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ツキシキ
2023-07-01 22:03:50
117641文字
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★天使のうつわ・おばけと魔法とまとめ
13作品。「空想地球儀」作品の二次創作。
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そろそろお前も結婚しなさい(シズリとシブキ)
シズリとシブキの忍者兄妹。「天使のうつわ」のクリア後イベントへの言及あり。
____________
「して、シブキ。近況はどうだ?」
「おなごに恋文を渡されました!」
「
…………
なんと
……
」
喜々明朗と告げる妹の近況は、兄の想像以上に芳しくなかった。
妹である。
たとい兄を真似た男装束の風体をしていようと、女人らしからぬ言葉遣いであろうと、兄の目に入れても痛くはない妹である。妹、なのである。
「
……
それで、どのように」
「はい! 相手はオレが女人でも構わぬと言うたのですが、オレはどうにもと物申して、ひとまず友として交流を深めるところから始めようと相成りました!」
「友が増えるのは、良いことだ」
「妖精の友はオレも初めてです!」
「
…………
」
なかなかどうして、このお転婆は数奇な旅路をしてきたらしい。しかし、婿探しどころかよもや女に言い寄られるとは余りも余りである。
「シブキ、兄は困っている」
「なっ!? 何事でございますか!?」
「
……
これではおまえがいつまでたっても嫁にいけない」
「うっ。しかし兄上、オレはまだ兄上を
……
」
身振り手振りで語らいかけようとする妹を手で制した。常の堂々巡りを改めるべく、首巻を後ろへ流しやって居住まいを正す。
「そこに直ると良い」
「はっ!」
妹も返事良く、風を切り何処からともなく座布団を取り出し、折り目正しくぴしりと正座。その姿は忍者と呼ぶならば及第点であろうが、淑女と呼ぶには勇姿が過ぎた。おなごは淑やかに、柳の如く動くのが望ましいのである。
何か惚れた腫れたの珍事でもあれば事は動くだろうか。
「好いた相手はおらぬのか」
「オレは兄上一筋です!」
「
……
兄を困らせてくれるな」
「しかし兄上、オレに嫁げ嫁げと言いますが! シロクの奴など、里を出ていながら修行もせずちゃらんぽらんと風来気取りです! 歳からすればオレより彼奴のが先でしょう?」
意気込んで言い募るシブキの言い様に、こちらを思わず口をつぐんだ。
「
……
ふむ」
シロクにはシロクの事情、うちよその関係だと切り捨てられはする。が、シロクは家族同然、妹の面倒を何かと看てもらっている恩もある。悪し様に奴は奴だと切り捨てるは憚られよう。
して、不意にピコンと天啓来たる。
「むしろシロクの元におまえが」
「兄上!? 正気ですか!!?!?」
地割れでも起こしそうな叫び声であった。
一先ず言を収める。何より自分とてまだ嫁の候補が見つかっていない身である。何れは許婚も決められようが、今は忍術を切磋琢磨する道のほうが忙しい。
そんなこちらの考えを読むように、妹はまた満面の笑みで口を開く。
「皆、婚姻などまだまだ先のことでしょう。それまでは呑気に飯でも食えばいいではありませんか!」
「
……
しかし。兄に嫁ができたらどうする気だ」
「それは勿論、雪神流雪華斬にてお相手仕ります!」
「宣戦布告ではないか
……
」
「果たし合いです!」
我が妹は頑固である。だが、妹はふと思い出すように顔を上げ、ぽつりとつぶやいた。
「れいすあーるほどの手練れであれば話は別ですが
……
」
「れ
……
酢?」
「ええ! 戦上手に料理上手、奴の作るサバの味噌煮はなかなかの味でした。ああ、また食いたい
……
」
「また余所の世話になったのだな
……
」
話を聞くに、どうも旅先の知り合いらしい。シブキがじゅるりと涎を啜るのを見れば、おのずとその腕は並々ならぬと知れるものである。そもそもシブキがおなごを兄の前で絶賛するのも珍しい。
「ちなみに、どのような?」
「ええと。天使です!」
「は?」
「のわりに飛べんのですが。剣には長けているので技に問題は御座いません! それと魔王でもありまして。どこぞの領主を殴り飛ばして連れ帰ったとかどうとかの逸話も
……
」
「
……
シブキ、シブキ」
「はい?」
シブキはきょとんと眼を丸くする。兄がその霊酢とやらの武勇伝に酔いしれると思うたのやもしれんが、それ以前に心配事が多すぎる。
「シブキよ。兄が悪かった」
「どういうことでしょう?」
こちらの意図は伝わらず首を傾げられてしまった。しかし、兄が懐中から取り出した草風呂敷を見れば疑問など即座に飛んで行ったらしかった。
「鮭にぎりをやろう」
「やった! ありがとうございます、兄上!」
「うむ
……
」
握り飯を頬張る妹を見ながら自省に努める。
────魔王天使なる幻覚を見る程に、妹を追い詰めてしまっていたらしい、と。
故に次なる嫁婿論議は、遠い先へと持ち越されるのであった。
~END~
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