mochita_rj
2024-11-16 15:41:19
27131文字
Public TwitterのSS
 

ss2022年分

1Pに各ssの内容があります。飛んでね!
※一部ここに載せてないのがpixivにあります。最初の5作と露仗週間で書いたものなど


「仗助、好きだ」
またっスか?あんたも懲りねえよな」

ベンチでのんびり缶コーヒーを啜っていると、いつものように露伴はおれに花束を差し出した。いっぱいに詰められた花と共に、おれに対する愛の言葉を添えて。

「あのさァ〜このおれが花を愛でる少女にも見えてんの?正直邪魔だからいらねえって何回も」
「今日のはアネモネだ。花言葉はあなたを信じて待つ、だと。告白にはピッタリだな」
「聞けよ!」

露伴はおれの言葉を無視して花言葉の説明をぺらぺらと始める。これもいつものこと。1ヶ月前、いきなり嫌いな奴からやたらと綺麗な花束を押し付けられて「好きだ、仗助」と言われた時には、岸辺露伴はとうとうおかしくなったんだと信じて疑わなかった。だけど人間はこの異常な状況にも1週間も経てば慣れるようで、また来たのか、と受け入れている自分も恐ろしくなった。

「アンタさ、毎日好き好き言ってくるけど。おれと付き合いたいの?」
「叶うならなああそうか!じゃあ告白の言葉は変えるべきだな。仗助、好きだ。ぼくと付き合ってくれ」
「そっか。嫌っス」
「冷たいなあ」

失礼するぜ、と言うから帰るのかと思ってたのに、呑気におれの横に座ってきた。振られてるのにけらけら笑いながらこの場に居続けるってどういう神経してんだ?意味わからねえ。

「ていうか告白なんかしなくてもよぉ、あんただったらヘブンズ・ドアーで無理くりに恋人にでもするのかと思ってた」
「おお!それは盲点だった」

やべえ、余計なこと言っちまったかも!冷や汗をだらりと流すおれに露伴はちらりと視線を寄越し、露伴はこれまた楽しそうに喉をくつくつと鳴らした。

「冗談だ。本当に好きな奴にはそんな事しないよ。嫌われたくないから」
「花束押し付けて、その好きな奴には嫌がられてるけどな」

数十本分の花が束ねられて結構な重みと化している花束を膝に置く。これを持ち帰ることでまた空いてる花瓶を探さなきゃいけねえよ。既に部屋中露伴の花でいっぱいになってるのに、これ以上増えたらおれの部屋はそこらの花屋より花屋になっちまう。

「嫌か?ならそこのゴミ箱にでも捨てればいいし、ゴミ箱が無ければぼくに投げつけてもいい。だけど君はそれをしない。わかるか?これは賭けなんだ。きみが折れるか、折れないかの」
「おれが嫌々受け取ってるとかは思わねえんスか」

露伴はふむ、と少しだけ考えるように腕を組み、

「きみは優しい奴だ。要らない花束を贈られても、嬉しくないのを態度に出さずに受け取るだろうな。だがそれは、ぼく以外の人間から贈られた時の話だ」
「はあ」
「きみはぼくには優しくない。いらない、気持ち悪いと悪意と一緒に花束をぼくに投げつけてくるだろう。実際贈って3日目、きみはそうした。今はどうだ?ちょうど今日で花束を贈り始めて1ヶ月なワケだが、きみは要らない花束を素直に受け取り、ぼくに投げ返す事無く、家に持ち帰ろうとしている」

あれ?考えてみればおれ、なんでこんな花バカ正直に受け取ってるんだろ?わざわざ活けるための花瓶まで探して、そういう柄でもねえのにせっせと水をやって。露伴の言う通り捨てればいい話なのに。朝起きたら1番に露伴から貰った花達が目に入って、ゲームする時も横にいて、枯れちまったらチコっと悲しくなって。こうやって思い返せば、自然とおれの日常の中に露伴の花が紛れ込んでいた。

「あれ。ってことはおれ、あんたに絆されちまってるってこと?」
「きみの脳内を見るなんてぼくにはできないから、わからない。だけど少しずつ、そうなってくれたらいいなとは思っている」

露伴がふ、と穏やかな笑みを浮かべておれを見つめる。その表情があまりにも優しくて、ずっと見てたらおかしくなっちまいそうだったから思わず目を逸らした。何なんだよもう。あんだけおれのとこ嫌いとか言ってたくせに、しつこく言い寄ってそんな顔で笑うとか、そんなの知らないっつうの。おれのペース乱して楽しい?なら良かったな、もうめちゃくちゃだよ、おれ。

そッスか。アンタって意外と健気なんスね」
「そうだな。きみと晴れて恋人になれた暁には寂しい思いなんか絶対させないし、きみが行きたい所はどこでも連れてってやる。それから欲しいものはなんでも、」

紫色の花びらがひらひらと風に揺られて地面に落ちる。突如始まった『露伴と付き合う事のメリット』のプレゼンを聞き流して落ちる花びらを手のひらで受け止めていると、あれ、案外悪くないかも、なんて思ってる自分がいることに気付いた。あーあ。おれ、遂に折れちまったのかあ。じゃあ賭けはあんたの勝ちだな。あんたが運転するバイクの後ろに跨ってぼんやりと海を眺めていれば、目をきらきらと輝かせて海に関するうんちくを語りだすんだろうな。とか、今までのおれの中になかったはずの未来が今一気に脳内に流れ込んで来たもん。

「なあ露伴」
「なんだ」
「海がいい」
……えっ?」
「あんたと付き合ったらどこにでも連れてってくれる。今そう言っただろ?だから約束」
ふ、ははそうかへえ。わかった。いいぜ、うん。愛する恋人の為ならどこにでも」

壊れたロボットみたいに様子がおかしくなった露伴から、いきなり花束ごとぎゅうっと抱きしめられた。いっぱいに敷き詰められた花の香りが上がってくる。花もおれもアンタも、全部甘い。露伴が嬉しい、好きだ、と何回も言って嬉しそうに腕の力を込めるから、おれもなんか嬉しくなって背中に腕を回す。露伴のこと、ヤローに花束を贈り続けるトチ狂ったキザ男としか思ってなかったのに。意外と一途で健気だとかさあ、そういうの、グッと来るじゃあねえかよ。

「露伴って手ぇ早いと思ってたけど。キスはしないんスね」
「失礼だな。そういうのはまだ先だろう」
「ふうんしてもいいのに」
「は、はぁっ!?」

からかうように唇をギリギリまで近づけると、顔を赤くして目を瞑る露伴が面白い。大人をからかうんじゃあない!とか怒ってるけど、今までおれに押し付けてきた花束の重み忘れてないよな?そっくりそのままその分だけ、アンタの心乱してやっから。