はしびろこう
2026-02-09 19:02:03
20954文字
Public
 

治安悪ラヴァ

アシュヨダ前提🐮ラヴァわちゃわちゃ
アッパー集団🐮ラヴァが書きたかった




「アシュヴァッターマン、では三十分後に」
「おうよ、そっちも旦那は任せたぜ」
「それは俺に言ったのか?」
 屋上まで壁をよじ登り、自分の装備と下準備をカルナと済ませたら、まかせろ、と顔に書いてあるカルナはまた壁の排水管をスルスルと伝って降りていく。
 防弾ベストとダブルショルダーホルスターに二丁拳銃、暗視ゴーグル。三十分タイマーをセットして、深呼吸。カルナから通信が入る。
『ドゥリーヨダナと合流した、ヴィカルナと公安の準備もいい。いつでも行ける』
「了解!」
 取り出したのは薄い円状の刃物。アシュヴァッターマンが本来得意な投擲斬撃武器である。この武器を好む理由は数多あるが、そのうちの一つに射出音がないことが挙げられる。
 指でチャクラムを摘み、送電線を一撃で切り裂けば、
 ——バツン!!音がして建物の中が漆黒に塗りつぶされる。
 普段ならば非常電源に切り替わるが、これはカルナが手回しして電気設備点検と銘打って先んじて故障させている。
 明日は新月——月明かりはほぼ見込めない。
 いくつか調べて開け放たれた窓から屋内に侵入。
 窓を破らずに済んだので、いまだに単なる停電と思っているらしい奴らが先ほどまで明かりがあったので目が効かず右往左往している。
 建築見取り図を見せてもらったためだいぶ助かった。やはり後ろめたさがある宗教施設は襲撃時のためつくりは複雑だ。
 ——つまり、階をつなぐ経路の見通しがあまりよろしくない。他対一でも基本二人以上並んで攻撃は難しい経路ばかり、ということだ。
 長い廊下はあるが、広すぎる廊下は少ない。
 すぐに制圧されづらい作りということだ。
 拳銃とチャクラムだけで良いと武器を選んだアシュヴァッターマンの読みは当たっている。
「は、人殺し教団の自覚ありってこったな」
 アシュヴァッターマンは暗視ゴーグルごしに銃を構える。
 ドゥリーヨダナを狙った集団だと思えば手元も軽い。
 陽動役は任された。

「祭りと行こうぜ!」

 ※

 ダァ——ン!!
 電気が消え、銃声。
 最上階付近で、アシュヴァッターマンの陽動が始まった。派手にやれ、と言ってあるので音のよく響く銃を使ってくれている。
「カルナ」
 こちらはバーナーで窓を炙って消音気味に窓を破り、解錠して入る。カルナが先に体を滑り込ませ、安全を確認してからドゥリーヨダナにこい、と指で示す。
 アシュヴァッターマンの揺動と公安連中への通報合図はきっかり三十分後。
 こちらのすることは、教祖と伝達系統の始末、そして人質の安全確保。
 ドゥリーヨダナが剥き出しの配管の埃を払い、耳をつける。恐ろしいほど似通った親戚の声を聞き分ける耳は恐ろしくいい。
 声の高低や震えで嘘や人の心情を見分けるのも得意、ということを知っている者は少ないが、それでもこう言った場での索敵も、ままに得意なのだ。
 明日は大事な祭典の日、揺動に余剰戦力は割くだろう。それ以外の——そう、大事な人質がいる場所の護衛や——教祖のところに情報は集まる。
 最初の喧騒、次に駆け出す人数の少ない場所。やはり教祖の部屋から人質の部屋は繋がってると思って良さそうだ。情報が集まる部屋を割り出す。
「全く迷路のようなつくりだ、先に配管と地図頭に入れてなかったらさっぱりだぞ」
「ネズミの自覚があるようだな」
 後ろめたいことがあるんでしょう、とのことだ。それはそうだな、と笑いながら設計図で先に目星をつけておいた場所が教祖のいる場所で間違いないと耳が教えてくる。
「指揮系統がしっかりしておるなぁ」
 今日その部屋の前は長い廊下だ。どうするかなぁ、と思ったが、警備は軒並み上でアシュヴァッターマンが引き付けているし、他の信徒も教祖に指示を仰いでいるようで部屋から出てきていない。カルナに廊下の向こうへいかせて、挟み撃ちにすることにした。
 静かに、確実にするならば——
『カルナ、いいか?』
『問題ない』
 スマホで向こうに着いたのを確認してから、ドゥリーヨダナはペンを転がす。
 警備の片方が銃を構えながら近づいてくる。かつ、かつ、かつ、かつ。ドゥリーヨダナはそのまま廊下の角に顰み、男が来たらにこりと笑いかけて。
「なあ、トイレの場所がわからんのだが?」
——おまえ、なん」
 ドゥリーヨダナは捕まっているはずだと思っている男が、思考を並べ替えられずに数秒固まったのを見逃さず、腕を引っ張って物陰へ入れ込み、叫ぶ前に仕込み杖を膝裏に引っ掛けて組み伏せ、スタンガンで失神させた。
 片割れが不自然に物陰に連れ込まれたのを見た男は駆け出そうとするが、——回り込んでいたカルナに背を向けることになる。
——なに、」
「静かにしてもらおう」
 細い指が口を覆い、鎖骨の上から刃物が入り、かき混ぜるようにスライド——肺と心臓を潰す。ガクンと抜けた力をいなし、音を立てないよう静かに寝かす。
「さすがわし様のカルナ——!」
 ニコニコしながら小声で腕を広げながらくる男のハグを一度受け、二人ドアの前に立つ。
「さて、——時間がない。メインディッシュといかせてもらおう」