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Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル
尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです
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「それ、痛むのかい?」
かけられた声に顔を上げる。柔らかな笑みを浮かべた桃色の髪の男が、廊下の隅で座り込んだ一護の前に立っていた。
「君が望むなら、取り除いてあげようか」
「
……
どうやって、ですか」
「そうだな、色々と方法はあるが
―――
……
」
目の前に屈んだ男の指が、右の手の甲に触れる。そのまま肘を通り二の腕を過ぎたところで、強くなった痛みに思わず顔をしかめた。
「君のコレはずいぶんと根深いらしい。大元から切り取ってしまうのが一番だろうね」
「
…………
そう、ですか」
「ところで話は変わるんだが」
変わった形の仮面の向こうで、冷めた瞳がぎらりと光った。いやに覚えがあるもので、思わず一歩後ずさる。後ろは壁だ。逃げられはしない。
「君、僕の実験台になる気はないかい? 大丈夫、代わりの腕は用意するさ」
「まーたンなとこに入り浸ってんのか」
「
……
だって、変なのいっぱいあるし」
「変なのとは失礼だな」
「変だろ、ここもテメエも」
「君は相変わらず態度が悪いね。彼を見習ったらどうだい? そんな風じゃ孤立するよ」
「知るかよ。一護以外に興味はねえ」
「おや、熱烈」
肩をすくめたザエルアポロが、これ以上の会話は無駄と悟ったのかこちらから視線を外しモニターへと向き直った。隣に座った白が、抱えていた本を覗きこんでくる。
「なに読んでんだ」
「図鑑、
……
現世の本、だって」
「ふーん」
聞いておきながら、相槌に熱はなかった。早々に紙面から視線を外した白が、揺れるばかりの右袖をつまみ上げる。
「さっさと済ませろよ」
「そうしてほしいなら黙っててくれるかな。気が散る」
振り向かずに言ったザエルアポロの背中に向かって白が中指を立てた。舌も出ている。じっと見つめれば微笑みに変わった。何度見ても、振り幅がすごいと思う。
片手だとページがめくりづらいのを察したのか、一護が目を通すペースに合わせて、隣から手が伸びてくる。いい具合にめくってくれるので、ありがたく甘えることにした。単調な動作すら手放してしまうと、途端に眠気が襲ってくる。次はこれも調べてもらうべきだろうか。
「眠いか」
「
…………
う、ん」
「寝てろ。起こしてやるから」
「
……………………
ん、」
髪をかき混ぜる手に身を預けて目を閉じる。白といて、長く起きていられた試しがない。分けたことが原因なのだとしても、元に戻る気にはならなかった。そもそも、戻し方だってわからない。
自分のことなのに、わからないことだらけだ。どうしてこうなったのか。どうして死神だったらしい自分がここにいるのか。どうして、藍染は何もかも知っていたのか。
頭痛がする。何もない腕が痛い。逃げるようにぎゅっと強く目を瞑って、白の体へとすり寄った。
「君たちは本当に面白いね」
かけられた声に睨みを返せば、意に関さぬといったばかりに肩をすくめられた。こちらに体を向けたザエルアポロの視線から、一護を隠すように抱きしめる。眠りに落ちた一護は身じろぎひとつしなかった。まるで、死んでいるみたいに。
「君がそばにいると、一護の精神は安定する。かわりに霊体は極端に不安定へと振り切れる。
……
自分の存在維持で精一杯だろうに、よくもまあ主人の形まで保っていられるものだ」
「黙れ」
「怒るなよ、褒めてるんだ。心配しなくても、この部屋は藍染様の監視下にない。何を話したって伝わらないさ」
ザエルアポロの手の中で一護の右腕が揺れた。定期的に調整されるそれは、見た目には本物と変わらない彼の最高傑作だ。
痛むばかりの腕を捨てることに決めた一護を、白は止めなかった。最低の科学者に託すのは業腹だったが、これ以上、過去の遺物に苛まれ続ける一護を見ていられなかったからだ。
『ソノ腕、使ワナイナラチョウダイ』
『使うさ。寄生されて破面化した死神の肉なんて、今後手に入る機会のない最高の研究対象だ』
『終ワッタ後デイイヨ。なんなら指の一本でも』
『
……
それも一興か。考えておこうかな』
一護は、その後の詳細をあまり知らない。当事者であり、腕を落とされたその場で聞いてはいたが、ずっと意識が朦朧としていた。のちに説明はしてやったが、それを理解できたかどうかは怪しい。あまり、多くのことを頭に留めていられなくなった。
右腕の構成、骨格、それらすべてを数値化してザエルアポロは完璧な義手を作り上げた。そのかたわら、腐らぬよう固定させた肉を切り刻み溶かし焼きすり潰し、思う存分材料として楽しんだ。
そうして、残りカスに等しくなった肉片を、アーロニーロが喰らったのだ。その結果、彼は一護の見目を得た。役に立つかどうかは不明だが、今後のことを
―――
……
彼の虚らしい悪辣さを考えると、きっと最悪のタイミングで使われるのだろう。
奔放で明るい『黒崎一護』の姿は、ずいぶんと懐かしかった。うずくまり小さくなって眠る今の一護のそばにいる己からすれば、あまりにも。
「彼、このままいくと、死ぬよ」
ザエルアポロの声が、静かな部屋によく響いた。膝の上で眠る痩身を抱きしめて、眼鏡の奥の瞳を睨む。
「わかっているんだろう? こんなこと、到底続けられるものじゃない。元の出来がよかったんだろうね。どうにか取り繕えてはいるが、
……
魂魄にかかる負担は大きい。あと数年保てばいいほうかな」
「
……
だろうな」
「君だって例外じゃないさ。それこそ、僕が言うことでもないだろうが」
それきり、ザエルアポロは口を閉ざした。白もまた視線を外し、隣の体に頭をあずける。目蓋を下ろし、わずかに響く振動から心臓が動いていることを確かめる。
終わりが近いなら、尚更だ。一護には少しでも心穏やかに過ごしてほしい。好きなものを見つけて、好きなものを食べて、好きなように振る舞って。好いた相手をつくったっていい。認めるかどうかは別だが、一護が幸せなら、それでもいい。
冷えた手を握りしめると、弱い力が返ってくる。たったそれだけが、泣きたくなるほど愛おしかった。
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