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ツキシキ
2023-06-29 23:12:46
60921文字
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★ムラサキ・ムラサキ劍まとめ
13作品。二次創作。
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秋風索漠かいして騒騒(秋喰)
二人組の強敵は退けた。もとい、こちらが退けられた。
罷は美しい弧を描きながら遠く遠くの水平線へと弾みで飛ばされかかった後、得意の迅速で元居た地点へ戻ろうとする最中であった。通り過ぎ様に見える竹を視界に捕捉し、ずいと足を踏み出し、蹴り上げ、推進力を逆の方向へと切り替える。肩に纏った衣と袖口が大きく風を受けて膨れ上がる。
罷は追い風を受け、全力で推進しながら考える。
────我々は此処のところ負け続きである。
────無敵とはいったいなんだったのか。
答えの片鱗は一応持っている。
数が、協調が、我らの最たる強みが足りなかった。
考えている間に高度は緩やかに下がり、落ちて到着、古戦場。投擲や衝突で抉れた地面はなかなか悲惨な様相だが、しかし不思議と静かな場である。
静けさ故、人影にもすぐさま気が付いた。
剥き出しになった大き目の岩の上。
ぐったりと大の字になって倒れているその姿。
寝ているならばきっと奴だ。罷は大声で名を呼んだ。
「想よ!」
起き上がる顔はどことなく胡乱だった。構わず話しかける。
「他の皆はどうした」
「さあ?」
相手はくわぁと大口を開けた。不調で寝ていたわけではないらしい。
「探さねば。我らは12で1つ。欠けは許されない」
「もう欠けてるけどね」
「どういうことだ?」
「見ればわかる」
言われ、罷はまじまじと相手を見つめる。些か呑気な面構え。口の端に涎か何かの痕がある。
罷は顔の見分けが得意でない。というより見分ける意志がない。動作で全てを判定できるのが特化型たる由縁でもある。だからこそ見ればわかることに時間がかかる。
「そうか」
「想か? 蒼か?」
「そのいまいち得意の伝わらぬ面構え。お前魁だな」
「よくぞみやぶったー」
魁は気だるげにそう言うと、再び大口をあけてあくびをする。しかし罷は眉根を寄せたまま。どこか納得がいかない。顔の判別以上に何かが足りない。脳の疑問は通じて口から出る。
「いや、お前誰だ?」
「今自分で言っておいて何を」
「ならばお前の得意は何だ」
言葉がふつり、途切れた。罷は我慢がさほど効かない性質、よって余韻も何もなくぼんやり顔の相手へさらに詰め寄る。魁は寝ぼけ眼で答える。
「【幸運】。だったかも」
「かもとは」
「もう無くなった」
「なるほどそれでか」
「そうそうそれで」
それで、の続きも言わぬまま、魁はぱたりと岩に寝そべった。
「じゃあ寝るね」
「待て起きろ」
「ええー」
罷がぐいと魁を引っ張るが、魁は気だるげに目を伏せたままである。「運を天に任せる」がモットーの魁がここまで抵抗することは罷にとっても意外だった。自然、不安が零れ出る。
「もしや活動限界か?」
罷の視線は魁の持つ花の束に向かっていた。夏を表す黄と橙。逃げ出し討たれた個体たち。魁が彼女らを集め続けていたのは、自らもその束に紛れんとする計画だろうか。
ならばさせてはならない。罷は再度念を押すように確認する。
「腹が減ったか、眠りが足りないか」
心持ち神妙な声に、
「いーや。めんどいだけー」
返される答えは間延びしていた。
「起きろ!」
「おのれ極悪非道
―
」
「置いていくぞ」
「それは良い」
ぴたり、引く腕が止まった。
「本気で言っているのか」
「そこそこ」
「
…………
」
「ハズレくじを後生持ち歩く必要はない」
魁の声はやはり気の抜けたものだった。本気を本気と見せず、それでも息を切らしながら、着いて来続けたのが魁であるはずだった。
尋常ではない。平常に戻さねばならない。
そのための答えを罷はとうに知っている。
「魁よ。お前がそう言うのなら私に考えがある」
「名案だ。素晴らしい。がんばれ」
「お前もだ」
罷は魁を無理やり立ち上がらせ、キリリと眼を釣り上げる。そして明朗な声で改まって宣言した。
「皆を探しに行く」
「待ってたら集まるんじゃない?」
「馬鹿を言うな。待つにはあまりに長すぎる。早急に定義せねばならないのだから」
「定義?」
「我らは12で1つ。すなわち、12全てを集めてしまえばお前が誰かはすぐわかる。12のうちの能無しがお前だ」
「傷ついたー」
魁はやる気が削げたとばかりに再び岩盤へ寝ころぶ。罷がそれをぐいと引っ張り上げる。
「案ずるな。例え能力が失せようと我らは秋喰。決してお前は欠けではない」
ぽかん、と、魁が大口をあけた。今度は怠惰からではなく、心揺さぶられた結果として。
「
……………
おおー」
そして口から出たのは感嘆だった。感謝を言うのは少々異なる。罷の中であれは簡易明快当然の事実であり、慰めではなく激励でもない。それならば魁が返す言葉は、やはり何も無いのが自然の形なのだろう。
再び罷が魁を引っ張り起こす。今度は抵抗をされない。
運だけで為せることは存外少ない。益体なく一人では何もできぬ能力、ある意味今後も変わらぬ生き方になるのやもしれない。そんなふうに思える程度には、魁の心が動いた証だった。
そもそも彼らは並べて秋喰、以心伝心が常の事。
であれば魁が何を言わずとも、触れた掌で全ては通ず。
故に罷は話を区切り、次の目的へと早々に移る。
「では行くぞ。数刻足りとも今は惜しい、早急に皆を揃えねば」
「行ってらっしゃい」
「お前もだ」
「ええー」
罷は遠く遠くを見据え、まだ完成形に至らぬ秋喰の12引く2達を思う。皆はどこまで飛ばされたのか。再び集結するにはどうすればよいか。
罷が持つ全ては迅の一語。であれば足りぬ頭を回すより、方方駆けるがおそらく最良。
「もうちょっと休んでからにしない?」
まだ名残惜しくそう縋る魁に、罷はぴしゃりと言い放つ。
「12揃えば我らは無敵。休むはそれからだ」
「さようか」
「左様だ。行くぞ!」
「おう」
バッと駆けだす罷の姿と、遅れて着いていく相似形。
彼らが再び12揃うまで、時間はさほどかからないことだろう。
<終>
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