この者を毒として、愛と成す(Dom/Subユニバース うちよそパロ)

うちよそオスラッテ、またパロった。リクエスト多かったDom/Subユニバース初めて書きました。



 次の日の朝の目覚めはとても快適だった。ここ数年振り返っても、こんなに身体が軽く感じる朝があったのだろうかと思うくらいだ。ただ、隣を見れば昨晩にはなかったはずの布団が一組増えていて、俺が起きたことに気がついたディルさんがこちらを見て挨拶をしてくるものだから、思わず飛び上がってしまった。
 それから朝食を頂いて、治療師さんに診察をしてもらった。状態は昨日と比べてかなり良くなっているということだった。俺も正直驚いている。ほんの少しプレイをしてもらっただけで、こんなに変わるなんて思ってもみなかった。
 今日はディルさんには一日仕事があるということだったが、その間何故か俺は彼の執務室に入ることを許可された。とはいえ彼の仕事を手伝うわけではない。第一、余所者である自分が、この国に関わっているであろう書類をむやみやたらに見るわけにはいかない。それはもちろん分かっているのだが。
「ふぁ……
 考え事をしていたら眠くなってしまった。それはそうだろう。今はディルさんからお願いをされて、こうして暖かい部屋の中でゴロンと横になっている状態。なんとも平和な光景だ。ただ、俺が枕にしているのが彼の膝であるということを除いて!
「眠いのか?」
 俺の欠伸に気がついたディルさんは、嬉しそうに笑みを溢しながらサラサラと俺の頭を撫でる。それを抵抗することなく受け入れている俺も、昨夜のプレイで随分と絆されてしまったのだろうと妙に納得する。
「ちょっと、だけ」
「まだ身体も本調子じゃないだろうし、寝ておきな」
「う……
 そう、これはあくまでも治療行為。先程の診察の時に、俺の身体のためにこれからも定期的にディルさんと触れあい、または軽いプレイをしておくことを勧められた。だから、この状況はおかしくない。そう自分に言い聞かせておく。
 でも確かに、あれだけ苦しかった息切れも動悸もすっかり収まったのだ。昨日は寝床から起き上がるのも苦労するくらいに身体が動かなかったのに。ちゃんとしたプレイが初めてだった分、その効果に驚いている。
 そうして昨夜のことを思い出していると、いつの間にか彼の膝枕と声に導かれるように深く寝入ってしまった。



 俺は別にプレイを毛嫌いしているわけじゃない、と思う。
 けれど、自分がSubであることを商売のための道具にはしたくなかった。それは職人の修行のために各地を巡ってそう考えるようになった気がする。
 グリダニアではSubであることを明かす事自体が好まれていなかった。プレイという行為そのものが穢れのように考えられていた。だから生まれ育った場所で自分がSubであると分かった時、それをひた隠しにしようとした。
 それから、霊災から逃げてきて辿り着いたウルダハでは、プレイは商売道具として成り立っていた。Subが身を差し出し、欲求不満のDomを中心に相手をする。路地裏で首輪を付けられて、雇い主にさらけ出すように四つん這いにさせられている光景は何度も見てきた。自分はそうなりたくなくて、何とかまともな仕事が出来るようになろうと必死に技術を学び得た。
 修行のために海を渡って辿り着いたリムサ・ロミンサもウルダハと似たようなもので、力ある海賊の慰め役として扱われていることもあった。とはいえ、この時の俺は既に錬金術を一通り習得したことで、自分に合った抑制剤を作れるようになっていた。ほぼ毎日それを服用することで、自分がSubであると悟られないように気をつけていた。けれど、飲み慣れてしまえば効果が薄れてしまう。だから年月が経つにすれてどんどん強い薬に変えていった。それに伴う副作用で自律神経が狂って、たまに動悸と息切れで動けなくなることもあったが、それでも自分がまともであると振舞うためにはこうするしかないと思った。
 この薬さえ作り続ければ、パートナーはいらないと思った。



 ポンポンと身体を軽く叩かれる感覚がする。なんだろうと思いながら目を開けると、ディルさんが怪訝そうな顔をしてこちらを見降ろしていた。
「クルーシュ、ごめんな起こして。そろそろ昼飯が出来るから食べようか」
「んー……う、はい……
 ディルさんに当たらないように気をつけながら、ゆっくりと身体を起こす。まだ頭がぼんやりとして覚醒し切っていないが、なんだか色々と懐かしい夢を見ていたような気がする。
「ほら、おいで」
 さっきとは違う、優しい笑顔でディルさんは俺の前に手を差し伸べてくれる。その手を取った時には、もう夢のことなんかすっかり忘れてしまっていた。



 あれから、毎日ご飯を食べさせてもらって、生活に必要な物資も新しく買い揃えてくれて、広々としたお風呂にも入れてもらって……そんな日々を1週間ほど過ごした。毎朝診察をしてもらって、いよいよ大丈夫だと治療師さんからお墨付きをもらった時にはそれくらい経っていたのだ。俺も迷惑はかけられないと、1人で出来ることはするとディルさんには言ったのだが、それでも彼は世話をするためだと、何より俺のことが心配だからと時間の許す限りは傍にいてくれた。
 さて、いよいよ自分も仕事に戻るために準備しないといけない。けれど、その前にまずはやることがある。
「ディルさん、改めて危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございました」
「いやいや、人として当然のことをしたまでだ」
「あの時に助けてもらっていなければ、生きていなかったかもしれない命です。そこでなのですが、向こうの依頼主と相談した上で、時間が許す限りこちらの家にも何かしらお手伝いをさせていただきたいのです」
「いや、そこまでしなくても大丈夫だぞ?」
「そうはいきません。俺はある程度の家事はできますし、武器の手入れや防具の修繕などもそれなりには出来ます。なにかお困りのことがあれば、是非やらせていただきたいのです」
……ふむ、ならば、無理のない範囲でやってもらおうか。もちろん働きに見合った報酬も出そう。依頼していた奴にはこちらからまた連絡を入れておくから、返事は追々伝えておこう」
「ありがとうございます!」
 そこからはディルさんの屋敷で掃除、洗濯、料理を始めとした家事全般を手伝った。掃除や洗濯はやることはあまり変わらなかったが、料理は東方地域の食材や調味料を中心に使うことになるため、レシピを教えてもらいながらそれなりに作れるようになった。それから、長らく使っていないという刀や防具の手入れの仕方を教えてもらった上で、それらの修繕作業も行った。エオルゼアの物とは勝手が違っていたが、それでもコツが掴めたらあとはスムーズに行うことが出来た。職人としての知識がこういった場所でも活かせたのは本当によかったと思う。
 この屋敷に来てから、ひんがしの国の風習についてや生活様式、料理のレシピに武具の手入れの仕方など、新しいことを沢山学ぶことができた。覚えたことは逐一メモを記しておいて忘れないようにしたし、何よりも屋敷にいる人たちが優しい人たちばかりで、俺が無理をし過ぎないように気を使ってくれた。
 なにより、Subである俺をありのままとして受け入れてくれたDomはディルさんが初めてだった。仕事を終えたら頭を撫でてもらったり、寝る前に触れ合う程度にプレイをしてもらったり、プレイが終わってからも添い寝をしてくれたり……。今まで抑えつけるだけだったSubとしての本能や衝動を穏やかにさせてくれた。こちらに来てから抑制剤を飲んだのは初日の倒れる前だけ。それからは服用することを意識しなくても、体調に大きな変化は出なくなった。それに伴って、動けなくなるほど酷かった副作用からも徐々に解放された。これは、仕事や体調不良で確保できていなかった睡眠をしっかりとれるようになったことも関係しているだろう。Subであることが分かってから、こんなに体調が安定していた日々はこれまでになかった。
 それでも、ここにいられるのは少しだけだ。依頼主もそこまで長く待ってくれるわけではないだろう。恩を返したと思ったら、ここを出ていかないといけない。



 色々あったけど、クガネに来てから1ヶ月が過ぎた。本当にあっという間だった。
「クルーシュ、奴から連絡が来たんだ」
 とうとう、その言葉を聞く日がきてしまった。
「明日、同じ待ち合わせ場所で待つそうだ。道が分からないようなら俺が送っていくが」
 あれだけよくしてもらった場所から、離れないといけない。特にディルさんには本当にお世話になったから、もっと役に立ちたかったけど。
……そうですか、分かりました。では明日ここを発ちます。場所は道を教えていただければ一人で向かいますので、大丈夫です」
「そうか、なら後で道順を紙に書いて渡しておこう」
「ありがとうございます」
 今まで色んな派遣先に赴いた中でも、ここは一番離れがたい場所だと思う。けれど、それでも行かないと。ここはそもそも、予定には無かったイレギュラーな場所なのだ。
 お礼を言うために下げた頭を上げるのが、すごく嫌だった。今の泣きそうな顔を、ディルさんに見られたくなかったから。