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戌丸アット
2022-05-29 23:52:24
38106文字
Public
Fate
その肌へ口づけを
槍弓
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『深夜だが報告は速やかにってサーの旦那が煩いもんでねぇ
……
。ま、アンタの情報により無事、麻薬取引は摘発出来ましたよ』
「そうか、報告ご苦労。ならば今日にでもチェックアウトを
……
」
『おいおい!予定では明日だろ?勿体ないから泊まっとけば良いだろ!?』
何故そんなにも驚いたような反応をされたのか褐色の男ことアーチャーは不思議だった。
困惑したようなアーチャーの雰囲気を感じ取ったらしい連絡している相手である同僚のロビンフッドは、敏感に感じ取ったのだろう。
疲れきったような声色でアーチャーを説得する。
「しかしロビンフッド
……
」
『つーか旦那からアンタを少しでも労うように言われてんですよ。散々言われた俺の為に黙ってホテルに泊まりやがりませ、こんちくしょう』
「む
……
了解した。予定通り明日の朝にチェックアウトする」
『そうそう。大人しく従いやがれ、それじゃあな』
一方的に尚且つ乱暴に切られてしまった電話に不満を感じる事も無く、アーチャーは携帯にロックがかかったのを確認すると自分と一切無関係でありながら悩みを打ち明けた青年が待つ部屋に戻った。
それが間違いの始まりである事にも気付かずに。
「
……
なっ?!それは!」
「おう、おかえり」
青年が持っている物を見ては、青年におかえりと挨拶されても平然ではいられない。
何故ならば青年が持っていたのはアーチャーの階級と身分を示す警察手帳。
しかも手帳は開かれており、制服を来たアーチャーの画像の下に『警部補 衛宮 祐巳(ゆみ)』と明記された正真正銘、アーチャーの手帳であった。
実はアーチャーは警察のキャリアとされる警部補なのだが、現在はアインツベルンの圧力によりアインツベルンへ警察官として協力する事を条件にイリヤと士郎とアーチャーの三人で暮らしている。
しかし、それも青髪の美しい青年にリークされれば全て終わりである。
そして青年もアーチャーもその事実を瞬時に理解した為に、青年は意地悪な笑みを浮かべ、アーチャーは顔色を悪くさせているのだ。
すると血の気の引いているアーチャーに対して何処か不機嫌とも取れる表情の青年が話しかける。
「まさかアンタ、警察のお偉いさんだったとはなぁ。あ、これはアンタが電話に行った時に落ちてたぜ」
「どうして
……
いや、それよりも返せ!!!」
「ほらよ、折角だし俺の身分も教えようか。酒飲めるけど大学三年生だぜ?多分、アンタよりも年下だな」
「な、んだと!?」
自分よりは若々しいとは思っていた青年は通学と書かれた電車の定期券を見せてくる。
学校が書いてる学生免許証は家にあると話す青年もとい定期に書かれている名で言えばクーフーリンの言葉は聞こえていない。
定期券は通学している証拠が無いと発行されないので学生免許証よりもある意味、現実味のある証拠とも言える。
警官であるアーチャーが、その事実を理解出来ない訳がなく。
己は成人しているとはいえ学生を買ったと同一の行為をしたのだと目の前が真っ暗になったような気がした。
否。
アーチャーの視界が真っ暗になったと言うのは半分間違えていない。
何故ならばアーチャーの顔へ、ランサーが近付いたのだから。
「俺も驚いたぜ?まさか年上とはな
……
結構アンタ童顔なんだな」
「っ何が言いたい!サッサと言いたい事は言えば良かろう
……
」
「良いのか?ならば、そうしよう。俺もまどろっこしいのは好きじゃない」
アーチャーの視界が暗くなる程に近付いていたランサーは、血行の悪くなった頬を確認するように指先だけで少し触ったかと思うと離れて行き、アーチャーが己の事を話していた時まで座っていたソファへと戻る。
そんな後ろ姿を見ながらアーチャーは、聞く事への恐怖を抱いていた。
仕事では一切、感じる事がなかったり、無視する感情に身を震わせる思いで居ながらランサーへ目を離せなかった。
無駄の無い身体、芸術家からすれば涎が出そうな程に整った身体は一つの動作をするだけで絵になる。
現実逃避するように彼に釘付けになる自分自身に、やはり自分は同性愛者なのかと納得したアーチャーは開き直ったからだろう。
脅されると分かっていながら話しかけていた。
誰でも美しいと思う者とお近付きになり、惚れていたたならば利用されても良いから傍に居たいと思うだろう。
「身元を明かさなかった事は謝ろう。金は幾ら欲しいんだ」
「はぁ?俺を舐めて貰っちゃ困る。幾ら金が無いとはいえ金を脅し取ろうなんて真似するかよ!だが
……
まぁ、アンタが考えるように晩飯を奢られただけじゃ足りないと思ってた所だ」
「は
……
?」
アーチャーは思わず金が欲しい訳ではないと話すランサーに目を丸くさせて驚かずにはいられない。
普通ならば警察のエリートが同性愛者で成人しているとはいえ学生を自分の泊まっているホテルへ入れる。
その事柄だけで社会的にアウトと見なされる可能性が高い。
つまりアーチャーをどのようにでも脅す事が可能だし、アーチャー自身も同じように考えたから金額を聞いたのにランサーの発言によりアーチャーは混乱してしまっていた。
そして逆にランサーと言えばアーチャーを自分にどのように繋ぎ止めようか、頭を懸命に捻っていた。
正直、アーチャーを脅しているともいえる今の状況下でも未だに驚いている。
童顔で自分と同じ位であろうと考えていた男が、まさか職業は警官のしかも上位に入るだろう人間とは思わなかったのだ。
しかも役職から考えると明らかに年上としか思えない。
だが同時にランサーはアーチャーに一目惚れしたのだと開き直り、アーチャーの話を聞いている時から考えていたのだ。
次があるか分からない状況だからこそアーチャーとの縁をどのように残せるのか。
だから卑怯だと頭の中で激しく己を罵倒する声を初めてとも言える程に無視するとランサーは意地悪く微笑んで口にした。
「なぁ、アンタの身体を俺にくれよ」
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