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Nagisa_burn
2025-10-25 00:39:42
32070文字
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破面パラレル
尸魂界生まれの一護が死んで破面になるお話です(未完)
ベースは白黒、海一あたりです
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「藍染の言った通りだ。めちゃくちゃ増えてやがる」
「尸魂界からの援軍か?」
「この間ウルキオラとヤミーを偵察に出しただけだろ? それにしちゃあ動きが急すぎねえか」
「慎重か、
……
賭けかもしれんな。どちらにせよ、様子を見て出たほうがいい」
黒腔を出てすぐ、現世に点在する霊圧の多さに全員が気がついた。少なく見積もっても隊長副隊長クラス、それがこうも揃っているとなると、偵察任務の意義が変わってくる。
人気のないビルの屋上で、霊圧をひそめて周囲の探査を始めたところで、シャウロンがそれに気づいた。
「
……
一護? どうした、」
「ッ、ぁ、ッう、ぐ
……
っ!」
「一護!」
外套を羽織った痩身がくずおれる。両手で腹を押さえて身を丸くする一護の様子は尋常ではなく、ただでさえ白い顔色からは血の気が引き、脂汗が滲んでいた。
「
……
現世に来たからか?」
「わからんが、このままでは
……
」
「オイ」
歩み寄って屈んだグリムジョーが、一護の胸ぐらを掴んで引き起こす。痛みに耐えるように眉を寄せていた一護が、焦点の合わない瞳でグリムジョーを見上げた。
「どいつだ」
「
……
っ、な、に
……
?」
「てめえを殺した死神だ。いるんだろ、どうせ。ここによ」
イールフォルトがはっと目を見開いた。顔を見合わせたエドラドたちも、得心がいったようにぎこちなくうなずいている。
これはきっと、同調だ。かつて自分を殺した相手の霊圧を感じ取って、肉体がその記憶に引きずられた。いつだったか、今よりはまだマシな様子でうずくまっていた一護の様子を見かねて、白に聞いたことがあったのだ。
『痛んでるのは古傷だ。腹を刺されて死んだんだよ、一護は』
「どうせ一匹残らず皆殺しだがな。てめえを殺した奴なら、ちったあ愉しませてくれンだろ」
「
…………
そ、なの、わかん、っ
……
!」
「バカか、名前を聞いてんじゃねえんだよ。思い出せっつってんだ」
「グリムジョー、」
ナキームの咎めるような声にも構わず、グリムジョーは一護の服を一層強く握りしめた。苦しさからか呼吸を乱した一護の瞳が翳るのを確かめて、低く言い放つ。
「言え。どうやって殺された?」
───雨の音。痛み。動かない腕。だれかの声。悲鳴。悲鳴。悲鳴。泣き声。痛み。暗い穴。熱。死神。男。腹に刺さる、のは───
……
。
「
……
ゃ、り。
……
みっつ、ささ、っ、て
……
」
腹の痛みがひどくなって、それ以上言葉にはならなかった。声も出せなくなったことを察したのか、鼻を鳴らしたグリムジョーが一護の体をディ・ロイ目掛けて投げつける。
「お、っわァ!?」
「持ってろ」
「ンなモノみてーに!」
「ディ・ロイ、一護を連れて安全な場所にいろ。いざとなればおまえが盾になれ。カスでもそれくらいできるだろ」
「むしろ俺が護ってもらいてえけど!」
なにせ、この場で一番強いのはグリムジョーと一護なのだ。けれどそんな訴えが通るはずもなく、何より痛みに耐える一護を放り出せるわけもなく、しぶしぶ受け止めた体を抱えなおす。
「
……
スタークとか、呼んだほうがいいんじゃねえの」
「状況によってはな。白がいりゃ一番いいが」
「構ってるヒマはねえ。行くぞてめえら」
「ぐりむ、じょ、」
かすかな呼び声に、グリムジョーが足を止める。振り向いた先で、虚ろな瞳がこちらを必死に見つめていた。
「迷惑、かけて、ごめん
……
」
「
……
元の予定通りだ。黙って隅っこで縮こまってろ」
*
「お、気がついたか?」
「ディ・ロイ? 俺
……
」
「あー、あーあーまだ動くなって、今まで気ィ失ってたんだからよ」
体を起こせば、じくりとした鈍痛と倦怠感が全身を包んだ。それでも先ほどよりはずいぶんマシになっていて、一護はゆっくりと体を起こす。
「もうあちこちで始まってる。いいからじっとしてろよ、怒られるのは俺なんだからな」
「でも、」
「つーかちゃんとフード被ってろ、おまえの霊圧、漏れたら一発でここバレて
……
」
身じろいだせいで脱げかけた霊圧遮断の外套を着せ直される。なおも愚痴っぽい声音で続けようとしたディ・ロイが言葉を切って総毛立つのと、一護が息を吞むのとはほとんど同時だった。
「ッ
……
!!」
「え、」
目の前で血しぶきが上がるのを、一護は呆然と見つめていた。声も出せず倒れ伏したディ・ロイの背中は大きく裂け、コンクリートの地面を血だまりが赤く汚していく。目の前に降り立った男が、背に月を負ってこちらを見下ろしていた。
「───なんだ、てめえも破面どもの仲間か? 霊圧が感じられねえから、
整
プラス
の霊かと思ったが
……
」
死覇装と、腕に巻かれた副官章。右手に握られた斬魄刀は血で汚れていた。こちらを射抜く視線から逃れることもできず、呼吸すら止めて一護は震えあがった。
この男を知っている。どうして。なんで。はやく、はやくはやくはやくはやく、逃げなければ。
「
……
ッの、ナメんじゃ、ねえ
……
ッ!」
腕をついて体を起こしたディ・ロイが、振り向きざまに虚閃を撃ち出した。着弾とともに爆発が起きるのに合わせて、固まっていた体を突き飛ばされる。
「逃げろ!!」
「
…………
ッ!!」
弾かれたように背を向けて地面を蹴る。背後で肉が断たれる音がして唇を噛みしめたが、足を止めては意味がない。滲む視界で、それでも一刻も早くここから離れなければと、響転を連発しながら疾走して。
「──────
……
、は、」
霊圧が、あちこちで爆発した。同時に慣れ親しんだそれらが消えてゆくのを感じ取って、一護は思わず足を止めて空を仰いだ。
その隙を、見逃されるはずもなく。
「水天逆巻け」
構えられた刀の形が変わる。霊圧とともに波濤が巻き上げられ、水流となって頭上に顕現した。
「『捩花』!!」
「
………………
ぁ、」
三つ又に分かれた、槍状の斬魄刀。その切っ先が振り下ろされるのを、どこか他人事のように眺めながら、一護は呆然と立ち尽くした。
* (以下、続きですが途中が空白です)
破面の成り損ない。出来損ない、と言って然るべき存在だった。
振り切れた際の霊圧最大値こそ恐ろしく高いが、そもそも存在自体が不安定。無理やり霊基を分けたせいで、まともな生活もままならないときた。
一護は斬魄刀を持たない。代わりに、白がその名の通りの白い刀を持っていた。破面としての戦闘力も判断力も何もかもその半身が持っていったのが理由だろう、というのがザエルアポロの見解で、身に覚えのあるらしいイールフォルトも、複雑な面持ちながら同意した。
争いを嫌い、刀をなくし、平穏すらも手放した、ただそこで生きているだけの破面。シーツの上で丸くなって日々をやり過ごす細い背中は、無性にグリムジョーを苛立たせた。
グリムジョーの強さにあこがれるのだと、そうたどたどしくも口にした男が心の底からうざったかった。戦い方を教えてくれと言いながら、いざ向き合ってみれば最初の威勢はどこへやら、虚閃を撃っただけでふらふらになるような貧弱さが疎ましかった。
だから、いつか叩きのめしてやると決めたのだ。なまじスタークの庇護下にあるのがいけない。かたわらに控える半身も邪魔だ。いつかきちんと、初めて会ってぶつかりあったときのように全力で戦りあって、今度こそ完膚なきまでに壊してやって。
―――
だから、こんなところで死んでもらっては困るのだ。
あの虚ろな瞳に光が宿って、ぎらぎらとこちらを睨みつける、その瞬間をもう一度目にするまでは。
「ッぐり、ッ」
固まったまま動かない体を片腕で引き寄せ、もう片方で抜刀しながら振り下ろされたそれを受けとめる。槍の一撃とともに襲い来る水流に舌打ちして後方に跳べば、弾かれた遠心力を利用してすかさず第二波が放たれた。
三つ又の、月光を弾いてひかる銀の槍。それよりもずっと鋭い、破面に
―――
虚に対する、深い憎悪に染まった瞳。
(アタリか)
藍染の言葉を思い返す。きっとあの男も関わっているのだろうが、目の前の死神が"虚に操られて仲間を殺した死神を殺した死神"ならば、なるほど、グリムジョーたちに向ける憎しみもうなずける。
愉快だった。無知は罪だ。グリムジョーにとってはどうでもいいことではあるが、それでも。
よりにもよってもう一度、己の手で一護を殺そうとするなんて。
「オイ、ボーッとしてんじゃねえぞ」
「ッ、ッあ、グリムジョー、ディ・ロイが
……
!」
「知ってる。弱い奴は負けて当然だ」
「でも! 俺をかばって
……
!」
「盾役はできたってワケか」
一護の目がぎっと鋭くなる。それを視線だけであしらって、グリムジョーは地面を駆けた。負ける気はしないが、抱えたままは単純に不便だ。
「下がってろ。邪魔だ」
「グリ、」
「脱ぐなよ。それ着たままどっか行ってろ!」
アスファルトを蹴りつける。こちらを気にしながらも戦線から離脱した一護を追おうとした男との間に割って入れば、盛大な舌打ちが向けられた。敵を討ち漏らしたことへの苛立ちはよく理解できるが、戦意のない相手を追いかけてまで殺す意義は感じられない。それはもう死神としての大義でも戦いへの渇望でもなく、ただの憎しみからくる殺害願望だ。
「逃げる奴を優先するか。死神どもの教育ってのはずいぶん野蛮なんだな?」
「さっき殺した奴もあの破面をかばったな。そんなに大事にされてンなら、殺す価値はあんだろ」
「
―――
成程? ただのバカじゃねえらしい」
槍を弾いて一旦距離を取る。長物の相手はノイトラで慣れていた。彼と異なるのは、最高硬度の鋼皮などないこと。ノイトラよりも小さいこと。代わりに、広範囲をカバーする水流が厄介なこと。この手のタイプは、離れれば離れるほど相手のペースに飲みこまれる。ならば選ぶべきは距離の確保ではなく
―――
……
。
「ッ!!」
男が短く息を詰めた。懐に飛び込んできたグリムジョーを前に、ほんの一瞬反応が遅れる。それが致命的だ。
「
―――
らァッ!!」
(
―――
あ、)
だめだ、と、思った。それがどういう感情からうまれたものなのか、どちらを見てそう思ったのかはわからない。ただ、気づいたときには飛び出して、二人の間に割り込んでいた。死神に背を向け、グリムジョー目がけて飛びつく形で、そして。
「ッバ、ッカヤローが
……
!」
獣の唸りと同時に、軽くなった体を支えられる。死神の振るった刀は見事に肩の付け根から斬り落としてくれたようだった。
「なんで出てきた!」
「ッだって、グリムジョー
……
!」
「ああクソ、もういい、後だ!」
「待て!!」
景色がブレる。ぐん、と引っ張られる心地と空気抵抗。最大速度で戦線を離脱したグリムジョーが、一護を抱えながらもう片方の手で空間を裂いた。
「先戻ってろ。腕は持っていく」
「俺も、」
「いいから帰れ!」
黒腔の中に押し込まれる。それが閉じる寸前、追いかけてきた死神と目が合った。黒髪の、短髪の男。襟足が長い。下まつげも。瞳が大きく見開かれて、唇がなにかを形作ろうとしたのがわかる。
見えたのはそこまでだ。隔絶された空間の中で途方に暮れ、一護はのろのろと、帰って怒られるために立ち上がった。
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