稀にありまして……
 医師と看護師は色々フォローを入れてくれたが、なぜ事故を起こしたのかについてはどう言ったものか。まさか両親と婚約者の前で、前世の部下であり今生では昔の恋人のことを考えてたら、崖から落ちかけましたとは言えない。しかしとっさに自然な嘘も思いつかなかったので、ふわふわした証言にならざるを得なかった。
「星が綺麗だったんだ、雲ひとつなくて……まあだから道も滑りやすくなってたんだが……
 結果、台風直後に星を見たいからと車で出かけ、事故を起こすとてつもない阿呆が誕生した。
 これからその阿呆の妻になる女性は、心配も怒りも過ぎてただただ呆れ果てている。阿呆の両親はすみませんすみません見捨てないでやってくださいこの子は昔から風流人崩れでと平謝りだ。医者は結婚式にはギプスで出るしかないでしょうね、とあからさまに見下した顔で告げた。
 土方はこの先、妻にも両親にも頭が上がらぬ人生を送るのだろう。
 愉快なことだ。