森野 霞
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変わらない8月と君がいる9月_メインストーリー_9月

公式Twitterアカウントで画像で投稿しているメインストーリーを文章の形でまとめ直しております(複数画像やツイートに分かれていて見返しにくい部分もあるため)。
日付でページを分けています。こちらは9月更新分です。ストーリーをまとめて見返したい際などにどうぞ。
※多少修正や変更、増減している部分もあります。内容に大きな違いはありません。


■8月19日(金) 晴れ


アオバくんが失踪してしまうまで、もう時間はあまり残されていなかった。それでも、今日までいいアイディアは思い付かなくて――焦ってないと言えば嘘になる。

一度、バイターさんにも相談というか、確認というか……聞いてみようとした時もあったが、バイターさんにはループしている自覚や記憶は残っていなかった。
むしろ「急にどうしたんですか!?配信のしすぎで疲れちゃいましたか〜!?今日はお休みにしましょうか!!??」などと大袈裟に心配されてしまった。

きっと、今頼れるのは自分と、自分と同じような状況に陥っているトアくんしかいないんだろう。

*

【第5回!アオバくんの引退もとい失踪を止めよう!の会!】

……もう5回もやったんだっけ?」
「やってるよ〜!まぁ確かにどの回でもパッとしたアイディアは出てないからやってないようなものかもしれないけど

そう、この会議会ももうすでに5回開催されていた。まぁ二人でただ話し合っているだけだからそんな大した会ではないのだが。

「今日は何かあった?」
「何かあったわけじゃないんだけど、もうすぐアオバくんの、引退配信でしょ?もし前回の通りなら……アオバくんは、音信不通になっちゃう、から、」

それまでに何とかしないと。
トアくんはいつになく真剣な目をしていて、「そうだね」と一言だけ呟いた。

「俺――実は、アオバくんの引退についてはみんなよりちょっと先に知ってたんだ。あの時。アオバくんが俺にしか言ってないとは思ってなくて、何回か……相談もしてたんだけど、何か言えなくて。
……でも、アオバくんがあんな、世間を遮断するみたいに音信不通になるのは聞いてなかったし予想もできなかった。だからもし、俺以外に誰にもアオバくんが相談してないなら、誰にも何も言わずに独りになろうとしたのかなって思ってたんだ」

トアくんは一息にそう告げる。最後に「まぁ、誘拐されてた可能性もなくはないんだけどね。俺はアオバくんのことについて、報道で知っただけだから」と付け加えると、弱々しく微笑んだ。

アオバくんは、私には何も言ってなかったけれど、トアくんには相談をしていた――その事実に、何だか悲しい気持ちと、一人で悩んでいたわけではない、という嬉しい気持ちが混じった気持ちだった。
それに対して、私は「そうなんだ」とうわ言のように呟いたような気がする。

「うん、あ、でも別にアオバくんも悪気があったわけじゃないんだ。きっとコハレちゃんは落ち込むって分かってたから。言えなかっただけだと思うよ」

……っ!ち、違うの、確かに寂しいとは思ったけどトアくんには相談できてて良かったなって、そうも思ったよ!……二人が仲良しで嬉しいんだよ」

それも本心だったし、ちゃんと笑って、そう告げる。

「それでうん、トアくんの話は分かったよ!……えと何か、思い付いた?」

気を取り直して話を戻す。トアくんの話はもろちん理解はできたが――私にとっては、それが何かいいアイディアに繋がることはなかった。しかしトアくんは何か考え込むように思案すると、

………良いアイディアってわけじゃないんだけど、ちょっと考えてることがあるんだ。コハレちゃんにも協力してほしいんだけど……いいかな?」

そう言ってニコリと微笑んだ。私は「もろちん!」と頷くと、トアくんの話に耳を傾ける――

*

ミーティング室を二人で出ると、夕焼けが廊下を紅く染めていた。その眩しさに目を細めて、私はトアくんに向き直る。

「ねぇ、トアくん!夕日、とっても綺麗だよ!」

満面の笑みでトアくんを見つめると、彼も嬉しそうに優しく笑んだ。

「そうだね……。あの日見た夕日を思い出すよ」

窓の外に目を向けると、少しだけ目を細めて、トアくんがそう呟く。あの日……とはどの日のことだろうか?それを口に出そうとした時――

――うん、今度こそ俺は心晴ちゃんも、蒼葉くんも――

そう、続けて声が聞こえた。
だが、トアくんの声は小さすぎて、私の耳に届くまでに掠れて消えてしまった。

……?トアくん?何か言った?ごめんね、よく聞こえなくて

……ううん、ただの独り言だよ」

トアくんはそう言って、ゆるりと首を振った。