お芋さん太郎
2022-06-03 21:08:54
21068文字
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ドキッ! 護衛なしでお友達と初めてのお泊り花火大会 in 熱砂の国

※ツイステ
※ディアソムニア寮
※オリキャラ
※アリアーブ・ナーリヤ

以前pixivに投稿していた作品です。





家というよりもはや宮殿。
キリン組の4人がアジーム御殿を見上げて持った感想だ。

熱砂特有の屋根のドームとシンメトリー構造、細部までこだわり抜いたであろう伝統的な装飾の数々 、空の青よりも爽やかなピーコックグリーンが光を反射してピカピカと光る。
そんなとても個人の持ち物とは思えないほどに圧倒的な存在感を放つ御殿の正面に、キリン組の面々は観光客を装って立っていた。
ラフで涼しい私服に帽子、伊達メガネ。
カメラを首から下げれば(そのレンズは常にマレウスに向いているのだが)完全に観光客である。

「あのさァ、スカラビア寮のもだけど、ずっと玉ねぎみたいだなって思ってたんだよな」
「ああ、僕も」
「あれはどうみたって玉ねぎだって!」
「貴様ら!!! くだらないことを喋っていないで撮影に集中しろ!!!」
「シー! セベクお前!大声出したら寮長に気づかれるだろ!」
「す、すまない……

キリン組はセベクを筆頭とする1年生のグループだ。
観光客を装うなら同年代でわちゃわちゃした方がそれっぽいというリリアの意見により、同じクラスに所属する4名が選ばれている。
マレウスのこととなると暴走しがちなセベクのストッパーになるような人選だ。
今もいきなり大声をあげたセベクの口を3人がかりで素早く手で塞いで制した。

案の定、聞き覚えのある声が聞こえたと思ったのかマレウスがキョロキョロと辺りを見回すが、間一髪で気付かれずに済んだ。

僕は蓮の蕾のようだと思っていた」

全員でフゥと安堵の一息をつくと、コソコソと内緒話をするようにセベクが言った。
その思いのほか可愛らしい回答に、3人がブッと噴き出す。
「何がおかしい!」と顔を朱に染めるセベクの頭を順番にガシガシと乱暴に撫でると、せっかくセットしてあったオールバックは見る影もない。

「お前、玉ねぎ見たことないの?絶対にあれは玉ね」
『僕には、ピーマンのように見えるな』
「「「………!」」」

ケイトやトレイらと談笑しているマレウスの声を彼らの耳が広い、4人でハッとしたように顔を見合わせる。
なんということでしょう、寮長がピーマンと言ったのならばあれは。

ピーマンに見える」
「ああ、あれは確かにピーマンだな」
「完全にピーマン」
「誰だよ玉ねぎだなんて言ったやつ」

そう言って4人は固く握手を交わした。

『わしは玉ねぎだと思うが

味方を無くしたリリアの声だけがむなしく響いた。

「って、ちょっと待って着替え??」
「んえ、どういうこと?」
「カリム先輩が用意した熱砂の伝統衣装をマレウス様が!?」
『流石カリムじゃ、やってくれる』
「いやいやいやいや副寮長、言ってる場合じゃ
『いい社会勉強になるじゃろ』
「ななななんで副寮長そんなにノリノリなんですかって寮長も楽し気にしてるし! 微笑みいただきましたありがとうございますッ」
「直視したら眩しさで目が潰れるんじゃ

焦りに焦っていると、着替えはすぐ終わってしまったようで、トレイ、ケイト、マレウスの順で御殿から出てきた。
一歩、また一歩と踏み出したマレウスを見た瞬間、ゆっくりとセベクの口が開く。

ひらひらと風に揺らめく袖が羽のように軽やかに舞い、歩くたびにキリキリと鳴る鈴が纏う気品を引き立てる。
ライムグリーンを際立たせるいつものダークなアイメイクと合わせたようなシックな色合いがメインの衣装に、ピーコックグリーンとホワイトが優しく柔らかな雰囲気をプラスする。
華やかさの中に濃縮還元した神秘的なオーラを思い切りぶちまけたような、ため息を吐きたくなるほどに美しい存在。

「アァーーー!!!!!わかさm……!!!!!」
「セベクが倒れた! 救護班!」
「マァこうなることはわかってたけどな! とりあえず日陰に運べ!」
「人工呼吸する?」
「アホかよお前! AED探せ!」
「どっちもいらねぇよ、バァーカ!」
『こんなこともあろうかとラクダ組を援護に向かわせておる。キリン組はそのまま待機せよ。人工呼吸はしても構わんが、わしは関与せんのでな』
「しませんって!」

ニヤニヤと楽し気に笑うリリアが目に浮かぶようだ。
道沿いにあるベンチにセベクを運びながら、残された3人は苦虫をかみつぶしたように顔を歪めた。

「おーいお前たち、悪いんだけど写真を撮ってくれないか?」
「へ?」

ギャーギャーと騒いでいると聞き覚えのある声が話しかけてきた。

声の主はなんとカリム。
いつの間にか御殿の前で全員で集合写真を撮ることになったらしい。
顔を上げると目が合い、「あれ? お前らどこかで」と首を傾げるカリムに焦り、帽子を目深に被り直す。
なんとかバレずに乗り切らねばならない。

「き、気のせいですよ。それより何かご用だったのでは?」
「ああそうだった! あそこにいる奴らと全員で写真を撮りたいんだ。カメラを頼まれてくれないか?」

学年も寮も違うためなんとかカリムにはバレずに済んだが、同じ寮のマレウスや察しのいいジャミル、周囲の観察に長けたトレイやケイトは騙しきれないだろう。
だが断ろうとした瞬間にイヤホンから聞こえた悪魔の囁きにウッと喉を詰まらせた。

『展開が面白すぎるじゃろ。引き受けてみよ』
「ちょっとでいいからさァー、よろしく頼むよ!」
『写真の1枚くらい大丈夫じゃ』
「なぁ、もしかして忙しかったか?」
『何をしておる、ほれ』
「アー、大丈夫か?」

い、一枚だけなら」
「おお!ありがとな!こっちだ」

イヤホンからのリリアの圧と目の前にいるカリムの仔犬のような眼差しに押され、つい承諾してしまったが、答えてから大きな後悔が襲ってきた。
冷や汗をダラダラと流すセベク以外のディアソムニア寮生らはカリムに返事をしてしまった一人を生贄に傍観をきめ込む。
カリムに手を引かれた寮生は憎らし気にそれを睨んだのだった。