◆非常電源へ切り替え完了
パ、と明かりが灯る。急な明るさに目が慣れずに細めて、少しずつ辺りを見渡せるようになった。すぐに赤い目が居たであろう右前方を向いたが、そこには誰もいなかった。そりゃ移動くらいするか。
「つ、ついた!! みんないる!? 無事!?」
「──14、15、わたくしで16! 全員いますわ! 無事です!」
へたり込む私は、まるで力が入らずに呆然としていた。何週間分かのエネルギーを一気に使った感覚。まだ耳の奥の方でヴーヴーとサイレンの残りカスが暴れている。
暗闇の中パニックになって、それぞれが思い思いの行動をとったようだ。明かりが消える前と後で立ち位置が若干変わっているが、詳しくそれを検証するまでの気持ちの余裕が今は無い。
へたり込んでいるのは隅っこの方にいる超高校級の庶務
奥憂伽さん、腰が抜けたらしい超高校級のブロガー
蔭山徒丸、転倒して手のひらを擦りむいた超高校級の茶道部
一福恵さん、体勢を低くして鋭い目をしたままの
鷹栖忍さん、そして私と、私が押し倒した超高校級のミニチュア作家
闇雲創一くん。水の出ない噴水オブジェに何故かラッコ状態の超高校級のライブペインター
難波陽太郎は置いておくとする。
「状況を整理させてください、綴目さん立てますか」
「あ、はい
……」
手を差し伸べてきたのは超高校級の鑑定士
宝生ジュリアさん。チクッと足に痛みが走って、暗闇の中で膝を擦りむいた事に気がつく。
「(
………みんなが、疑心暗鬼の目になった)」
この中に絶望の残党が紛れ込んでいる。ラプラスのチェックを狡猾にすり抜けた赤い瞳の犯罪者。その事実に、空気がピリピリと張り詰めて緊張していた。
「ラプラス。さっき綴りんちゃんが言いかけた《
校則》についての解答は?」
◆かしこまりました。
◆ラプラスβより全市民の皆様へ通告
現在当施設は絶望の残党対策規定第13条第3項に基づき
絶望の残党対策規定第11条の排除執行を猶予いたします。
◆ラプラスは市民の皆様の生活を保障いたします。
◆市民の皆様におかれましては、
ラプラスの提示する《校則》を遵守いただきますよう
よろしくお願い申し上げます。
◆《校則》を遵守いただけない方
《絶望の残党》と認められた方は
ラプラスの定義する「市民」から除外されます。
予めご了承くださいませ。
◆市民として当施設への入場に同意しますか?
同意する市民は右手を挙手願います。
矢継ぎ早に音声が流れていく。よく分からないまますぐ右手を挙げた人もいた。私は少し考えて、周りの様子を伺うことに。挙手を躊躇った面々の中で、すぐに眉を顰めたのは剣城だった。
「あの。こちら側の質問は
校則についての解答は?ですよ。答えになってませんが」
さながら、利用規約を見せずに同意させるようなものだ。まあ利用規約なんて大体読まないとはいえ、今私たちは命がかかっている。校則を守らなかったら市民として保護されない、という情報は極めて危険であった。
◆当施設に足を踏み入れた時点で
全ての市民は校則適用対象となります。
◆校則の閲覧には同意が必要です。
「あーダメだね同意しないと前に進まないっぽい。ま、保護する目的みたいだからとりあえず同意して校則確認しよう」
「そのようですわね
……手順は納得いきませんが」
「アンタがお取引先様なら契約書白紙モノよ、サイテー」
「
……」
挙手しなかった早乙女、宝生さん、如月さん、九十九が順に手を挙げた。私も仕方なく挙手。最後に大きなため息をついた剣城が同意を示した。これで16人の同意が揃った。
◆当施設全ての市民の同意を確認
東部地下都市 利用制限を一部解除します
無線LAN起動 Wi-Fi16 IEEE655.36rp
パスワードは t1eT6sBpMyIteT
パスワードは t1eT6sBpMyIteT
詳しくはラプラスアプリをご覧下さいませ。
「!」
慌ててメモをした私を誰か褒めて欲しい。流石☆とサムズアップする綾瀬には拳骨でもお見舞いしたいものである。
◆ラプラスよりお知らせいたします
本日の使用電力量が規定値に達しました
ラプラスβ モード:グリーン
省エネルギー運転に移行します
◆ご不便おかけいたしますが
予めご了承くださいませ。
◆お足元等に気をつけてお過ごしください。
パ、と照明がおよそ半分程の明るさになり、あたりは薄暗くなった。その後呼びかけても、ラプラスは何も答えなかった。
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