Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル

尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです



「現世に行きたいィ?」
おそるおそるうなずいて返せば、ディ・ロイがううんと首をひねった。二杯目の紅茶を配膳しながら、シャウロンが「難しいだろうな」と声を落とす。
「なんでまた急に」
「さ、くら、……が、あるって」
「さくら、……?」
「なんだっけか」
「ああ、この間の図鑑か?」
イールフォルトが顔を上げた。六人分の視線が集まってもたじろぐことなく、ティーカップを置いて続ける。
「本を読みたいって言うから貸したんだ。現世の本さ、植物がいろいろ載っている」
「なるほど、……だがやはり難しいぞ」
「なんで? 珍しいのか?」
「花が咲く時期が決まっている。こちらにはないが、現世には四季というものがあるのだ。桜は春に咲くはずだが、……エドラド、暦がわかるものはあったか?」
「この部屋にンなモンあるかな」
席を立ったエドラドとナキームが戸棚やあちこちを探し回るのをぼんやり見つめて、一護ははっと立ち上がった。あわてて捜索に加わった背中に「転ぶなよー」と声がかかる。
「詳しいな、シャウロン」
「昔、少しな。……一護はうまれが特殊だから、余計に惹かれるのやもしれん」
「白に聞けたら早いんだけどなー。つーか仮に咲いてても、アイツが許可を出すかどうか」
「構わねえよ」
背後から響いた声にディ・ロイの体が飛び上がる。振り向けば、ちょうど己の王と白い男とが宮に入ってくるところだった。
「白! おかえり、」
「おー。またなんかやってんのか」
「てめえらこれちゃんと片付けるんだろうな……
「グリムジョー、ここカレンダーとかないのか」
「あるワケねえだろ」
宮の中がわっと騒がしくなる。駆け寄ってきた一護とともにソファに並んで座った白のもとに、心得たようにシャウロンが紅茶のカップを置いた。
「甘やかすな」
「一杯も二杯も変わらんだろう」
「だいたいなんでてめえらがココに入り浸ってんだよ。ご主人様はどうした」
「だってリリネットも寝てたし。白はグリムジョーと一緒だったし、ここで待ってようって」
「それで? 現世がなんだって?」
「さくらが見たい」
「そりゃ無理だ。向こうは冬だぜ」
間髪入れずに否定されて、浮き足立っていた一護が固まった。髪を弄りにかかったイールフォルトが「あーあ」と声を漏らす。
「早くても四、……三ヶ月は先だな。行ったところで葉もついてねえ木があるだけだ」
……三ヶ月」
「寝てりゃすぐだろ」
…………うん」
三ヶ月寝る気か、と思いながらグリムジョーは口をつぐんだ。やろうと思えば本気でそういうことをする。ベッドの中で一日を過ごすことが多いこの破面もどきは、今のようにはっきり意識を保って起きていることのほうがめずらしいのだ。
……で、でも」
「でも?」
「現世、行ってみたい……
白の服の裾を掴んで、一護がうつむきがちに呟いた。この短時間でイールフォルトに編み上げられた髪が揺れる。
…………せめてスタークに許可取れ。藍染は……、アイツはどうせいいって言うだろうな」
「スタークがいいって言ったら?」
「いいんじゃねえの」
「白は? 一緒?」
「俺は行かねえ」
「え」
声をあげたのは一護ではなくディ・ロイだった。ばっと口を押さえるがもう遅い。再び固まった一護の頭をなだめるように撫でながら、白がグリムジョーに視線を向ける。
「野暮用だ。だから行くならコイツについてけ」
「は?」
「偵察任務出てたろ。六人も七人も同じだろうが」
「てめえ、なに勝手に……
……迷惑、かけるなら、行かない」
縮こまった一護がぼそぼそと呟くのに合わせて、責めるような瞳がグリムジョーに向く。沈黙に耐えられなくなったグリムジョーが心底からのため息を吐いて軽く机を蹴ったので、シャウロンからお咎めが入った。
「あーもうウゼェ! 行くぞ!!」
「え、っま、どこ、」
「てめえのご主人様ンとこだよ」
「スターク、…………ついてっていいのか?」
「せいぜい邪魔しねえよう隅っこで黙ってろ」
……ありがと」
大股で歩くグリムジョーの背を追って、一護がぱたぱたと駆けてゆく。途端静かになった部屋で、散らかしたものを片付けながらエドラドが顔を上げた。
……よかったのか? 白」
「下手に止めていじけるほうがめんどくせェだろ」
ティーカップの紅茶を飲み干して、白がソファから立ち上がった。ぐ、と伸びをした顔には疲れが見える。朝から藍染に呼ばれていたようだが、その内容はだれも知らない。
「どうせなら咲いてから一緒に行くさ。そう遠くもねえだろうし」
ひらりと手を振って宮から出ていく背中を見送って、残された五人が息を吐く。任務に連れて行くのは歓迎だ。一護は普段こそああしているが、本気を出せばおそろしく強い。万が一ということはないだろうが、それでも。
……なーんか、イヤな予感がすんだよなあ」
末席のディ・ロイの呟きに、皆が心の中で同意した。