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kaisou
2026-01-28 20:18:12
18353文字
Public
1740年コンクラーヴェ話
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Etiam clades est modus. 敗北さえも手段である
1740年コンクラーヴェ話別視点・2
倒錯的表現は楽しいなあ
※歴史創作ですのであしからず
▼1740年コンクラーヴェ話本篇まとめ
Aliquid est quod memoria mea non relinquit.
私の記憶を離れないものがある
https://privatter.me/user/kaisou_ja?category=110867
全7章/幕間含む
1740年コンクラーヴェ話の本篇その2
視点違いの2つの話のうちの1つ。
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翌朝、定刻。
礼拝堂に集まった枢機卿たちは、互いの顔を確かめ合うこともなく、定められた席へと身を置いた。空気は張り詰めてはいない。緊張もそこにはなかった。あるのは、終わりを待つために用意された静けさだけである。次の所作へ移ろうとした時、誰もが違和感を感じた。数が減っていることに気づく。誰かがその違和感を口にした。
「ランベルティーニ枢機卿はいずこへ」
礼拝堂は静謐の中にあった。ざわめきも囁きも起こらない。当人がその場に姿を見せていないことが確定した。
「探そう」
その一言で『羊飼いになろうとしている迷える羊』の捜索が開始された。
ランベルティーニは、礼拝堂から最も遠い一隅で見つかった。回廊の奥。使われていない小さな部屋。光の入りにくい区画。石床の上に、椅子が二つ置かれている。その背に身を預けて、外套に包まれた男が眠っていた。深い眠りだった。完全に、世界から切り離された眠り。声をかけても、反応はない。肩にそっと触れても、呼吸の律は乱れず、ただ静かに、規則正しく続いている。起こす理由が見当たらないほどの、そして
――
触れ続ければ何かを壊してしまいそうな眠りだった。
事情を説明しようとした者がいたが、その必要はなかった。一瞥で、すべてが分かったからだ。
「
……
眠っているな」
「ええ。どう見ても」
それ以上の言葉は、付け加えられなかった。付け加えるほどの事情が、そこには存在しなかった。間の抜けた確認が、いくつか交わされた。探し回った末に辿り着いた結論が、それだった。
肩に手が置かれる。揺すられる、と言うほどではない。選択肢を与える触れ方でもなかった。呼びかけにも、すぐには反応がない。呼吸の調子は崩れず、眠りだけが深い。
やがて、ランベルティーニはゆっくりと目を開けた。身じろぎし、わずかに眉をひそめる。椅子に預けていた体重をほんの少しずらし、外套の中で、もう一度身を丸めようとする。
「
……
害虫が多くてね」
眠気の奥から引き上げられたような声だった。弁明でも、冗談でもない。ただの事実を述べる調子で。掠れた声だった。
「
……
もう少し
……
もう少し、寝させてくれませんか」
そう言って、目を閉じかけたまま、言葉を継ぐ。
「結果は
……
もう、変わらないでしょう」
返事はなかった。代わりに沈黙が落ちた。それは拒絶ではない。肯定でもない。言葉を否定する理由はどこにも残っていなかった。
彼の言葉は
――
否定されるより早く、場を通り過ぎていた。それ以上何も語られることはない。説明も、弁明も、ましてや歓喜など示されるはずもなかった。
彼は促されるままに静かに身を起こした。ためらいも抗いもなく、歩みを進める。礼拝堂へ戻り、定められた位置に身を置く。残されたのは
――
形式のみであった。
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