mochita_rj
2024-11-16 15:41:19
27131文字
Public TwitterのSS
 

ss2022年分

1Pに各ssの内容があります。飛んでね!
※一部ここに載せてないのがpixivにあります。最初の5作と露仗週間で書いたものなど


「あ〜、あっちいなあ」

買ったばかりのアイスをかじりながら額に滲む汗を拭う。横で並んで歩く露伴も、同じものをしゃくしゃく、と小気味いい音を立て口に運んでいた。棒が2本刺さっていて、真ん中の切り込みで割れば2人で分けられるタイプのアイスキャンデー。照りつける日差しから逃げるように駆け込んだコンビニで、露伴がこんなの食べたことないと興味津々に見ていたから2人で分け合うことにした。

「割るのヘッタクソだったな」
「うるせえよ〜!これ半分こするの難しいんだって!」

割り方を失敗したアイスの片方をかじりながら露伴が笑う。ニヤニヤしながらそんなことを言っているけど、しれっと小さい方を選んでいった露伴はなんだかんだ優しい。そんな彼に感じるむず痒さと、咀嚼した氷の塊を飲み込みながら通り沿いの桜の木を眺めた。

「いつの間にか桜も全部散ってしまったなァ、季節も変わり始めたってことか」

露伴も同じことを考えていたようだ。数日前までは薄い桃色を実らせていた木々も今となっては緑一色となって、風景をがらりと変えていた。春はもう終わってしまったのか、梅雨も初夏も通り越し、今日は真夏を思わせるほど暑い。

まあ夏も嫌いじゃあないんスけどね。暑いけど、なんか気持ちが明るくなるっていうか」

露伴はそうだな、お前は1番夏が似合うぜと穏やかに笑いながら答えた。

露伴と付き合って間もないが、この関係になってわかったことがある。露伴はおれの前では意外と口数が少なくなるのだ。2人の時の会話の始まりは大抵おれの方からで、おれが言ったことに露伴が返事をするというのが当たり前になりつつある。だけどそれも気を許してくれてるみたいで、以前は口うるさかった露伴が静かに微笑んでいるのがおれは嬉しかった。

そういえばよお、康一と由花子がやっと初めてチューしたらしいぜ。それもちょうどレモンの飴舐めてたからさ、まさにレモン味だったって」
「へえ、そりゃあ漫画みたいだなァ」

みずみずしく輝く葉桜が立ち並ぶ道を2人歩きながら、そんな取り留めもない話をする。露伴が少し目を丸くした後、康一くんもようやく男になったって訳か、とくすくす笑った。

「げっ!溶けてきちまった」

会話に夢中でほとんど手をつけてなかったアイスが溶け始めていることに気づいた。凍った水色の塊からぽたぽたと雫が手にしたたっている。ベタベタするのが気持ち悪くて慌てて舐め取ろうとした瞬間、

「あー、もったいないだろう」

露伴がぐいっとおれの手首を掴み口元に引き寄せた。そのまま舌をぺろりと出し、おれの指にまとわりついた薄いブルーの水滴を追いかける。突然のことにびっくりして手からアイスが落ちそうになった。

「な、なん、」
「ん〜溶けたアイスって甘ったるいよな」

そう言いながら、ひんやりとした舌先が手の甲をするすると滑る感触に、つめたいものを胃に入れて冷めつつあった体がまたかっと熱くなり始める。

「康一君と由花子のファーストキスはレモン味だって?それならぼくらはソーダ味にしてみようか」

おれの熱が伝わったかのように温度が上がった露伴の舌がようやく離れた。ニコニコとした少し幼げな笑顔と、覗かせる舌の赤さのアンバランスさが扇情的で目が離せない。

「アンタほんとさぁ、付き合い初めてから性格変わったっスよね」

ハハ、そうかもな。あーあっちいなァ」

すっかり火照ったおれの頬に手を添えて、くすりと笑いながら顔を近づけてくる。誰のせいだと思ってんだ馬鹿。

「ふふ、やっぱり甘いなァ」

こんな例外的に暑い日に初めてのキスをするとか。お互い汗ばんでいて、ファーストキスには到底向かないタイミングなんだろう。だけどそれも、嫌いだったはずがいつの間にか好きに変わってた、なんておかしなおれららしいのかもしれない。熱い唇どうしが重なる間そんなことを考えていた。

へへ、甘いッスね」

口に残る甘くて爽やかな味がこれから来る季節を思わせる。本格的な夏が始まるまで、もう少し。