DRRV11037
2026-02-05 13:21:14
18106文字
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DRRV 1章 日常編




皆が梯子を登って、明るい地上へと移動していく。ボイラー室の地下の広大な空間が少しずつ空っぽに戻っていく。

裁門さんは改瀬さんに何か囁いたのち、足早に歩き去っていった。一部始終をさりげなく観察しながら、私はずっとずっと、機会を窺っていた。まだどこか浮かない表情を残す改瀬さんには、何か声をかけなければならない気がしていたのだ。

私はなるべく目立たないように気をつけながら、改瀬さんに近づいた。

あ、あのね、」
話しかけた瞬間、声色がぎこちなくなっていることに自分で気づいた。これまでの疲労と今の緊張のせいで、喉が渇いている。

「ありがとう、一番最初に声を出してくれて。」

改瀬さんは突然声をかけられて困惑しているのか、何も言わない。私はにわかに焦りだした。

「あ……。えっと、私っ、………好きなのあったら、少しあげるね!」

なんという気の抜けた励ましだろう、と思った。今の自分はよくない。これで喜ぶと思っている辺りから、内に秘めた食い意地が露呈している。本当に伝えたいのは、巻き込まれたなんてとんでもない、寧ろ彼女は代表してくれたのだということなのに。

引かれただろうかと思って、ちらりと目を上げる。

そのとき、多分私は、やっと改瀬さんと目を合わせた。

そうしてみて初めて、彼女が実は垂れ目であることに気がついた。あれ、つり眉なのに。なんとなく意外だ。思っていたより柔らかい。深緑色の目の眩さが弱まっている今、この子がようやく同年代の女の子に見えだした。

ふはっ、」

改瀬さんが垂れ目をむぎゅっと細めて笑った。手の甲の、いちばん角ばった指の付け根のところを、こころよい笑い声を紡ぐ下唇に近づけるのが彼女の癖なのだろうか。やっぱり。人より少し勇敢なだけの普通の少女だ。