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ロンド
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奈落の大穴
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極星ノスタルジア【再録】
「まなざしのいろ」「きんぎんすなご」
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三章 Side.O
大規模探窟に向かったオーゼンが再びオースに上がってきたのは、それから二か月後のことである。
配達の赤笛からベルチェロの手紙を受け取り、さっそくオーゼンはベルチェロ孤児院に向かった。
「
……
案外暇なんだな、不動卿」
「暇なもんか。先日だって三層の調査に行っていたのだけど。君が一度も逃げだしてないって、ベルチェロに聞いたよ」
「気が変わったんだ。どうせ探窟家にさせられるなら、とことんやってやろうじゃないか」
孤児院の裏手で掃除をしていたジルオは、出逢ったときとまったく印象が違っていた。オーゼンがすすけた灰色だと思いこんでいた髪はもっと薄く抜けた色で、ぼさぼさなのは相変わらずだがきれいに切り揃えられている。孤児院の制服はくたっとしていても清潔で、ちゃんとサイズの合う制服と靴を履いている。いずれは痩せぎすの身体も徐々に子供らしい体型になっていくだろう。ただ、オーゼンをまっすぐ睨む薄青色の眼は以前と同じだった。
「岸壁街に帰りたくはないのかい?」
「毎日飯は食えるし寝床はあるし、あそこに戻る理由はねぇぞ。でもシャワーがお湯なのはどうかしてる」
「フーンそりゃ良かった。探窟中なんてほとんど湯の風呂には入れんからね。たまに温泉を引き当てるが。それにしても、ちゃんと礼儀作法は習ったのかい」
「
……
白笛が探窟家の最高位だって知ってたら、動かざるオーゼンなんて狙いませんでした」
ジルオは不満そうに鼻を鳴らす。ちぐはぐな敬語が似つかわしい。こりゃベルチェロも手こずってるなとオーゼンは考える。
手紙では読み書きから始めたと聞いていたので、こんなものだろう。オーゼンを知っているということは、知識は着々と増やしている。
「そんで、いったいなんの用なんだ? 見張り?」
「そうだ、忘れるとこだった。君にやろうと思って」
オーゼンは自宅から持ち出してきた本を無造作にジルオに手渡す。ベルチェロが寄越した手紙に、ジルオがよく読書していると書いてあった。
「孤児院の本は古かろう。それを読んでよく学ぶんだね」
『遺物録総集編』、版は半年前。組合公式の最新版である。
ものめずらしげにジルオは受け取り、重く厚い上製本の表紙の文字を脳裏に刻みつけるようにゆっくりと指でなぞっている。
「云っとくけど売っぱらうんじゃないよ。それ、組合の探窟家じゃないと手に入らないんだ。市場に出たらすぐわかる」
「持ち主のおまえが怒られるだけじゃねぇの?」
「君にやると云ったじゃないか。処罰されるのは君の方さ。見つかったら裸吊りなんかじゃ済まないからね。あと言葉遣い」
「
……
ただの鈴付きに贈り物とは、さすが不動卿、お優しいですね。お気づかい感謝します」
「やればできるじゃないか」
むすっとした顔つきといい言葉選びといい、反発も感じるがオーゼンは温情もって良しとしてやった。もし相手がライザなら屋根の先まで殴り飛ばしてやったところである。
暴れて手をつけられなかった場合の仕置きの想定はしていたが、与えられた監獄で大人しく勉強をしてくれるとは好都合だ。このぶんなら『狼の巣』がジルオの捜索をとっくに打ち切っていることを伝えずにすみそうだ。
なかなか賢いじゃないか、とオーゼンはほくそ笑む。自分が置かれた状況の判断ができている。今に鈴付きを卒業して赤笛に上がるだろう。赤笛でも優秀なようなら弟子にしてやってもいい、とオーゼンは考えた。
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