mochita_rj
2024-11-16 15:41:19
27131文字
Public TwitterのSS
 

ss2022年分

1Pに各ssの内容があります。飛んでね!
※一部ここに載せてないのがpixivにあります。最初の5作と露仗週間で書いたものなど


「おい仗助、仗助?なんだ、もう寝ちまったのか?」

規則正しい寝息が後ろから聞こえて振り返ると、思った通り仗助は既にベッドに入りすやすやと眠っていた。昔から変わらず寝つきがいいやつめ呑気そうな寝顔を眺めていると、なんだかこちらまで眠気に誘われてくる。

ああ疲れた。ぼくもそろそろ寝るか」

ペンを机の上に置き、終わったばかりの大量の原稿を封筒に入れて立ち上がった。いつもより疲労を感じる手をほぐしながら仗助の眠るベッドに近づく。露伴の視界にはサイドテーブルの上のスターチスの花が目に入り、仗助が眠る直前のやり取りが走馬灯のように頭に駆け巡った。



なあ露伴。ゲームってさ、エンディングはバッドエンドかハッピーエンドかのどっちかしかないんだよなあ。なんか、あらかじめ決められた未来を辿ってるみたいだぜ」

ゲームクリア!と軽快な声がテレビから鳴っている。こんな時までゲームかよと呆れるが、ぼくも最後の最後まで漫画を描き続けてるんだから人の事は言えない。それにしても無事ハッピーエンドを迎えたのだろうに、仗助は画面を見ながら考えこむような真剣な表情をしていた。

「まあゲームはそういうふうにプログラムされたもんだからな」
「おれ達スタンド使いはスタンド使いにひかれ合うって言うだろ?もしかしたらさあ、現実世界も未来はあらかじめ決まってるのかなって、」
「ふむ、なるほどそれは面白いね。既に未来が決まってるってんなら、やっぱり時間の流れなんてないのかもしれないな」
「えっ、はあっ?時間の流れがない?そんなことありえるんスか?」
「ああ。この前読んだ本の受け売りなんだが、過去、現在、未来が同時に存在するっていう説があるんだ。それを照らすスポットライトが過去から未来へ移動していくのを、ぼくたちが勝手に時が流れていると錯覚しているんだと」
「へえ〜〜ふうん
「それこそゲームみたく、ある選択肢を選んだ世界、その次の選択肢を選んだ世界、とスポットライトが移動してってるってわけだ」
「うーんなるほどっスね〜!」
「お前、よくわかってないだろ
「露伴の言うことはいつも小難しくてよくわかんねえの!!」
「しょうがない奴め。じゃあ簡単に言うとだな、」
「もー!分かったって!要するにさあ、こうやっておれらが10年以上一緒にいたのも運命だって言いたいんだろ?」

そうやって仗助は、これでもあんたの言いたい事はちょっとわかるようになってきたんだぜ、と誇らしげに笑った。



スターチスが活けられた花瓶の水がありえないスピードで減っていく。時計の針が目まぐるしい速度で回り続ける。加速して流れているように見えるこの時も、ぼくらに当たるスポットライトが未来に向かって移動しているだけならば。ぼくらの意識が、死というひとつの選択肢を選択しているだけならば。

「仗助。死んだ後にも未来ってのはあるのかもしれないぜ」

露伴は水が減りに減って干からびかけた花瓶からスターチスの花を1本抜き取って、ぽつりと独り言のように呟いた。

まだ終わりだと決まったわけじゃあない。ぼくがこの町に引っ越さなかった世界、この町に殺人鬼が潜んでいなかった世界、お前がこの世に生まれてこなかった世界。そんなifもありえたはずなんだ。それでもぼくらは出会い、選択をし続けてここまできた。そんな奇跡が重なったんなら、「未来」にいるぼくらだって、またきっとどこかで会えると思わないか?

「にしても最後の日まで幸せそうに寝やがって

下ろすと案外長い髪が目にかかって鬱陶しそうなので耳にかけてやると、仗助はむにゃむにゃと何か呟いている。ぼくはこの世界で漫画家としての最後の仕事を終えた。20年近く漫画に全てを捧げてきた身としては、なんだか少し寂しい気もする。が、目を閉じたままにこにこと笑顔を浮かべるこいつの顔を見ていると、不思議とこの身が消えることへの恐怖も感じなくなっていた。

でもさ。もしこのまま死んだら、おれたちの関係はなかった事になるのかなぁ』

彼が最後に眠る直前に零していた言葉が頭をよぎる。遠い未来のぼくらが過去を思い出してくれれば、今のぼくらは確かに存在したということだろう?大丈夫だ、ぼくらならきっとやってくれる。少なくともぼくは、絶対に次の世界でもお前のことを思い出して見つけてみせるさ。スポットライトがその未来を照らすまでどれだけの時間がかかるかわからないが、一途で純愛だというお前なら待っててくれるだろ。

「ん〜、ろはん

寝ながら幸せそうにぼくの名前を呟く仗助を見ているとこちらまでふっ、と笑みが漏れた。だがもうすぐお別れの時間だ。露伴は喉がひどく乾いて掠れた声を振り絞り、おやすみ、と言いかけて閉じた口を再度開いた。

「またな、仗助。いい夢を」

手に握ったままだったスターチスの花を仗助の手に握らせた。露伴は花が潰れかけるほど強く上からその手を握りしめ、温かな体温の隣で意識を手放した。