この者を毒として、愛と成す(Dom/Subユニバース うちよそパロ)

うちよそオスラッテ、またパロった。リクエスト多かったDom/Subユニバース初めて書きました。



 そうしていよいよ次の日、ここを発つために荷物をまとめた。エオルゼアから持ってきた荷物は最低限にしておいたはずなのに、ここで過ごして書き記してきたメモの束が多すぎて、鞄へ詰め込むのにとても苦労した。1ヶ月ですっかり着方をマスターした浴衣も全て綺麗に洗濯して畳んで置き、久しぶりに黒いスーツを身にまとった。今思えば、浴衣の方がゆったりとしていて、家事をするときも動きやすかったなと思う。このスーツも過去に何度か着ていたはずなのに、少し窮屈に感じた。
 屋敷の中でお世話をしてくださった方々全員に改めてお礼を言いに回り、いよいよ荷物を背負って屋敷の玄関まで足を運ぶ。ここに来た時は意識がない状態だったし、この一か月はそもそも敷地の外に出ることはなかった。玄関の扉の前にはいつも通りの青い着物を身にまとったディルさんが立っていて、その手には白い封筒が握られていた。
「とうとう行くんだな、分かってはいたが寂しいものだ」
……そうですね、でも、これ以上厄介になるわけにはいかないですから」
「なに、俺たちもお前が家のことを手伝ってくれたおかげで助かったんだ。特に武具のことを理解して扱える奴は少ないからな」
「お役に立てたなら、俺としても何よりです」
 そう言って頭を下げた。自分としてはこちらの文化には不慣れだったのにも関わらず、信頼して仕事を任せてもらえたのが嬉しかった。彼らからいただいた報酬も充分にあり、これから向かう仕事の分がなくともエオルゼアに帰るために必要な分まで賄うことができた。
「そうだ、道順についてはこの封筒に入れてある紙に書いてある。屋敷から出たら開けてくれ、まあ、お前ならそこまで迷うことはないだろう」
「分かりました、最後まで助けていただいてありがとうございます。いつかまた、こちらの地域に来ることがあれば、改めてお礼をしに伺わせていただきます」
……ああ、そうか」
 声のトーンが少しだけ落ちた返事が返ってきて、俺も心なしか寂しさが増したような気がした。



 ディルさんに見送ってもらいながら、屋敷の門の外へと出る。空は雲のない晴天、広い道にしては人通りはないものの、綺麗に整備されていた。道の両隣にはディルさんの屋敷と同じような建物が並び続いていて、ぱっと見だと迷ってしまうだろう。確かここは本来部外者は許可がないと入れない要人たちの住まう区画だそうなので、まずはそこから出て旅館のある区画まで戻らないといけない。
 さて、道順を把握するために先程もらった封筒を開ける。中には白い紙1枚、丁寧に折り畳まれた状態で入っていた。それを開いて内容を見ようとしたところで、俺の手が止まった。
「え、うそ」
 そこには、何もなかった。線も文字も書かれていない、真っ白な紙が1枚だけ。
 おかしい、ディルさんは確かに書いておくって……

「待て、イオ

 突然、背後から聞き慣れた声がした。でも、呼ばれた名前が違う。確かそれは、もうとっくに捨てたはずの名前なのに。それにこっちでは誰にも教えていないから、知らないはずなのに、なんで、貴方が。
 状況に混乱しながらも、俺は振り向こうとした。が、次の瞬間、衝撃と共に視界が大きくブレた。二重にぼやけていく景色、襲い掛かる脱力感、耐えがたいほどの瞼の重さ、それらがゆっくりと俺の身体を浸食していく。

 完全に目を閉じる前、僅かに見えた。
 見覚えのある彼の手には、刀のような武器。もう片方の手は、はっきりと赤く染まって……

 その感覚はよく覚えている。深くて、甘い心地よさにも似て、けれど、あの時にあったはずの温かさがない。薄れゆく意識には困惑と恐怖が少し残っている。
「な、ん…………っ」
 このままだと地面に倒れる。そう思った時にはトンと、大きな何かに身体が当たって、また俺は何も分からなくなった。