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akinoshiroihana
2025-10-31 01:18:47
17272文字
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名刺置き場13
ゲッター25年後半
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●🎃その2
なんでこんなことになったんだ
撃て撃ていややめろ撃つな跳弾が、跳弾が危険だと騒ぐ素人多めの車両用入口からの通路にて。
侵入者に気付かれた当初、ハンドガンをおっとり刀で構える初老の職員がいたからおいよしなとばかり、佐武市捕物帖の佐武の捕り縄のごとくひょひょいとあやつり、銃を取り上げるのに使ったのは、ここを訪ねる理由にもなった、手に負えなくずるずる巻きの包帯でだった。
「そうしたらどうだ、『本物だぁ!』との悲鳴と一緒に発砲許可も出てない奴らがぶっ放しやがんの、若えのは『あの下からムシがいっぱい出るぞムシが来るぞいやだああぁ』とこれまた尋常じゃねえ怖がりようでよ」
ネーサーに寄る程には近場の用でも当初はなかった、自然石割りなど師範級の実力者の実演の撮影を頼まれて訪れた先は。しかしビール瓶切りの後あたりから氷柱割り等と進むうちに借りたスタジオの利用時間の残りが怪しくなり、巻きで巻きでとはい次ハイ次と一礼するのさえいい加減になってきたからおいあんたら、と彼が文句を言いかけたところに「熊が逃げた!!」との悲鳴が割り込んだのだという
冗談じゃねえぞ大山倍達が戦ったのは牛だっつうの、それも角を折っただけだしクマはウィリー・ウィリアムズがいかにも飼われてた感じのクマに構ってもらってただけで倒すだなんてとんでもねえ、動物ををナメてやがんのかどこから調達しやがった、倒させよう殺させようって算段なんぞでよ、それも他人に、ヒト様に。ああもう
―――
テレビの観過ぎか命がよっぽどちっこく見えてやがんな、
「お前さんならぎりぎり倒せない事も無さそうだが」「いやいやいや500kgあっても珍しかないんだぜヒグマってのは」など応えた彼は恐竜帝国の騎乗するラプトルなら市街に放つべく強化された頭骨さえも両の拳で粉砕したのだが。
かくて、撮影スタッフ全員を鮨詰め状態で無理矢理ハイエースに乗り込ませ、クマはひとつ睨んで戦意だけ失わせて、シャッターを下ろしたスタジオの中に「ちょっと待ってろ」とハイエースもろとも置いて来たのだという。
応援を求めるべくサロマ湖近くにあるという基地目指してぺたぺた歩き出したら、ヒグマの爪がかすめた頭皮が削げて、頭ってのは血が出ると派手でいけねえやと道すがら包帯を巻き付け巻き付かず、あっクソこんにゃろうミイラ男じゃねえんだぞ、着いたらあいつにカッコよく巻き直してもらうかと独り言ちもした。
「なるほどミイラ男歴代諸作品か」
「そうだよミイラだよ!なんだよそれであんなにビビられてたのか、この時期だぜハロウィンかなんかで済まなかったのかよ」
やっぱテレビの観過ぎだと流竜馬はため息をつき神隼人の手当てを受ける。「『王家の紋章』って少女マンガのよ、アイシス様ってのが1巻で包帯攻撃してたって、そんなのお前覚えてる?」「細川千恵子は怖いのも描くから読まなかった」「そっか、」1976年連載開始作品のはなしである。その頃には凄惨なものを既に見飽きるほど目にしたであろう彼らであったが、
緊急避難を振り切り駆け付けてみれば、そんなものより余程心臓に悪いものになら見違えて言葉を失ったのだが、とは隼人は言わない、言えるはずもないから。
戦友を失ったと思う他なかった後まもないあの夜、暗闇から車の前に躍り出て来た包帯男、僅かに覗いたその双眸のいやなぎらつきと笑い、息遣い。ケダモノにしか感じられなかった。絡みついて動きを封じて来た包帯、嘲りと共に襲い来た不具にするか殺す気での打撃に後はされるがままの不愉快な、何も燃え立たせない痛み。記憶が零れ落ちただけだというのに、お前らしさはほんのひとかけらも。
愛しいほどに思った事のある男を、そんな風にしか感じなかった夜があるなんて。
「なあそれ楳図かずおとどっちが怖え?」
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