森野 霞
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変わらない8月と君がいる9月_メインストーリー_9月

公式Twitterアカウントで画像で投稿しているメインストーリーを文章の形でまとめ直しております(複数画像やツイートに分かれていて見返しにくい部分もあるため)。
日付でページを分けています。こちらは9月更新分です。ストーリーをまとめて見返したい際などにどうぞ。
※多少修正や変更、増減している部分もあります。内容に大きな違いはありません。


■8/23(火) 雨


明日はアオバくんの引退配信。

私の記憶が正しければ――アオバくんは、その日を境に失踪してしまう。
その前に、会わなきゃ。会って伝えなきゃ、聞かなきゃいけないことがある。

*

まだ蒸し暑さの残る雨の夜。いつも通り配信を行って、急いでアオバくんに連絡を取る。

『アオバくん!今日、会えるかな?』

何度も何度も書いては消してを繰り返して、結局打ち込んだのはそんな文章だった。そわそわしながら返信を待つ。

返信が来たのは30分ほど経ってからで、『別にいいけど』という端的な返信だった。まだアオバくんに会える。たったそれだけのことがとても嬉しかったことを覚えている。

*

今日は、私の方が先に到着していた。いつかのアオバくんのように、柵に背中を預けてもたれかかる。
まだまだ湿度のある空気が肌にまとわりついて、それを風が攫っていく。――夜でも、夏の暑さはちっとも変わっていなかった。

……アオバくん、早く来ないかな」

小さく呟き、スマホを開く。最後に私が送ったメッセージに既読すら付かずに止まったままの画面を眺める。
――この画面に、アオバくんの最後のメッセージが残っていた頃が懐かしく感じる。時間が戻ってしまったからもうそこに記録は残っていないけれど――私は、あの時アオバくんとした約束を、今度は私からしていたことに今更になって気付いた。

しばらくして、アオバくんは少し怒ったような表情で屋上に現れる。

……こないだはトアで、今日はコハレか。人気者は辛いな」

そんな軽口を言うと、私の隣に立つ。アオバくんはゆっくりと口を開くと――

……で?俺がここで死ぬからここを待ち合わせにしたのか?」

――!」

「はは、面白い顔」

アオバくんはむに、と私の頬を引っ張ると、楽しそうに笑う。い、痛い……。てそんなことはどうでもよくて!

「い、いひゃいよ、あおふぁくん!!」

「ふ、情けねぇな。コハレが珍しく真面目な顔なんかしてっから、緊張解してやろうと思ってさ?」

そんなことを言いながら手を離すアオバくん。自分から死ぬなどと言っておいて……、アオバくんは何を考えているんだろう?
そう思ったことは今まで何度もあったが、今が一番、それを疑問に思った時だった。

「むむ私だって真面目な話くらいするよ!それに今日は本当にほんっっっっと〜〜〜に大事な話なんだから!」

……分かってるって。コハレは俺を助けてくれるんだもんな?」

相変わらずからかうような雰囲気は変わらない。それでも。それでも、言わなきゃいけないことがある。聞かなきゃいけないことがある。スウッと息を吸うと私は口を開く――

「どうして、アオバくんは自殺なんかしちゃうの?」

出来るだけ、不安が滲まないように、声が震えないように、言おうとした。それでも勝手に声が揺れて、涙が零れそうだった。
私の言葉を聞いてアオバくんは少し目を細めた。そして予想もしていなかったことを口にする。

………コハレが死ぬからだよ」
………俺が死なないと、お前が死ぬんだ」
「なぁ、お前の望みは何なんだ?」

心臓が止まりそうだった。アオバくんが何を言っているのか、一瞬理解できなかった。
アオバくんの真剣な、真っ直ぐな瞳が私を撃ち抜く。

――私が、死ぬ?

その言葉が信じられなくて、受け入れられなくて、でも何だか見に覚えがあるような気がして、何も言えなかった。
アオバくんが何かを言っていた気がするけど、もう何も聞こえなかった。

――もう何も、聞きたくなかった。