お芋さん太郎
2022-06-03 21:08:54
21068文字
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ドキッ! 護衛なしでお友達と初めてのお泊り花火大会 in 熱砂の国

※ツイステ
※ディアソムニア寮
※オリキャラ
※アリアーブ・ナーリヤ

以前pixivに投稿していた作品です。





マレウスがパタンと後ろ手に扉を閉めると、談話室はシンと静まり返る。
いつも大声でわめきたてるあのセベクまでもが口を閉じ、室内には微かな吐息すら感じられない。

「行ったか?」
「シッ!」

ある寮生がひっそりと蚊の鳴くような小声で呟くと、隣りの寮生が人差し指を立ててそれを制した。
壁掛け時計の針の動く音だけが響いて数分、3年のホーレンスが静かに扉を開き談話室に入ってきた。

「寮長の外出を確認。確かに鏡をくぐって寮を出たぜ」
「承知した。皆の者、集合じゃ!」
「「「はっ!」」」

マレウスが鏡をくぐったと分かるや否や、それまで寝込んでいたはずのリリアが飛び起きる。
腹の底から出した大声で寮生を集めるその風貌は、戦場に立つ一人の戦士のよう。
ひざ丈の台を持ってきたシルバーに「ご苦労」とねぎらいの言葉をかけて、少しの乱れも無く並んだ寮生たちに向き直る。

「こほん……皆の衆、よくやった。ここまでは実に順調。マレウスは今ごろ雲にも上るほど心弾んでおるだろう」

リリアは台の上に仁王立ちし、言葉を続けた。

「だが本番はここからじゃ。セベク!」
「はッ!!」
「うるさい!」
「失礼いたしました!!!」

リリアに名前を呼ばれ元気よく返事をしたセベクだったが、ダメだしを食らった。
しかしその謝罪にさらに声を張り上げてしまったため、セベクの周りの寮生らはその声量にしかめ面になる。

これはディアソムニア寮では日に三度は見かける光景。
いつものノリというやつに、軽い笑いが漏れる。

「今回の作戦の目的を述べよ!」
「マレウス様の『ドキッ! 護衛なしでお友達と初めてのお泊り花火大会 in 熱砂の国』を映像におさめ、マレウス様の輝かしい成長の記録とし、茨の谷の即位の儀の際の余興として国中に流します!!!」
「グッボイ、よろしい! ……よろしくない! さすがに国中には流さん、せいぜい王宮じゃ! お主なかなかに思考がエグいのぅ」
「しかしリリア様!!! マレウス様の尊」
「そこのところは後で話し合うとしよう。だが目的は今セベクが言った通りじゃ。みなも知っての通り、わしはマレウスのお目付け役、兼マレウス成長記録係としてこの学園に在籍しておる。今までも、部活動に励む姿、廃墟をたしなむ姿、ガーゴイルと戯れる姿、式典に参加できずに膨れ面をしている姿、バースデーボーイ、他寮生と仲良く喧嘩している姿、様々撮影してきたが常々なにかが足りないと感じておった」

台を降りてツカツカと寮生らの周りをゆっくりと巡るリリア。
付き合いの長い3年の一部の寮生がウンウンと頷く。

「足りないなにか、それはズバリ『護衛なしで友と自由にイベントを楽しむ姿』。それこそ茨の谷に帰ったら絶対にできない、今しかできないことであろう。これをぜひ映像に収めたい。そう思っていたところに実におあつらえ向きのお誘いがあったものじゃ」

リリアはゆっくりと台に戻り、クフフと笑う。
寮生らもみながニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていた。

「皆の者! マレウスは好きか!」
「「「大好きです!!」」」
「マレウスの『初めて』を記録に残したいか!!」
「「「残したいです!!」」」
「皆の働きに期待しておる! まずは朝食じゃ!」
「「「うおぉぉぉおおお!!」」」

ディアソムニア寮が雄たけびに包まれる。
皆が皆、拳を突き上げて血気盛んにうなりを上げ、室内の空気がビリビリと震えた。

リリアは満足げに目を細め、食堂へと歩を進めた。

「親父殿、マレウス様は行ってしまわれましたが、暢気に朝食など摂っていて大丈夫なのでしょうか」
「あやつらの集合時刻は3時間後じゃ。余裕余裕」

シルバーの問いにしれっと答えるリリアに、その場の誰もが「教えてやれよ……」と思った。