この者を毒として、愛と成す(Dom/Subユニバース うちよそパロ)

うちよそオスラッテ、またパロった。リクエスト多かったDom/Subユニバース初めて書きました。

















 俺は、どうしてもSubである自分を好きになれなかった。あれが足枷であると自覚したのは、ウルダハでとある製作依頼を完了させた時に、依頼主の富豪から言われた言葉からだった。
「イオ・ト・バスドーラ。オマエはどうやらSubらしいな」
……そうですが」
「ふん、媚びるだけの猫にやる報酬なんぞ、これでいいだろう」
 次の瞬間、左の頬に強い痛みが走った。何をされたのか理解する前に、右の頬にもパシンと音がした。
「どうだ、気分がいいだろう?」
……っ、た」
 そのまま富豪は容赦なく、俺にビンタを繰り返す。行為は段々とエスカレートしていき、最終的には殴る蹴るにまで発展した。でも、俺は抵抗できなかった。それはSubとしての本能じゃない。この富豪に対する人としての最低さに反吐が出そうで、反抗するために同じ場に立ちたくなかったからだ。
「はは、どうだ! Domじゃないオレでも、こうして快楽でSubを屈服させられる!」
 何か勘違いしながら叫んでいる富豪から正当にギルは与えられず、俺はそのまま一目散に逃げ出していた。
 クルーシュと名乗りだしたのは、あくまでも防衛のためだ。あの富豪があれから情報を広めてしまったせいで、ウルダハでの活動はかなりしにくくなった。だから他のギルドへの修行も兼ねて、なんとかリムサ・ロミンサやグリダニアに渡って細々と仕事をしてきた。それでも、Subだとバレたらギルが用意できないからと、報酬の代わりにあの時と同じように暴力を受ける時もあった。またある時には意味もなくCommandを投げつけられ、そのたびに悪化するSub dropに苦しんだ。俺が自分用に抑制剤を服用して欲望を出さないようにしてからも、なんとかストレスのはけ口にしようとする奴らはいたが、それでも俺は必死に耐えた。耐えて、なんとかギルをもらわないと、生きていけないから。でも、生きていけなくなって、俺が消えたところで、一体誰が困るのだろうかと気が付いてしまった。



 だから。

 ディルさんに仕事をこなすたびに無償で褒めてもらえたのは、本当に嬉しかった。あの商人の依頼さえなかったら、ずっと、傍にいさせてほしかった。

 でも、どうして、彼は俺を……いや、もういいんだ。

 元々、あの生活に嫌気がさしていたから、いつか終わらせたかった。家族も親しい人もいない、それなのに一生付きまとう足枷がこの身を蝕み、何をしても苦しいだけなら、いなくなりたいと心の中でずっと思っていた。だから、この1ヶ月は俺にとって夢のような時間だった。
 どんなに悲劇的な結末だろうと、俺はディルさんを恨むことはしない。苦痛な日々を終わらせてくれて感謝している。甘やかされたいという本能に従って、素直に生きることを許してくれてありがとう。

 でも、やっぱりもう一度、ディルさんのあの大きな温かい手で撫でてほしいなあ……



 ふと、目が覚めた。いや、覚めてしまったことに驚いた。
「クルーシュ!」
 目の前で心配そうに俺を見るディルさんの姿は、幻覚だろうか。見覚えのある木目の天井、嗅ぎ慣れた布団の匂い。着慣れた浴衣。全部、あの屋敷のものだ。
「ディル、さ……んっ」
「クルーシュ、本当に……すまなかった! 俺がこんなことしたから、お前……!」
 そのままディルさんは俺に覆いかぶさり、ぎゅっと力強く抱きしめてくる。俺は状況が分からず困惑するばかりだ。
「あの、ちょっと」
「お前が、眠っているのにボロボロ泣き出してさ、それでとんでもないことしでかしたんだって気づいて、だから、酷いことして本当にごめんな……!」
 確かに、俺の両頬には濡れている感触がある。泣いていた、とはいえ何がどうして……、いや、そもそもだ。
……俺、生きてるんですか?」
「え」
「いや、あの時に俺は刺されたのかと……
 言いながら自分の腹を触って確認する。しかし痛みや傷などの異常はない。まだ眠気は少し残っているが、他に不調は感じない。
「いや、刺してなんかいない! 確かにあの時は細剣を持っていたが……
「細剣……?」
 なるほど、ならあの時見えた赤いものは、赤魔道士が使うクリスタルだったのか。てっきり俺は自分自身の血だと思ってしまったから、そのまま死んだものだと思ったが、そうじゃなかったようだ。
……お前にはこれから、俺から責任をもってちゃんと説明をしないといけない。今まで数々の嘘をついていたことを含めて、これまでの本当のことを話させてくれ」
 ディルさんから聞いたことは、どれも俺にとっては想定外のことだった。あの商人の依頼が冒険者ギルドの契約と違っていたこと、本来こちらで合流するはずだったお偉いさんは既にいないこと、彼らが犯した罪について、俺がこれからエオルゼアに戻るにあたって降りかかるであろうリスクについて、そして、ディルさんがやってきたことについて。
「そう、ですか。ディルさんが……
「ああ、元々この家はそうゆうことをするのが役目だからな」
 人を殺める、ということは一線を超えている行為だ。ただ、罪人を処刑するということはエオルゼアでも形は違えど行われている。一概に全てを悪いと思ってはいない。
 それに俺も、さっきまで彼が終わらせてくれたことに安心していた。だから結果的にはずっと、俺はディルさんに救われていたことになるだろう。
「お前を引き留めるために、スリプルを撃ったことも含めて。俺は世間一般から見れば許されないことをしている。だから、こんなことを言っても断られると思う。でもさ、クルーシュ」
 ディルさんは俺の頭に手をのせて、ゆっくりと撫でてくる。ああ、やっぱり、これがいいな。
「これからも、俺たちと暮らしてくれないか? もちろんお前に今後誰に対してからも危害が加えられないように全力で守ろう。それに、その……正式にパートナーにもなってほしいんだ。お前が傍にいてくれないと不安になってきて、だからきっと、俺はクルーシュを愛してるんだ」
 その言葉が、俺に付いていた足枷を壊してくれた気がした。きっと、ディルさんなら、大丈夫だと確信する。
 きっと、俺もそうだ、好きだったんだ。やっと、俺も自分の気持ちを伝えていいんだ。
…………はい……っ、おねがい、します……!」
 止まっていたはずの涙は、熱を纏って再び流れ落ちる。いつか欲しいと過去に焦がれ、憧れていたものが、やっと返ってきた。
 たとえいつか、どちらにも制裁がきたとしても、今だけは本能に素直になろう。だからこそ、この言葉を伝えるべきだろう。
「おれも、ずっと、あいしてました……!」
 俺がそう言った瞬間、周りでわあと歓声が上がる。そこで初めて、自分たちが治療師のウゲツさんやディルさんの師匠にあたるヴァスクさんやシンさんに見守られていたことに気が付いた。
 これから、俺もまた家族になれるのかな。そうだとしたら、人生でこれほど幸せなことはないと思った。