Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル

尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです



「なんで白は、俺に優しいの」
静かな部屋で、思いのほかその言葉はよく響いた。
ベッドシーツに埋もれた一護が、丸くなりながらこちらを見上げている。眠るときに腹を押さえるのは一護のクセだ。最期まで痛かった場所を、今もまだ無意識に引きずっている。
……なんで、っつってもなァ」
「だって、俺はなんにもできねえのに」
「出来の良さ見て優しくすんなら、俺ァウルキオラあたりにゃ甘々だろうな」
「ふ、……茶化すな、って」
「てめえがバカなこと言うからだ」
吐息だけで笑った一護の頭を撫でながら、さてどうするか、と考える。下手にはぐらかすと拗ねて面倒なことになる。相手をしてやるぶんにはいいのだが、妙なところで頑固で行動力がある男だ。飛び出した先が虚圏の砂漠ならまだマシだが、とち狂って現世にまで向かう可能性もある。
……逆に聞くがよォ、」
「ん」
「優しくされんの、嫌なのかよ」
琥珀の瞳がまたたいた。難しいことを聞かれました、という顔をして、視線がうろうろと部屋の隅をさまよう。
……嫌じゃない」
「ならいいだろ」
「でも気になる」
「あのなあ。ンな大層な理由なんてあるわけねえだろ」
……ねえの?」
「大事だから優しくしてんだろうが。それ以外に理由がいるか?」
血色の悪い頬が、ほんの少し赤くなった。布団の中に消えていった一護を見下ろして、隠れきっていない角を撫でる。散らばったオレンジが波打つのが面白い。
「一護」
……
「いーちご。機嫌なおせって」
……悪くしてねえ」
「そりゃよかった」
……しろ、」
「ん?」
…………なんで、俺なんか、大事なの」
今日はどうも卑屈になる日らしかった。一護の精神は振り幅が大きい。基本的に浮きがなく沈んでいるが、特に沈みが深いと常にも増して暗くなる。それでもベッドから顔を出してくるあたり、多少はマシだろうが。
……約束したからな」
…………?」
「なんでもねえよ。ホラ寝ろ寝ろ。おまえ今日ずっと腹痛えんだろうが。寝て忘れろ」
……白も寝る?」
「おー。そっち詰めろ」
「ん」
「おまえこのクッションどけねえのか。邪魔じゃねえ?」
「だって、リリネットがくれた」
「あっそ」
かわいらしいピンクのクッションを脇に追いやって、同じベッドに潜りこむ。さっきからずっと眠気をこらえていた瞳は、引き寄せて背中を叩いてやるだけでたやすく溶けた。
言動も思考も、まるきり赤子の相手だ。何もかも置き忘れてきた半身からは、あらゆるものが欠けている。
今は、それでいいと思った。まだ早い。あともう少し。この馬鹿みたいに生ぬるい平穏が終わるまでは、彼を取り巻く世界が、少しでも優しいものであればいい。

───ほんとうに、助けてくれる?

砂漠の真ん中で、泣きながら呟いた子どもを思い出す。
もう取りこぼして忘れ去られてしまった、始まりの記憶。白だけが抱え込んだ、ふたりになる前のふたりの話。
「おやすみ、一護」
伸ばされた手を掴んだあの夜を、俺だけは絶対に忘れない。