akinoshiroihana
2025-10-31 01:18:47
17272文字
Public
 

名刺置き場13

ゲッター25年後半




月がみえると、つきがまるいよと、誰かがそう告げた

火星に生まれた風が俺の、俺達の―――火星の大地と同化した真ゲッターの目の、新しい地層を少し吹き飛ばしたようだ
琥珀の中の昆虫のように、嘗ての姿がそのまま埋まっていたパーツが、砂嵐の向こうの空を遙か見遣った
ゲッターの中の世界時計が、いまの俺達の共通の認識となって、いま俺と、號の―――嘗て俺ではなかったものの故郷が秋で、夜になる頃だと、月が満ちるとわかる。今は―――ああそんな年がすぎたのか。

月は、まるくない、ここからは丸くない。月が満々と輝くのはいま地球から見上げたときの話だ。ここからは満ちたままに倒れた盃のように、欠けた青い星の輪郭が白い羽衣を纏い浮かぶ向こう、同じ六日月になった白い星がそのそばに連れ添い
ああ友の色だ、ともに彼の色だとそう思うからにはこの俺の名は   なのだろう。あれは俺が友と連れ立って身を浸しもした海で、ともに見上げた月なのだろう。
ゲッターと共に微睡んでみれば、かつて地上で聞いた叡智も、幼子の夢語りのようにおかしいが。海はどうして生まれたのか、月は果たしてあの星の片割れだったのか、五十年もすればまるで異なる学説には辿り着いたことだろう。それでも、俺にはさして問題なかった。そこにあれば、そこにいてくれれば、おれの思う彼のまますべてを終えてくれたといつか知る事があるなら、やすらかなきもちでねがいいのることができていれば。おれは、「   」は「   」を。

火星の風がまたゲッターの上に積もりゆく、視界がふさいでゆく。
青い星とその傍の白い星の残像におやすみとつげて、おれはまためをとじた。