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Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル
尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです
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ばたばたと音を立てて廊下を歩いていたところを見咎められ、侍女頭から「はしたないですよ!」と叱責が飛んできた。それに手を上げて形だけの謝罪を述べ、目的の部屋へと急ぐ。
「海燕さん!」
「おー、一護! でかくなったなあ」
「何日いるんだ? 言ってくれりゃあ迎えに行ったのに! 副隊長の仕事って忙しいのか?」
「いっぺんに聞くんじゃねえよ。座れ座れ、俺だってオメーと話すことが山ほどあんだ」
促されていそいそと座布団に座る。駆けつけることが初めからわかっていたのか、屋敷の者がすぐさま一護の前にも淹れたての茶を用意した。
「今回は三日間だな。明々後日の朝に戻る。それまでこっちでのんびりだ」
「そっか。
……
な、忙しかったら、いいんだけど、その
……
」
「バーカ、遠慮すんなっていっつも言ってんだろうが。稽古くらいいつだって見てやるよ」
「
……
ホントか?」
「俺がオメーに嘘ついたことあったか?」
「ない!」
すぐさま首を振った。海燕は嘘をつかない。いつもまっすぐで、まぶしくて、からりとした太陽のようなひとだった。
「聞いてくれよ! この間、はじめて斬魄刀がこたえてくれたんだ! 名前はまだ教えてくれなかったけど、でも話したんだ!」
「おお、スゲーじゃねえか一護! さっすが自慢の弟だぜ!」
「やめろよバカ、従兄弟だろ」
「弟みてえなモンだろ」
大好きだった。あこがれていた。このひとのようになりたいと、強く思った。
───そう、思っていた。
「
………………
ぁ、」
息とともに涎が垂れた、いいや、ちがう、血だ。鉄臭いそれが腹の底からせり上がって、止めるすべもないまま口の端から垂れ流される。
「一護」
大好きな兄の声がする。寒い。痛い。体がかたちを保てない。視界に入った右腕は末端から腐っていた。
「ごめん。ごめんな。キツかったな、痛かったな。
……
兄ちゃんが、護ってやれなくて、ごめんな
……
ッ!」
のろのろと視線を下にやる。美しい三又の槍の切っ先が、深々と腹に突き刺さっていた。
ゆっくりゆっくり、その槍が抜かれる。血が出たがあまり痛くはなかった。ただひたすらに寒くて、視界がぼやけて、ああ俺泣いてるんだ、ってことを他人事みたいに思った。動かない右腕を動かそうとして、不意に指が崩れ落ちる。海燕が目を見開いて、それから唇をぎゅっと引き結んで、まだ無事な手首をそっと握ってくれた。
「
……
め、なさ
…………
」
傷つけてしまった。取り返しのつかないことをした。大好きなひとの愛するひとを、この手で斬り殺してしまった。
「ごめん、なさい」
自己満足のために謝るなよ、と、冷静な自分が嘲った。それでも謝る以外に言葉が見つからなくて、死んでゆく体を自覚しながら機械のように同じ言葉を繰り返す。
「ちがう、違うんだよ、おまえのせいじゃない! おまえのせいじゃないんだ、一護!」
「
……
かい、えん、さ
……
」
「おまえがアイツと戦ってくれたから、俺を護ろうとしてくれたから、だから俺はいまここにいる! おまえはひとつだって悪くないんだ!」
違う。だって一護は今この瞬間、まぎれもなくうれしかったのだ。苦しくて悔しくて死にたくて痛くてたまらないのに、そばに彼がいることが、たったそれだけが一筋の光のように輝いてそこにあった。
あのやさしい姉を、この手で斬り殺したくせに。海燕から都を奪ったくせに。自分だけ、自分だけが、看取られて死ぬなんて。
それが醜くて浅ましくて卑しくて、あまりにも汚らしくて、一護はわずかに首を振った。ばらばらと、そのたびに魂魄が霊子のかけらとなって崩れゆく。
「
…………
おれが、」
討伐隊に加わりたいと手を挙げたのは一護だった。いいや俺が行くと言った海燕を都と一緒にどうにか丸め込んで、無理やり同行したのだ。
あなたも海燕さんにいいところ見せたいわよね、と、都は笑った。照れくさくてぎこちなく返した。それが最後だった。
初めから、海燕が行っていれば。いいや、それでも被害は出たかもしれない。もしかしたら、都か海燕のどちらかが殺されたかもしれない。それくらい凶悪な敵だった。それでも、ああ、けれど。
「
……
いなきゃ、
……
よか、た
…………
の、に
…………
」
海燕の目が見開かれる。もうぼやけてろくに見えない。なにか、叫んでいるような気がするけれど、なにも聴こえない。
全身が弛緩する。寒くて、痛くて、目蓋ひとつ動かせなくなってゆく。
やまない雨が冷たかった。その感覚を最後に、一護の意識は闇に落ちた。
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