さもゆ
2024-12-06 15:49:18
34977文字
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【スティレオ】ツイログ

1~8…付き合ってないタイプのスティレオ。
9~12…付き合ってるタイプのスティレオ。

2020.12.27 たまごのお粥pixiv投稿作品


顎の話。2

だって全身はマズいだろ




  顎だけは死守しようと思った。上唇から上と、首から下が包帯だらけの入院患者スティーブンが言った。
 それを聞いたレオナルドは、彼の傍らで白く清潔なシーツに縋りついておいおいめそめそ泣いていたのをやめて、ぐすっと鼻を啜ってなんでですかとひどい声を出した。鼻水がねとねとと顎の動きを封じてくる。
 対して顎だけは白に覆われておらず喋るのにも特に難儀ではないスティーブンは、激戦を命からがら生き延びた氷の男とは思えない温度と緩慢な仕草をもってして、唇からのんびり言葉を返した。
「だってさ、顎がなくなったら、きみからのキスが届かなくなると思って」
「馬鹿かよぉ……
 レオナルドはまたベッドに突っ伏してしくしく泣いた。
「馬鹿ってこたぁ、ないだろ」
 泣きながら罵られた上司は不機嫌そうに返す。
 馬鹿ですよ、ともう一度落として、だってスティーブンさん全然屈んでくれねえじゃねーですか、とずびずび恨む。キスの時の話だ。
 レオナルドより頭一つ分とちょっと高い彼にキスをしようとすると、どれだけ背伸びしても顎の尖ったところに唇がつんと触れるだけで、ちっとも口同士が合わさらない。スニーカーで一生懸命つま先立って灰色のスーツの裾を掴んでバランスを取るレオナルドを、スティーブンは屈むでもなく持ち上げるでもなく目尻に皺をつくってただ眺めている。そうして顎にキスをされると、傷のある左頬がぴくりと痙攣して破顔する。じゃあ俺は額にしてあげるよ、笑い声混じりのスティーブンが少し屈んでこちらの額にキスを返すものの、本当は唇にしたいししてほしいレオナルドの微妙な顔を見てまた笑い、ようやく唇がかち合う。レオナルドからキスをする場合、そういうことの繰り返しだった。
 ぐすん、鼻水。
「顎だけ残ったって駄目ですよ……
 スティーブンはまたのんびりと言う。「……顔に傷ができることなんざ、とっくの昔に怖くなくなったのにさ、これ以上増やしたらダメだなあって思ったよ」
「顔だけでも駄目です」
「ダメの応酬だな。泣くなよ、レオナルド」
「だめです……」ひっきりなしに涙が零れては落ちていくレオナルドの不安定な息遣いに、上司は上司らしくない弱った溜め息を吐き出した。「どうしたら、泣き止んでくれる?」
 オナルドは身を起こして、その吐き出された吐息が乾く前にスティーブンの唇にキスをした。
 ぺちょり。
 涙と鼻水で湿った音が鳴る。
……レオ」
 しょっぱい、と可愛くないことを言う可愛くない男の顎まで唇を落として、そのまま負担にならない程度に重傷人に擦り寄った。
……退院したら、全身にキスさせてください。それで自分の身が可愛くなったらいいんだ」
「それはちょっと、」
 困るよ、本当に困りきった声音でそんなことを宣うので、レオナルドは泣き止むどころか怒って号泣した。