狸本丸怪談・朔

これがそもそもの始まり。オールキャラ書くまで終われま10、一周目。



補遺・傘さし狸

「成程、随分と楽しそうな本丸ですね」
そう言ってやると、そいつは嬉しそうに小さく何度も頷いた。
万屋の帰りに雨に当たり、古びた駄菓子屋の軒先で雨宿りすることにした。本丸の皆への土産が濡れてはかなわない。10分ほどした頃、笠を被った小柄な影が軒下に転がり込んできた。
笠は小夜左文字のものに似ており、もしやと思い探りを入れると、ご同業だった。しかしどう見てもまだ短刀と変わらないぐらいの年に見える。年齢制限がなくなってからの審神者だろうか。
うちのヤツらに揃って「タヌキ顔」と言われるのんきな顔のせいか、そいつは妙に懐いてきた。
俺も暇だったので、そいつの話す本丸での出来事を、何となく相槌を打ちながら聞いていた。かなり変わった本丸らしいが、仲の良い様子が伝わってくる。率直にそれを伝えてやると、笠の下からじっとおれをみつめた。
ーー来る?
そう言われた気がした。手には菓子の包みがある。挨拶の品には十分だ。
「ああ、おじゃまし……
「あるじぃぃぃぃぃ!!!」
返事を打ち消すように、名を呼ばれた。加州清光の声だ。俺の可愛い初期刀。しかし、何かいつもの加州とは違う気がする。
などと考えているうちに、極めた上に望月付きかというスピードで駆け込んできた加州が、笠のそいつをかっさらっていった。
そのまま数メートル行き過ぎ、ちっこいのを地面に下ろし、肩をガクガク揺さぶっている。
「なーんーでーお前が一番たち悪いことしちゃうかなぁ!?人さらいダメ絶対!!!」
ちっこいのは首を傾げて「きゅー?」と鼻を鳴らしている。きゅー?鳴き声?
……そういえば、ずっとあれの話を聞いていたが、どんな声だった?おそらく全刀剣の話を聞いたけど、そんなに長いこと雨は止まないものなのか?全てが曖昧に思えて、なおも説教を続けている多分俺のじゃない加州に、話しかけた。
「あの……
「ああ!すみませんねー、うちの阿呆あるじが。これ、お詫びにどうぞ!」
うちの燭台切のみっちゃん特製の再現・萩の月。冷やしても美味しいから!
「だからどうか!この馬鹿タヌキのことは忘れてやって!!」
言い終わるや、ちっこいのを小脇に抱えて走り去ってしまった。
タヌキ。タヌキなのか、あいつは。あ、確かに後ろから見たら尻尾がある。
元々の土産に強引に乗っけられた萩の月の包み。手作りで再現できるのか、あれ。
本丸に帰って、今度こそうちの加州にこのことを話したら、「23世紀にもなって、タヌキに化かされた主……」と微妙な顔をされた。萩の月は美味かった。今度会ったら、礼をやらねばならない。