ぼくがいます、と言おうとする男の、いかにも口幅ったい事を自覚して言うときのもごもごとした小芝居にああ、と午後一時半の竜馬は思う
昼ドラとワイドショーしかやっていない時間帯。
沈黙を破るに当たってせめて「ぼく」ではなく「おれ」から始まるのだったらほんの少しだけ、つまり物凄く口に出しやすかろうに。「ボ」なんて鼻母音、それに言う勇気がもたなかった時に、誤魔化せる他の単語も思い付きにくそうな。盆踊りとかボウリングとかボクシングとかボツワナ、うんだめだ手に負えない。
「こいつ多分心の中のほんとの一人称は『ボク』じゃねえんだろ、だから口ごもる」
この作中人物がかな、役者がかな。
竜馬の考えを読んだではないが、とても近いところを掠めるようなことを、となりに架ける隼人が言った。
「おまえは正直なところどっちなんだ実はまだ『僕』かい?『俺』かい?」
竜馬に聞かれた相手は「今さら聞くか?」と首をかしげる。
「だってもしも『俺』がおまえの世界にとってまだ乱暴だったら、その」
きれいな目で大真面目に返して、ことばの代わりに自分の胸に手をやって示す戦友にくくっと喉の奥で笑い、ばあか、とだけ隼人はいう。
「お前はお前のままでいいんだよ俺はそれが一番さ」
受け入れるよお前を、と。
そもそも俺達がゲッターでやってる「合体」って言葉は、何百年も前に中国で生まれたときから、結婚を意味するんだぜ。
だとしたらproposal提案にしてプロポーズはとっくに終わってるのさ俺達の場合。
そう言う彼に感極まったようすで竜馬がその肩を力強い親愛の情と些か近すぎる距離で抱き寄せようとする向こう、
テレビの中ではなにか空回りした男が一人取り残されてコミカルな嘆きの叫びを上げ、さらにその向こう、帰ったぞ母さんお土産だと式場帰りの早乙女博士が小さな花束とバウムクーヘンのショッパーをぶら下げて闖入し、ソファの上の仲睦まじき若者たちにふむ、とだけ漏らした。
そんな昼下がり
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