はしびろこう
2026-02-09 19:02:03
20954文字
Public
 

治安悪ラヴァ

アシュヨダ前提🐮ラヴァわちゃわちゃ
アッパー集団🐮ラヴァが書きたかった



 
 例の裏名簿が、ことのほかいい仕事をしたらしい。
 ご機嫌でカルナに必要な情報を持たせお使いに出した後、二人で飯でも行こうと連れ出されて浮かれていたのは認める。
 リストランテの個室であれをこうしようとか、その提案をこうしたら面白いと思う、みたいな人が聞いたらぶっ倒れそうなあくどい話もしていたので小さく釘。
「あんまいじめすぎんなよ、飴と鞭のバランスが大事って旦那に教えられたんだぜ」
「わかっておるとも。わし様が教えたこと覚えててえらいぞアシュヴァッターマン」
 褒められたら嬉しい、を教え込まれたのはこの男にである。にやけた顔を見せるのはあまりにも情けないので、手洗いに行ってくる、と席を外す。
「早く戻らんとデザートが来てしまうぞ」
「すぐ戻るっつーの」
 軽口。
 手洗い場の鏡の前でにやけてないか頰に手を当てるが、完全に緩んでおり、あーもー旦那にこういうの隠すの苦手なんだよなぁなんて思いながら頰を揉んでいれば、ピンと張った糸のような——そこをレーザーポインタで当てられたような悪寒が走る。
 手洗い場に入ってきた男の目つきはどう見ても戦い慣れている男のそれで、用を足しに来たそれではない。
 狙いをつける目つき——。手を振れば仕込まれていた刃物が手のひらで光った。
 こちとら久々の二人きりデートで浮かれているのだ。変な横槍は入れないで欲しい。
 切り掛かってくる刃物を避け、手のひらを返しながら手首に引っ掛けて引き、体勢を崩したところで膝の後ろを蹴って転ばせ、刃物を奪い取り後頭部を叩いた。
 思い当たる節が多すぎて容疑者の絞り込みすらできねえが、こちらに来ているということはドゥリーヨダナのところにも来ているはずだと舌打ちをして部屋までの直線をかける。
 おそらく手洗い場での襲撃と同時に起こしたであろう中で暴れた様子の血と真新しい薬莢——そして別種の薬品の匂い。
 連れ去られた。
 ザワ。
 全身総毛立ちながら窓から外を確認すれば、乱暴な運転の車輪の跡が見える車に、今しがた乗ったであろう形跡——はめ殺しの窓を蹴り飛ばして車のボンネットに飛び降りれば、中では複数の男と、見覚えのある服——ドゥリーヨダナの腕が力無くだれているのが見える。
 頭に血が登って運転席のガラスを蹴り破り、腕を引っ掴んで男を引き摺り出すが、その間に運転席に滑り込んだ男が強引にアクセルをふみ振り落とされる。
 ギュルル、空回りしながらもガン踏みしたエンジン音に、加速。掴んだ男ごともんどり打ったために体制を整えるのに時間がかかり取り逃す。
「旦那‥!っクソ!!」
 八つ当たりに引っ張り出した男に蹴りを入れるが後の祭り。横の男は蹴られた腹を抑えてクツクツと笑う。
「今日は‥っはは、今日は絶好だった」
「‥‥カルナが、いれば良かったなぁ」
「あいつがいればここまでうまくは行かなかったろう、目を離してくれてありがとよ」
 笑う男と、車の言った先を見つめたあと、男を見下ろしたアシュヴァッターマンの目は恐ろしく冷たい。
「カルナがいれば、今日旦那に触れた奴ら全員墓に叩き込む事にならなかったのに」
「は——‥?」
 前髪を掴んで顔写真をとり、兄弟LINEに叩き込む。
「こいつの素性今すぐ」
「は?」
 ぽこん。男が豆鉄砲を食らったやうな声を出した後、LINEの通知が更新され続ける。
「ああ、あんた今そこで雇われてんのか‥なるほどな」
 旦那が裏名簿のパソコン盗んだ——もらったとは言っていたが——ところから見つけた名簿の相手先の一つである。
「娘二人、息子一人。ああ、二人目の娘は生まれたばっかか」
「なに——
「あんたや家族は、ネットに流してねえかもしれねえが」
「‥‥」
「娘のクラスメイトやら、その他街を適当に写したところにのってたりして——生活圏は割れるんだよな」
「!!」
 さっと顔色を変えた男の前にしゃがみ、優しい声で。
「どいつの死体なら、口が軽くなる?」