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森野 霞
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変わらない8月と君がいる9月_メインストーリー_9月
公式Twitterアカウントで画像で投稿しているメインストーリーを文章の形でまとめ直しております(複数画像やツイートに分かれていて見返しにくい部分もあるため)。
日付でページを分けています。こちらは9月更新分です。ストーリーをまとめて見返したい際などにどうぞ。
※多少修正や変更、増減している部分もあります。内容に大きな違いはありません。
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■8/14(日) 曇りのち雨
「ねぇ、トアくん!お出かけしようよ!」
その日、突然の電話で俺は目覚めた。時刻は8時41分
――
休日であればいつもは寝ている時間だった。
突然電話口でそんな提案をされ、俺は困惑しつつも「うん
…
」と答えたようだった。
「良かった〜!急だから断られるかもって思ってたの!えへへ
…
。11時に噴水公園で待ってるね!来てくれるって信じてるよ
…
☆」
彼女は嬉しそうにそう言い残すと、一方的に通話を切る。何だか
………
おかしな状況になっているような気がした。
まだ半分寝ている頭を無理やり回転させ、取り敢えずベッドから立ち上がる。
「
…………
11時、ね
…
」
状況はさっぱり分からなかったが、外出の準備を整えるしかなかった
――
。
*
10時49分
――
小走りで噴水公園の中心である噴水へ向かう。遠目でも心晴ちゃんの姿は確認できた。
……
今まであまり意識したことはなかったが、私服姿の心晴ちゃんを見るのは初めてかもしれない。
心晴ちゃんは淡い青色のワンピースを身にまとっていた。ワンポイントであるボウタイリボンも可愛らしく、彼女によく似合っていた。
「心晴ちゃん、おはよ。もう来てたんだね」
「! トアくん! おはよう! 楽しみにしてたからね〜!えへへ
…
」
俺が声をかけると、パッと嬉しそうな笑顔で心晴ちゃんがこちらを向く。心晴ちゃんの瞳は相変わらず眩しいくらいにキラキラと輝いている。
「楽しみにしてたって
……
、俺は今日いきなり誘われたのに?心晴ちゃん、いつから考えてたの?今日のこと」
「え〜っ!う〜んと
…
今日の朝!」
「
……
あはは、そっか
…
」
苦笑いを返すと、それに気付いているのかいないのか、変わらず笑顔で心晴ちゃんは「でも行くとこは決めてるよ!」と宣言し、俺の手を引いて歩き出した
――
。
*
やってきたのは水族館だった。
心晴ちゃんのことだから、遊園地とか動物園とか、あとは映画とか中華街とか
…
とにかく楽しいところを選ぶと思っていたので、落ち着く空間である水族館を選ぶのは意外だった。
まぁショーなどを行うところもあるし、明るくて騒がしい場所では無い
…
とは言えないが。
チケットを購入し、並んで水族館の中に入る。思えば、水族館に来たのなんて小学生の頃以来かもしれなかった。記憶の中よりも暗くて青い世界に戸惑ってしまったが
……
そこは記憶の中なんかよりずっと綺麗だった。
*
「わっ!トアくん見て見て!クラゲさんだよ!綺麗だね〜
…
」
二人並んで、ゆっくりと見て歩いていると、クラゲの特設展示コーナーに差し掛かる。これまでも心晴ちゃんは巨大水槽やトンネル水槽、海獣コーナーなど様々な展示で目を輝かせて楽しんでいたが、クラゲコーナーでは楽しそうだけど少しだけ切なげに目を細めた。
「
――
」
「ねぇ?トアくん
……
クラゲって心臓とか血管とかないんだよ。でもね
…
ほら、こうやって泳いでる姿に癒されるでしょ?この動きが心臓の役割を果たしててね
……
。
……
のんびり、泳いでるように見えるけど
…
クラゲは必死で生きてるんだよ。これはクラゲの生きるための行動なんだよ。
…
でも私たちから見たら可愛いなって、癒しだなって思われちゃうんだね」
心晴ちゃんは静かにそう告げる。「それにね」と更に言葉を続けた。俺にはそれを止めることは出来なかった。
「クラゲって、死んだら水に溶けちゃうんだ。体がほとんど水分で出来てるから当然と言えば当然なんだけど
…
。
…………
静かに、誰にも知られずに、何も残さずに死ぬなんて、何か、切ないよね」
心晴ちゃんはやっと俺の方を見ると、困ったような泣きそうな顔で笑っていた。心晴ちゃんは
――
もしかしたら自分とクラゲを重ねているのかもしれないと思った。俺は何も言えなくて、そんな俺を見て心晴ちゃんは「トアくんは知ってた?」と問いかける。
「
……
ぁ、えっと
…
知らなかったな、そんな生態だったなんて。詳しいんだね」
やっと、それだけが言葉になって、ぎこちなく笑った。
傍から見たら
…
華やかで、明るくて、美しくて、綺麗で、そんな生き様がその実、本人が必死で生きている証なんて、そんなの、まるで
――
まるでバーチャルタレントである自分たちのようだと思った。
それなら
――
それなら、死ぬ時もまた同じように、誰にも知られず、何も残さずに溶けるように死ねるのだろうか。
――
いや、そんなことは不可能だ。“彼”の死がそれを教えてくれたじゃないか。
ゆっくりと揺蕩うクラゲを見て、俺は取り留めのないことを考える。相当ぼんやりしていたのか、心晴ちゃんに「大丈夫?」と声をかけられてしまった。俺は「大丈夫だよ」と微笑むと、今度は心晴ちゃんの手を引いて歩き出す。
「
……
イルカのショーが始まるよ。ね、見に行こう?」
「
…
!うん!もちろん!楽しみだなぁ〜!」
心晴ちゃんはいつもと変わらない、綺麗な笑顔でそう言った。
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