悪いな、今夜はなんもねえぜ
街へ行きな
……いや今夜はよくねえんだったか、黒猫がひでえイタズラされるってのは都会のでけえ餓鬼共にだけだったか?でもどこも不景気だしなあ、機嫌のよくねえ奴らはてめえより弱いものなら何にだって当たる、か
先日ネーサーのモニター画面越しに見た海の向こうのハロウィン飾りは、例年になく悪魔と悪夢の跳梁を喜ぶかのようで可愛らしさやユーモアには程遠かったのを思い出して、彼は。
訪ねてみた相手は生憎と出払っていて、なんでえなんでえとぼやき月見の薄の銀色の穂を振る彼に、戦友はそのモニターの向こうから苦笑して詫びた。戻ったら俺の方から行くよ、と。
「ああ早く来いさっさと来いなんだその呪われた街みてえなのは、ちっとも笑えねえや」
とん、と太い指を突き付けられたノート画面はたやすく揺れ、画面の中の光の束でできた戦友もたやすく乱され、会議中のモニターを一つ抱えて来てくれた號はおいおっさん、と抗議した
道場に今夜は一匹だけ訪れた猫を、黒いその毛並みを撫でてやりつつ彼は思い返す。秋の頃になれば向こうは月を見るよりああいうおかしな行事があるのだったと。真面目な宗教であっても贖罪の日と称して頭上でニワトリを三度振り回して屠ったり、もっと昔に投げ落とした生きた猫の代わりに可愛らしい縫いぐるみが聖堂から投げ落とされるとか。全ての罪をそこに託して、
人形を、黒い猫を
膝の上、ばんざーいをさせていた猫を眺めつつ彼は何やらそわりとした
高みからその手を離すような、
何が起きたかわからないという顔のきれいなまなざし
それがみるみる遠ざかる小さくなるきこえるさけんでいる
バカな!!またおれを
―――
ばっと抱き寄せた獣が腕の中抗議の声しきりで爪を立てるが、何かわからない夢でも見たように、彼はその腕を緩めることを思いつかない
地球の裏側13時間後の世界にまだいる戦友を、早くはやく来い、と彼は呼んだ
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