この者を毒として、愛と成す(Dom/Subユニバース うちよそパロ)

うちよそオスラッテ、またパロった。リクエスト多かったDom/Subユニバース初めて書きました。



 その後、治療師さんはお盆に空になった鍋やお椀を再びのせて退室した。何から何まで世話をさせて申し訳ないなと思う中で、ディルさんは今度は身体を洗わないかと提案してきた。
「その様子だと何日も洗えていないだろうと思ってな。特に身体は何度か汗を拭いたりしたが、髪や尻尾は洗えていないからなあ」
「うーん……
 普段、1人でいる時に酷く汚れた時にはどこかで水浴びをしたり、滞在先の施設が良ければシャワーをお借りして浴びたりしていた。自分としては仕事柄もあって汚れることを気にしていないのだが、今いるここはあくまでもお世話になっている家なのだ。相手から提案されている以上、自分の身体もそれなりに清潔にしたほうがいいだろう。
「分かりました、ではその、シャワーとかがあればお借りしてもいいでしょうか。すぐに済ませますので」
「シャワー……って言えるものでもないが、それでもよければいいぞ」
「充分です。ありがとうございます」
 そこからディルさんに連れられてようやく部屋を出て、身体を洗う場所まで案内された。綺麗な木目の廊下を歩いている途中で、お手洗いやキッチン(この場合は台所や厨というらしい)の場所についても説明されて、滞在している間は自由に使ってくれて構わないと言ってくださった。
「お腹が空いたら、ここにある食材を使って調理しても構わない。何か希望するものがあれば俺に言ってくれればある程度のものは作ろう」
「はい」
 しかし、あちこちに障子の扉で仕切られているであろう部屋があって、明らかにこの屋敷がとても広いということが分かる。これは下手したら迷子になりそうだと思いながらディルさんについていくと、ようやく目的の部屋についたようである木製の扉の前で止まった。
「そうだ、念のために今日は俺も一緒に入るけど、いいか? もし途中で倒れたりしたら誰かが助けないといけないからな」
「一緒にですか? 構いませんが……
「そうか、ありがとう」
 それから扉を開けた先に見えたのは、洗面台が完備されて尚且つずらりと棚が並ぶ、広々とした脱衣所。更にその奥のガラス製の扉を開けて見えたのはシャワーだけではなく、東方様式の、それはもうとんでもなく広い浴槽だったのだ。なるほど、これではシャワーだけとは言えない。



 あっという間にディルさんは服を脱いで、俺は脱がされて。互いに一糸まとわぬ状態になったことを恥じる間もなく、さっさと浴室まで連れていかれてしまった。水浴びの際に公共の場ではマナーとして水着を纏うことが多いエオルゼアとは違い、東方地域ではこういった場で裸になることに躊躇がないようだ。
「体調も考慮して、湯船に入るのは止めておこう。クルーシュ、ここに座ってくれ」
 ディルさんはシャワーの前に置いてあった木製の小さな椅子に俺を座らせた。そしてシャワーの湯量やお湯の温度を調整してから俺の後ろにもう一つ椅子を置いて座り、頭から尻尾の先まで身体全体に少しずつ丁寧にお湯をかけてくれた。
「熱くないか?」
「はい、大丈夫です」
 お湯を使って大体の身体の汚れを流してから、ディルさんはシャワーのそばに置いてあった白い液体の入ったガラス瓶の蓋を開けた。その液体は香水に似た甘い香りがして、手に適量を垂らしてから両手を擦り合わせると一気に泡が立った。どうやらあれはシャンプーらしい、しかもかなり高級そうだ。
「今から髪と耳を洗うから、目を閉じててくれ」
「あの、でも自分で……
「せっかくなら、俺にやらせてくれないか? プレイする前の慣らしだと思って」
 うーん、そうか、慣らしならまあ……と考えて、返事の代わりに目を閉じた。ディルさんにもそれが同意と伝わったのか、そのまま大きな手で頭を撫でてくれるかのように丁寧に洗い始めた。指の腹で適度な力で頭皮を押してくれる感覚が、マッサージしてくれているようで心地よい。シャコシャコと泡立つ音にも耳をすませつつ息を吐いて、ふと気がつけば俺はすっかりディルさんに身を任せてしまっていた。シャンプーの後には髪にサラサラとオイルもつけられて、身体も全部泡だらけにされて、これじゃもうすっかり家で飼われている猫と同じになってしまっている。流石にこのままだと申し訳がないので、ディルさんが身体を洗う時には手伝いを申し出てみた。
「背中とか、よければやらせていただければな、と……
「ふむ、そうだな……なら背中をお願いしよう」
 そういってからディルさんは背中をこちらに向けてくれた。俺よりはるかに広くて筋肉質な背中にも、黒い鱗に覆われている部分が沢山ある。俺は泡の付いたタオルを持って、ディルさんの背中をせっせと洗い始めた。肌の部分は擦り過ぎて傷をつけないように優しく、鱗の部分は汚れだけを落とすイメージを持って少し強めに。
……うん、すごく丁寧にやってくれてるな。ありがとう」
「あ、いえ」
 お礼を言われたのが素直に嬉しく思える、それだけで心がこんなに軽くなるんだ。それから2人で身体の泡を流してから浴室を出て、身体を拭いて髪や尻尾の毛をふわふわになるまで乾かして、洗っている間に新しく用意されていた新品のアンダーウェアと浴衣に着替えた。



 すっかり夜になった廊下を歩いて、再びディルさんに連れられて部屋に戻ってくる。室内は綺麗に掃除されており、布団も敷き直されていた。部屋の隅には自分がクガネに行くときに持ってきていた僅かな荷物一式と、汚れていたはずの黒いスーツが綺麗な状態で畳まれていた。
「あの、ディルさん。もしかしてあのスーツ、洗濯して頂いたんですか?」
「ん、ああ。汚したままなのも良くないと思ってな、勝手ながら洗わせてもらったんだ。何か不都合でもあったか?」
「いえ、全然ないです! むしろありがとうございます……
 ここに来て自分が寝ている間に、想像以上にお世話になり過ぎていたようだ。果たしてどのようにお返しをすればいいだろうか、依頼主を待たせていることもあるからあまり長居も出来ないし、早く体調を戻さないと……そう思ったところで、ふと自分の状態について改めて見直した。そういえば最初起きた時には身体を動かすのも苦労していたのに、今は普通に歩いたりすることが出来ている。息苦しさや動悸も気にならなくなっている。こんなに急に回復することがあるのだろうか。
「クルーシュ? どうしたんだ、ボーっとしたままで」
……っいえ、なんでもないです」
「そうか。ならそこの布団の上に座ってくれないか?」
「わかりました」
 いけない、つい考え込んでしまった。すぐに言われた通りに布団の上にペタリと座り込んだ。
……あれ」
 言われた後に、自分がどういった状況になっているかやっと気がついた。両手を前に置いて、膝を曲げて、足の爪先から尻尾まで敷かれた布団にくっついている。この座り方には覚えがある。プレイの最初に行われることが多い、あの呼び方は確か……でも、おかしい。だって俺には今、Commandを受けたという自覚がないのだ。
「なんで……?」
 今後ディルさんとプレイを行うということを覚悟はしていたが、それにしたってあまりにも気が早すぎる。体勢を戻そうと思うものの、身体はそのまま動こうとはしてくれない。思考と身体がちぐはくで、倒れる前の状況によく似ている。
「クルーシュ」
「あ、あの」
 俺の前に立つディルさんを見上げると、一瞬困惑した表情をしていたが、すぐに嬉しそうに微笑んでいた。そして目線に合うように座り込んでから、大きな手が伸びてきて俺の頭をポンポンと軽く撫でた。一瞬叩かれてるのかと思って身構えてしまったが、そうではないことにとても安心した。
「その姿勢をするってことは、プレイしても構わないってことだろうか?」
「ええと、その、今、Commandは……使っていませんよね?」
「ああ。でも自分からそれが出来たんだから、充分偉いと思うぞ」
「んっ……
 その言葉を聞いて、心底よかったと思った。褒められたことが嬉しい。もっと、彼に触れてほしい。そんな欲求が一気に湧き上がってきて、ようやく自分の思いと行動が一つになったような気がした。だから、今なら彼からの提案を受け入れることが出来そうだ。
「その、ディルさん。よければプレイ、してほしいです。俺がんばりますから」
……はは、そうか。ありがとう、そんなに気を張らなくても大丈夫だからな。今回は少しだけだから、な?」
「はいっ」
「ふふ。じゃあ、Safe wordを決めてくれ」
……なら、Redで」
「了解した」
 特にこれといったものが思いつかないので、定番の単語を口に出す。というより、何だか少し考えるのが億劫だ。思考が浮ついているというのだろうか。
「じゃあ、クルーシュ、こっちにおいでcome
 自分のためだけに発せられたCommandは、全身を一気に駆け巡る熱を与えた。他人から投げつけられるGlareのような不快感もない。自分の思い通りにするために、理不尽に押し付けられるCommandとは全然違う。相手の懐に招き入れるための甘い誘いだ。
「ん……んんっ……!」
 普段なら絶対に警戒しているだろうことなのに、それでも、ディルさんの元に行きたくてたまらない! 
 手足を動かして、本当の猫のように四つん這いになりながら彼の前まで移動をした。元々すぐ近くにいたはずなのに、身体に上手く力が入らなくてかなり時間がかかってしまった。それでもディルさんはやってきた俺をぎゅっと抱きしめてくれた。
「ああ、いい子だなgood boy
……っう、ん」
 また褒めてくれた! 
 嬉しい感情が溢れそうで、思わず泣きそうにもなってしまうが、ここで泣いて迷惑かけるのも嫌なのでなんとか我慢する。
「じゃあ、次は、布団へ寝転んでくれRoll
 すぐに俺は布団の上に寝転んだ。ふかふかの感触が心地よい。横になって少し落ち着いてから気づいたが、さっきから心臓がずっとドキドキしていて、息も少し上がっている。体温も少し高いのか、身体がポカポカと暖かく感じる。けれど、苦しさは全く感じないのだ。
「よし。どうだ、少し息が荒いが、どこか具合が悪くなったりはしてないか?」
「だい、じょうぶ、です……はあっ」
「ん、よく頑張ったな。今回はここまでにしておこう」
「はい……っ」
 そのままディルさんも隣に寝転んで、俺の頭や背中を撫でてくれた。それが本当に嬉しくて気持ちよくて、耳や尻尾が揺れ動くのを抑えられないくらいだ。そうやってもらっているうちに段々と眠くなって、抗うことなく目を閉じてしまった。
「おやすみ、クルーシュ」
 完全に眠りにつくまで、ディルさんはずっと撫で続けてくれた。この人の傍は、すごく安心できる。そう思えた穏やかな睡眠だった。