この者を毒として、愛と成す(Dom/Subユニバース うちよそパロ)

うちよそオスラッテ、またパロった。リクエスト多かったDom/Subユニバース初めて書きました。



 その後は自室で休んでいたウゲツを起こして、先程の出来事について説明した。何故すぐに呼ばなかったのかを指摘されたが、状況を考えて迅速な対応が必要だと判断した故の行動だと言っておいた。改めて眠っている彼を起こさないように慎重に診察をしてもらったが、幸い悪化している様子はないということだった。
「無理に起こそうとせずに、安静にさせることを優先したのがよかったと思います。脈拍も呼吸も昨日の昼間に比べて少し落ち着いています」
「それなら良かった」
「それと、先程この方は兄さんの声が聞こえている様子だったと言ってましたよね? もしかしたら、兄さんのことを無意識ながらDomだと認識していた可能性もあります」
「でも、俺はさっきCommandをのせた覚えはないが……
「そうですか……。でも、もしかしたら生命の危機に対して、ダイナミクスとしての本能が働いていたかもしれないですね。Subは生涯を通して、自分が従うに値するDomを選定する能力があるとも言われていますから」
 Commandがなくても、彼は俺の言うことを聞いてくれた。たまたまここにいるDomが俺だけだったとはいえ、それがウゲツの言う通り彼に選ばれたことが理由だとしたら、それはとても嬉しいと思えた。
……兄さん、もしこの方が目を覚まして、本当にSubだったら。一度プレイをしたほうがいいと思います」
「プレイ……か」
 俺が今までやってきたプレイは、あくまでも自身の体調管理のためだった。だから特定のパートナーはおらず、基本的にはSwitchの師匠たちに協力してもらって数回Commandを言わせてもらうだけ。けれど師匠たちには、元々武術や交渉術といったこの国で生きていくために必要な技術を教えてもらったという絶対的な立場がある。目上の存在であると自分が判断している人たちに対して、Commandを与えるというのは心情としてはあまり良く思っていなかった。
 それこそ正式にパートナーを、と考えた事もあった。けれど、見合いも含めてどれも信用に値しなかった。なぜなら、我が家は幕府からの命令を受けて罪人狩りを行う一族。この家の内部に入り込んで少しでも罪を逃れようと躍起になる奴らはいくらでもいる。正式にパートナー契約、もしくは婚約を結んだとなれば、それだけでこのひんがしの国で行動するにあたって、どれだけのアドバンテージとなるのかは容易く想像できる。だから今まで、俺は外部に対してアプローチもしなかったし、色恋に関わる契約は全て断ち切ってきた。
……ウゲツ、俺にはちゃんと出来るだろうか」
「それは……、正直、Normalである私にも分からないです。でも、兄さんは優しい人ですから。相手を思いやること、それからあくまでもプレイの主導権はSubにあることを忘れなければ、きっと上手くいきますよ」
「そう、か。分かった、ありがとう」
 今はただ純粋に、彼のために。背後にどんな陰謀や暗闇があっても、この一時だけは考えないで行動しようと思った。



 それから一度看病をウゲツと交代して仮眠をとり、昼前に再び彼とウゲツのいる部屋へと戻った。ここまでウゲツも俺もご飯をほとんど食べていないので、まずはウゲツを先に食事をとってもらうように指示をした。ウゲツが部屋を出てしばらく彼の様子を見ていると、彼の瞼が持ち上がりしっかりと目を開けた。初めて見えた彼の瞳の色は、夕焼けのような綺麗な橙色だった。彼はしばらく布団の中で身体を動かそうとしていたが、こちら側に寝返りを打ったところで息切れを起こして止まってしまった。
「お、目が覚めたのか」
 試しに声をかけてみるが、まだ息が整っておらず返事はない。
「まだ随分と辛そうだが、具合はどうだ?」
「ぐあい……って、え?」
 白い耳がピコンと揺れ動く。どうやら人の気配に気が付いたようだ。こちらの方に視線も動いているので、視覚や聴覚にも問題はないだろう。
「ひとまず、こちらの言っていることは分かるようだな。悪いが少し身体を動かすぞ」
 一旦彼を仰向けに戻してあげて、改めて顔色などを確認する。まだどういった状況なのか理解し切れていないようで、きょとんとした表情でこちらを見ている。
「俺のことも見えてるようだな、声は出せるか?」
「こえ……、あ、あー……。たぶん、大丈夫、です」
「よし、なら少し待っててくれ。今治療師を呼んでくる」
 ひとまず起きてくれたのなら、ウゲツを呼びにいったほうがいいだろう。彼にそう言ってからすぐに部屋を出て探しに行くと、ちょうど食事を終えたウゲツが廊下におり、こちらへと歩いてきていた。
「兄さん、また何かあったんですか?」
「ああ、ちょうど意識が戻ったんだ。それで呼びに行こうと思ってな」
「そうなんですか……! よかったです!」
 とても嬉しそうにしているウゲツを連れて、彼のいる部屋へと戻る。それからウゲツは彼の状態を丁寧に診ては質問を行っていった。聞けばやはり彼女の見立て通り、彼はSubだった。プレイもここのところしてない様子だったので、今回の一連の体調不良の原因はSub dropでほぼ間違いないということになった。
 彼は診察中もとても大人しく、万が一ウゲツに危害を加えてきた時のためにと、傍に座って警戒はしていたが、特に何もしてこなかった。診察を終えたウゲツが退室してからも、注意深く様子を見ながらも彼にこれまでの経緯について説明をしていたが、彼は身体を振るわせて俯いてしまう場面が多かった。やはりまだ体調の悪さが圧し掛かっているのだろうか。
「大丈夫か、身体が震えているが」
……えっ、いや、だいじょうぶ、ですっ」
「そうか、無理はするなよ。辛かったらこちらのことは気にせず横になってくれ」
「ええ……、ありがとうございます……っ」
 彼はこちらの方へと改めて視線を移して、真剣に話を聞こうとしてくれる。ただ、これ以上話を長引かせても良くないので、そろそろ核心に触れる話をしよう。
「そうだ、一つ連絡が来てるんだ。お前と待ち合わせていた奴からな」
……え」
 勿論、これは嘘だ。奴は既にいないのだから。
「『自分のことは気にせず、まずは体調が万全になるまでそちらでゆっくり療養してほしい』とのことだ。確か、宿の望海楼で待ち合わせていたんだよな?」
「ぼうかいろう……はい、多分そこだと思います」
 これで彼が例の職人であることはほぼ確定した。あとは師匠たちが調べている荷物や、エオルゼアにいるシェイたちの調査次第になるだろう。
「ならば、こちらに来た連絡はお前さん宛てで間違いないだろう。そういえば、そちらの名前をまだ聞いていなかったな」
「あ、ごめんなさい……えと、クルーシュ、です」
「クルーシュ……
 彼の容姿、特に瞳の特徴からして恐らくはムーンキーパーのミコッテだと思われるが、俺が知る限りのエオルゼアにおける名前の規則には則っていない。何か明かせない理由があるかもしれない。
……そうか、ならクルーシュ。しばらくの間は我が家に滞在してもらうということでいいだろうか。滞在に関する手続きについてはこちらで代わりにやっておこう」
「え、でも、いいんですか……?」
「構わんさ。俺としても具合が悪い人をこのまま放っておくわけにはいかない。ああ、それに関連して、さっき言われていたプレイについても話があるんだが」
 ひとまず身柄はこちらに留めてしまおう、どのみち彼も現状ではすぐには動けない。あとは彼の体調を整えるために必要なプレイについてだ。
「プレイの相手、俺でもいいか? 一応これでもDomなんだ」
……へ、えっ……ええっ!?」
 クルーシュは目を見開いて、しばらくは茫然とこちらを見ていたが、やがて身体が大きくふらついて、そのまま布団へとパタリと倒れてしまった。
「あ、おい、クルーシュ!? しっかりしろ!」
 慌てて彼に声をかけるが、既に目を閉じていて意識はない。ほんの少しの時間でも分かるくらいに顔から血の気が引いていて、俺は大急ぎでウゲツを呼びに部屋を飛び出した。