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Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル
尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです
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歳の離れた従兄弟のことを、本当の弟のようにかわいがっていた。
海燕には妹も弟もいた。そりゃあもう可愛いきょうだいだ。けれどそれよりも小さくて、ひょろっこくて、うそみたいな髪色をした従兄弟に初めて会ったとき、あんまり愛しかったものだから、叔父の手から奪い取って抱きしめてしまった。叔父には殴られ、従兄弟には泣かれ、妹には呆れられた。頭にはたんこぶができた。
名を、一護といった。なにか一つのものを護り通せるように、と、そういう願いがこめられていた。ふにゃふにゃ笑いながら後ろをついてくる小さな体がかわいくて、肩車をして庭を駆け回った。さっきまで泣いていたくせに、母に頭を撫でられるとすぐに機嫌を戻して、声をあげて笑っていた。会って数分足らずの海燕によく懐き、帰るころには全身で手を振って見送ってくれた。
太陽のような子だった。夏に咲くひまわりにも似ていた。青空の下がよく似合った。一家そろって、そっくりな笑い方をした。
かわいい一護。俺の弟。自慢の部下。将来が楽しみで、そして。
───俺が、この手で殺した、こども。
「ここにおられたのですね、海燕殿」
「
……
朽木か」
頭を下げた少女───朽木ルキアが、そばに並び立つと目を伏せた。なにを思っているか簡単に見て取れて、かといって何を言うこともできず、じっと口をつぐむ。
「
…………
もう、ずいぶんと、経ちますね」
「
……
ああ」
それきりルキアも口を閉ざした。かがみこんだ小さな背中が、音もなく静かに手を合わせる。濡れた墓石から反応はない。当たり前のことだ。
毎年、この日はいつも雨だった。晴れているところを見たことがない。いつだって、海燕を責めるように雨が降った。
絶望したまま死んでいった子どもの目を、ずっと忘れられないままでいる。
海燕は一護を救えなかった。肉体だけでなく、心も誇りもなにひとつ。ずたずたになるまで踏みにじられたそれらを、すくい上げて照らしてやることさえできなかった。
寄生した虚を殺すために必死になったのだろう。右腕はむごたらしく潰れていた。刃物で何度も刺した跡があった。石で砕いた跡があった。それでもどうにもならなくて、苦しんで苦しんで泣いていたところにやって来たのが、愚かにも救えると思っていた海燕たちだった。
『にげ、て、』
一護の身は、内側から食い潰され、右半身はほとんど腐っていた。ひと目見て、助からないとわかった。わざと意識を残されていることも。長引かせれば長引かせるだけ苦しめるとわかっていた。わかっていたのに、海燕は一護を斬れなかった。斬りたくなかった。
『かいえん、さ、ん』
助けたかった。助けたかったのだ。そのためならこの身を投げ打っても構わなかった。それなのに。それだけ、だったのに。
『おねがい、だから、──────もう、ころして』
あの子は最期まで、ただの一度も、助けてくれとは言わなかった。
雨ではない液体が、音もなく地を濡らした。
握りしめすぎた拳から垂れるそれを見やって、ルキアは二歩後ろに下がった。墓前の祈りはもう済ませた。ここにいる必要はない。
持ってきた二本の傘は、結局ひとつしか使われなかった。やむ気配のない雨の音を聴きながら、ルキアは目を伏せる。
あの日の慟哭を、今もまだ覚えている。生涯忘れることはないだろう。
ルキアには何もできなかった。口を挟むことも、手を出すことも。刀を抜いたのは海燕だけだ。浮竹に制されるまでもなく、ただ呆然と、変わり果てた友人を前に立ちつくしていた。
日向のような男だった。明るく凛として、よく笑う。海燕に似ていたが、海燕よりも穏やかだった。彼が背を押すことを得意とするならば、一護は寄り添うことを得意としていた。
入隊したばかりのルキアの補助についた一護は、すぐさまルキアと親しくなった。馬が合うというのはこういうことなのか、と感嘆した。そうして義兄との関係がうまくいっていないことを知った一護は、ルキアの手を引くと、そのままの足で白哉の部屋の戸を叩いたのだ。
『こら! 妹泣かしてんじゃねえぞ白哉!』
義兄は目をまるくしていたし、ルキアは顔面蒼白だった。しんと静まる部屋の中で、一護は堂々と胸を張ってこう続けたのだ。
『話さなくても伝わるなんて、ンな甘えたこと抜かしてんなよ』
白哉のことを、ためらいなく兄と呼べるようになったのは、一護のおかげだった。
離れていった恋次との距離が再び元に戻ったのは、一護がいたからだった。
『家族だったんだろーが。家族と会うのに理由なんかいるのか? 会いたいときに会えばいいだろ。ケンカしたなら仲直りすりゃいい。難しく考えすぎなんだよオメーは』
好きだった。男女のそれではなく、人として、そのあり方を心底から好ましく思った。叶うのなら、彼から受けた恩の数以上に彼の助けになりたかった。少しずつ返していきたいと、思っていた。
───俺が、いなきゃよかったのに。
最期の声は、あまりにも静かで、悲しかった。一護が過ごしてきた今までを、ほかでもない己で手折る、呪いのような言葉だった。
濁った目をうっすらとひらいたまま、一護は死んだ。傷みきった右腕は腐り果て、端から崩れて雨に溶けた。腹には槍の刺し傷があった。
死体となった一護を、一護を腕に抱いて泣き叫ぶ海燕を、唇を噛み締めて俯く浮竹を前にして、ルキアは。
何もできなかったから、泣くことさえ、できなかったのだ。
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