mochita_rj
2024-11-16 15:41:19
27131文字
Public TwitterのSS
 

ss2022年分

1Pに各ssの内容があります。飛んでね!
※一部ここに載せてないのがpixivにあります。最初の5作と露仗週間で書いたものなど


「ただいま。仗助、バキンうん?」

おかしい。いつもならドアを開けた瞬間に聞こえる、「おかえりなさい露伴!」とぼくを出迎える声が今日はしない。不思議に思っていると、バキンだけがわん!わん!と鳴いて玄関に駆け寄ってきた。しっぽをぶんぶん振って足にしがみつくバキンを抱きかかえて撫でてやる。

「ただいま。いい子にしてたか、バキン」
「わふっ!!わふ!」
「わかったわかった。仗助は?どこに行ったんだ?」
「くぅん?」

バキンは心做しかキョトン、とした顔でぼくを見つめる。きみに聞いてもわからないよな、と
笑って部屋を見渡すと、どの部屋も真っ暗だった。もしかして寝ているのか?と足音を立てないようにドアを閉め、忍び足でリビングの電気をつける。

「すぅーーすぅーん、んん

思ったとおり、仗助はリビングのソファで規則正しい寝息を立てて寝こけていた。おおかたぼくの帰りを待ってたが、遅くなってしまったために力尽きて寝落ちたのだろう。そんな薄着で寝たら風邪引くだろうが、とソファの下に落ちてしまっているブランケットをかけ直してやる。

「わん!わん!」
「う、ん……?」
「あっ!こらバキン。仗助に乗るんじゃあないよ」

バキンが仗助に起きて!と言わんばかりに乗っかってわんわん鳴くので、慌ててソファから下ろしていると、仗助の顔の横に何かが置かれていることに気づいた。

ぬいぐるみか?」

それはヘブンズドアーの姿のぬいぐるみだった。厳密にはヘブンズドアーのぬいぐるみではなく、読者へのプレゼント企画で作られたピンクダークの少年のものだが。しかしぼくのスタンドのモデルなだけあって、サイズ感も何もかも、ヘブンズドアーそのものだった。

「んんろはん、ふへ」

仗助はぬいぐるみに顔を寄せながら寝言でぼくを呼ぶ。大人になっても幼く見える寝顔は、付き合ったばかりの頃と何も変わらない。ろはんろはん、とむにゃむにゃ笑っている仗助に、思わずぼくまでふふっと笑いが込み上げた。どんな夢を見ているんだ?きみの夢の中にまでもぼくを出してくれるのかい?

「うーー……つめたい、ん

頬をゆるゆると撫でていると、夜風で冷えた手が仗助の体温を吸ってじんわりと暖かくなっていく。相変わらず子供体温だなあと笑いながら白い頬をつついて遊んでいると、仗助は眉を寄せながらもぬいぐるみをぎゅうと握り締めた。ああもう、なんでそんな可愛いことばかりするかな。

「これは写真撮っても起きなさそうだな」

愛用している一眼レフを棚から取り出してケースを開ける。そんなことをしている隙に、バキンが寝ている仗助とぬいぐるみの間に陣取ってこちらを見つめていた。我が家のアイドル犬はいつでもカメラのケースの音には耳ざとく反応するのだ。

パシャ、パシャ。

シャッター音が部屋に響いても、やはり仗助は起きる気配は無い。ファインダー越しに写真と自分の脳両方に、そのありふれた幸せな光景を焼き付ける。やはり写真はいいもんだ。ぼくが好きなものだけを詰め込んだ瞬間をずっと後にも残せるから。

パシャ、パシャ。

そういえばスタンドはカメラには写らないんだったか。それなら仗助がヘブンズドアーと同じ写真にいるのはこれが初めてか?それは貴重なな写真になるなあ。このぬいぐるみを作る企画を立てた編集部には感謝しなきゃなあ、なんて考えながらシャッター音を切っていく。

うん?そろそろ飽きたかい、バキン」

バキンが退屈そうにあくびをし始めたので撮影タイムはもう終わりのようだ。もうちょっと撮っていたかったが我慢。大事なペットのご機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。こんなんだから仗助に「躾はちゃんとしてくださいよ!」とか怒られるんだな。

「さて。仗助が起きる前に夕飯でも用意しとくかな」
「わんっ!わんっ!」
「ん?バキンも手伝ってくれるのかい。それは頼もしいな」

わんわんと鳴いて後ろをついてくるバキンと共にキッチンへ向かう。何がいいかな、今日は寒いし鍋にでもしようか。そうと決まれば早く準備をしなければ。もたもたしていると、ぐっすり寝ていたはずの彼が腹減った!とか何とか言って起きてきちまうからな。