Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル

尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです



新たに加わった破面について、藍染は隠すことなくこう言った。
「その子はね。死神の死体からうまれた破面だよ」
さざめきのように動揺が走る。意味をはかりかねて黙った面々を見て、藍染は続けた。言葉通りさ、と。
「虚が仮面を剥がして死神の力を得たのではない。死神が虚に魂を喰われ、死んで破面になったんだ」
曰く、もとは一人の死神だった。その死神と戦い、死神の体を乗っ取り、別の死神の手によって殺された虚がいた。融合して半端に混ざりあってしまったがゆえに、虚の魂は浄化されず、死神の魂は霊子として還れなくなった。そうして虚圏に流れつき、死神だったものの肉体に主導権が移る形で、その魂魄は歪み果てた。
同情するような話でもない。くだらない、とさえ思った。味方が操られて敵になったなら、それは切り捨てるべきだ。正当極まりない。その程度で死ぬ、弱い奴が悪かっただけだ。
座り込んでうつむくオレンジ髪の破面からは、何の匂いもしなかった。早々に興味が失せ、あぐらをかいて鼻を鳴らす。シャウロンが咎めるような視線を寄越したが知ったことか。
「それで、その元死神をどうするのですか」
「どうもしないよ。出自は特殊だが、君たちと同じ存在であることには変わりない。ただ順序が違うだけで、彼はもう死神ではないよ」
……いえ、異論はありませんが」
「彼の処遇は君に一任するよ、スターク」
…………俺ですか」
「長い付き合いだろう?」
ハリベルの問いに答え、そのまま話はスタークへと移った。困惑したように視線を揺らした男が、やがてオレンジ髪の前に立つ。リリネットもそばに寄った。ゆるゆると上げられた顔が二人を見上げる。
「一護」
それが、その破面の名だと、そのとき初めて知った。
「俺たちと、一緒に来るか?」
爪の伸びた手が、スタークの手を握った。うなずいた拍子に髪が揺れて、仮面に覆われていない左の顔があらわになる。
……藍染様。一護を、俺の従属官に」
「ああ、構わないよ。そうしてあげなさい」
藍染は楽しげに笑った。リリネットが一護と呼ばれた少年に抱きつく。困惑の色をにじませながら、細い手がリリネットの背に回る。
不意に、ばちりと音がしそうなほど明確に目が合った。途端に凄まじい勢いで逸らされてこめかみが震える。弱い奴ほど見ていて気分が悪いものはない。
「どこへ行くんだ、グリムジョー」
「戻るんだよ。話はもう終わったろ」
立ち上がり、踵を返す。これ以上の興味は、毛ほども湧かなかった。

───そのはずだった、のだが。
……………………あ?」
……ぁ、」
「あン?」
オレンジの隣に、白色がいた。いいや、破面の服はみな白を基調としている。そういう意味でなく、単純に、そっくりそのまま色を抜いたような男が、当然のように連れ立っていたのだ。
あれからそう時も経っていない。まさか、イールフォルトたちのような兄弟というわけでもないだろう。何せこれは死神の死体だ。そんな都合のいい話があるわけがない。
……ンだ、てめえ?」
……人にモノを尋ねるときの道理も知らねえのか? これだから獣育ちは」
「あァ!?」
「し、しろ、やめ……
「一護、下がってな。そうそう、いい子だ。俺の後ろにいろ」
……ハッ、ンだよ、同じ顔してヒメサマ扱いしてもらってんのか? ンなナリで一丁前に従えてんのかよ」
無性にイライラした。神経を逆撫でする白い男は当然だが、ビクビク震えて隠れる男がいけ好かなかった。
だから、グリムジョーはこう吐き捨てたのだ。
誰かに殺してもらうのが好きなんざ、ご大層な趣味じゃねェか」
───きっとこれが、特大の地雷だった。
薄茶色の瞳が見開かれる。声にならぬ、吐息のような音が唇のあいだから微かに漏れた。耳ざとく拾ったそれを聞き返しそうとしたところで、虚夜宮の廊下で霊圧が爆発した。
「なになになになん……なんだよコレ!? グリムジョー!? 何してんだオマエ!」
「うるせえ出てくんなディ・ロイ! イールフォルト、そのバカ引っ掴んでろ!」
「ああもうわかったわかった。知らないからな!」
イールフォルトがそう叫んで、騒ぎ立てるディ・ロイとともに宮の奥に戻っていく。爆心地の中心にいたのは白髪ではなくオレンジだった。頭を抱え込むようにして、ふらふらと頼りなく揺れている。その霊圧は目眩がするほど重苦しい。
従属官など馬鹿げた話だ。どう考えたって、そんな枠に収まらない。
「ンだよ、やれんじゃねえか! 最初っからそう言えよ!」
……ッの、バカが……! 一護、落ち着け! てめえが戦う必要はねえ!」
「温りィこと言ってんじゃねえよ! 護られるばっかがお得意か、あァ!? ちったァ自分で言い返してみやがれ!」
「う、るさい……ッッ!!」
一護が髪を振り乱した。瞳にぎらぎらと光が宿る。間に入ろうとした白い男を押しのけて、強烈な霊圧反応が収束する───虚閃だ。
面白い、と思った。腹の底が疼く。本能が沸き立つ。右腕を突き出して、その手首を左手で支えた。青い光が音を立てる。
グリムジョーよりも一瞬早く、一護が床を蹴りつけた。眼前に迫った蹴りを腕で受ける。その細い体のどこに力を隠しているのか、繰り出されたそれはやたらと重かった。知らず笑みを浮かべたまま、叩きつけられた壁ごと吹っ飛んで体が宙に浮く。
「───お返しだ、受け取れ!」
赤と青、二つの虚閃がぶつかりあって爆発する。虚夜宮を揺るがせたそれのあとに残ったのは、無残にも破壊された外壁と、晴れることのない土煙だった。

そんな、凡庸で最低最悪な出会い。
そのはずだったのに、どうしたものか。
…………オイ。いつまで着いてくるんだ、てめえ」
……いちゃいけねえの」
「てめえの主人はスタークだろうが。なんで俺の後ろにいやがる、って聞いてんだよ」
……だって、スターク、動かねえし」
眠たげな瞳で、一護は大股に歩くグリムジョーのあとをついてくる。好かれる要素など微塵もないはずであるのに、何がどうしてこうなったのか。スターク曰く「俺たちの真似して作ったんだよ」と言っていたあの白い男はどこに行ったのか。疑問は尽きないが、グリムジョーは問いかけるのを諦めた。どうせろくな答えは返ってこない。
「護られる、ばっかは、嫌だから」
……あ?」
「あんた、強いだろ。だから、教えてほしくて」
「何を」
……戦い方、とか」
ふざけるなと言ってやりたかった。バカにしているのかと殴り飛ばしてやりたかった。
あのとき撃ち出した虚閃は、赤色に消し飛ばされたのだ。まさかそれを見ていなかったわけでもないだろうに。
…………嫌なら、いい。気を悪くさせたなら謝る」
……
「付きまとってごめん。もうしない。顔見せないように、する」
「てめえ、名前は」
…………えっ」
「言えるんだろうが。名乗ってみやがれ」
新入りの名を、グリムジョーはもう知っていた。けれど、向かい合ったのは今が初めてだ。
何度かまばたきを繰り返して、うろうろと視線をさ迷わせ、それからようやく、光の灯った琥珀の瞳がこちらを見た。グリムジョーよりも背が低く、細く頼りない、第一十刃の従属官。
……一護。ひとつをまもる、で、一護」
「そうかよ。よォく覚えておきなクソガキ」
ずんずんと距離を詰め、その頭を鷲掴んだ。びくりと体を跳ねさせた一護が、首根っこを噛まれた獲物のように硬直する。
「グリムジョー・ジャガージャック。ここにいるナメた奴らを、全員叩きのめす王の名だ」
……グリムジョー、」
「手始めがてめえだ一護。外出るぞ、またウルキオラの野郎に小言言われんのは御免だからな」
手を離して歩き出す。しばらくためらうような間があって、それから小走りで足音が近づいた。目を擦りながら並んだ一護が、こちらを見上げて口をひらく。
……全員は無理だろ。スターク、強いし」
「あァ!? 生意気なこと言ってんじゃねえぞ!」
「いッ、たぃ、痛い、髪引っ張んな、って」
「俺に命令すんじゃねえ」
オレンジとブルーが、騒ぎながら連れ立って歩く。その始終を見つめながら、シャウロンがエドラドと顔を見合わせた。
……珍しいこともあるものだな」
「な。まあ、とりあえずそのへんでは暴れねえみてえでよかった。……でも外でやり合うんだろ? ウルキオラ様呼んどくか?」
「様子を見よう。それに、」
言葉を切って、シャウロンが目を細めた。ああして宣言する我らの王を見たのは久しぶりだ。
「───思いのほか、楽しそうだ。邪魔はしないでおこう」