お芋さん太郎
2022-06-03 21:08:54
21068文字
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ドキッ! 護衛なしでお友達と初めてのお泊り花火大会 in 熱砂の国

※ツイステ
※ディアソムニア寮
※オリキャラ
※アリアーブ・ナーリヤ

以前pixivに投稿していた作品です。





たった一日。
それなのに黒と緑で統一された談話室がずいぶんと懐かしい。

そう感じながらマレウスは寮生らに土産を配った。
ケイトやトレイのお土産の選び方を見習って、チョコレートなどの無難な菓子やら食べるのに勇気のいる食品、小さな装飾品、置物などを自由に取ってもらう。

いつも世話になっているリリアやシルバー、セベクへは特別に用意したものを手渡しし、主にセベクから感激の涙を受け取った。
そしてあらかた配り終えたマレウスはハタと顔を上げ、涼しい顔で寮生らに問いかけた。

「そういえば、お前たちはどうだった」

一瞬きょとんとした寮生らだったが、次々に声を上げる。

「寮長がいなくて寂しかったです!」
「俺も行きたかったなァ~」
「あ、こいつは談話室の掃除をサボりました」
「嘘です寮長、サボったのはこいつです」
「おかしなことは何も起きとらん。心配ご無用じゃ、マレウス」

寮生らが調子よく答え、リリアもそれに続く。しかしマレウスの表情はやけに冷たく、リリアはかすかに違和感を感じた。

「そうではない。『お前たちの熱砂観光』はどうだったのかと聞いたんだ」

先ほどまでガヤガヤと賑やかだった談話室が、その一言でシン……と静まり返る。

マレウスが不敵に笑うと外でカメラのフラッシュのような光が瞬き、空が不機嫌そうにうなりを上げた。
いつの間にか眠っていたシルバーが音に飛び起き、セベクの顔が歪む。
リリアの張り付けたような笑みには冷や汗が浮かんだ。

バレている。
一部の寮生が熱砂にいたことが、完全にバレている。

これはまずいとリリアは焦った。
仲間外れにされることを何より気にするマレウスだ、理由はどうあれ秘密で我々も熱砂に行ったということが知れたとなればショックを受けてヘソを曲げかねない。
そして一度ヘソを曲げたらうっかり死者が出てもおかしくない事態になりかねないのが、妖精族のちょっと面倒くさくてかわいいところだ。

あまりの恐怖に談話室の隅でプルプルと震える寮生らをしり目に、リリアはマレウスに一歩だけ近寄った。
なんとか言い訳をしようと口を開いたその時、リリアが発するよりも早くマレウスの口が言葉を紡いだ。
その声は地を這うように低いものだった。

「ハーパー、ベイカー、ウェスト、グーンズ」

ゾウさん組の4人がビクリと肩を揺らした。

「空から見る熱砂は美しかったか」

4人は何も答えられずにうつむいた。
マレウスのチクチクとした魔力が肌を刺す。

「ラウンド、ホッパー、フロウ」

クジャク組の3人が涙目でマレウスを見つめた。

「舐められたものだな、僕が気が付かないとでも思ったか」

轟音が響き、雷が落ちた。
寮のすぐそばだ。

「シルバー、セベクリリア」

名指しの3人ばかりでなく、ラクダ組とキリン組一同も同様に姿勢を正した。

「僕をのけ者にした熱砂は、さぞ楽しかったことだろう」

誰かがハッと息を飲んだ。

「僕は、いつお前たちが声をかけてくれるかと楽しみに待っていたのに」

談話室にいるマレウス以外の者たちが目を見開いた。

「僕は、お前たちとも熱砂を回れると思って嬉しかったのに」

セベクの口が池の鯉のようにパクパクと宙を食む。

「お前たちはそうではなかったのだな」

マレウスの頬が少しだけぷうと膨らみ、子供が拗ねたような表情になる。
行き場をなくしたライムグリーンの瞳がぷいと逸らされた。

そこにいるのは出自も地位も魔力の大きさも何も関係ない『ただの』マレウスだった。
ただただ、仲間にのけ者にされてしょんぼりしているだけの、たった一人の青年であった。

そのマレウスの姿を見た瞬間、リリアをはじめ談話室にいたすべての寮生に走ったのは雷に打たれたような鋭い電気の感覚。
そして湯水のように湧き上がる強い衝動。

強烈な罪悪感と大きな後悔。
それらが彼らを駆り立てた。

「「「寮長~~~!!! ごめんなさい~~~!!!」」」

マレウスをもみくちゃにしながら抱き着き、すり寄り、縋りつく寮生らの目からは滝のような涙、濁流のような鼻水。
セベクはすでに息が止まっており、結局キリン組の一人が人工呼吸をした。
何を思ったのかリリアはマレウスの口にお土産のチョコレートを詰め込み、泣きながら無言でマレウスの手を握り続けるシルバーを森の仲間たちが慰める。

我も我もと押し寄せる寮生らよりも体格がいいにも関わらず床の上に押し倒され、さらに上から降り注がれる好意の嵐。
マレウスは怒涛の展開にきょとんと眼を見開き、されるがままに友愛を享受する。
彼らの想いが両手いっぱいに溢れたころ、ようやっと頭が回り始め、その状況のおかしさに「ハハッ」と思わず笑いが漏れた。

そんな混沌から少し離れた場所で、糸車がカタカタと回り続けていた。