Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル

尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです



「おまえ、腹が減ってるのか」
声がした。顔を上げる。寒さで震える体を血まみれの両腕で抱いたまま、月を背にするそのひとを見た。
……ずっと、見てたけど。やっぱり、この距離でも死なねえんだな」
…………、?」
「ああ、こっちの話だ。……なあ、おまえ、名前は?」
「うわっ、顔ドロドロじゃん。拭くよ? 触るからね?」
少女の手が頬に触れる。それがあんまりにも熱かったものだからびくりと体が跳ねた。反射的に出した霊圧で風が巻き起こる。
だめだ、と、思った。だってみんなこれで死んでしまった。寒くて、寒くて、どうしようもなくて、そばにいてほしいだけだったのに、近づくだけでみんな悲鳴をあげて倒れて、だから、さみしくて、食べてしまった。
「ごめん、びっくりした? 大丈夫、あたしらこんなのじゃ死なないよ。気にしなくていいから」
少女が笑う。なだめるように背と頭を撫でられて、詰めていた息を吐いた。屈んだ男が頬をかいて、むき出しの肌に布を着せてくれる。
「俺はスターク。こっちはリリネット。……名前、わかるか?」
………………なまえ、」
なんだったか。おれは、だれだったか。
なにか大切なものだった気がする。おぼろげな、霞むような記憶の向こうで、だれかがこちらを見て笑っている。その口もとの動きに目を凝らして、音を模倣する。
…………いちご」
「イチゴか。……なあイチゴ、ものは相談なんだけどよ」
スターク、と名乗った男の手が、驚かせないようゆっくりと頭に触れた。撫でられるたびに固まった血がぱらぱらと落ちていく。
「おまえもひとりなら、俺たちと一緒に行かねえか。……あいにく、行くあてはねえんだけどよ」
「そこはあるって言ってみせなよ」
「うるせー。嘘言って何になるんだ」
……行く、って、…………どこまで」
二人が顔を見合わせた。困ったように笑って、揃って口をひらく。
「「どこまでも」」
差し出された手を、夢見心地のまま取った。どうにか立ち上がった体はふらふらで、ため息とともに男に背負われる。
あたたかい。あたたかい。さみしく、ない。
ずっと昔にも、こんなふうにだれかに背負われたことがあるような気がする。
『泣かなかったな、えらいぞ■■。俺と一緒に帰ろうな』
それがはたしてだれなのか、もう、思い出せないけれど。