ユキ
2025-12-25 16:03:41
33785文字
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🌲🎏アドベントカレンダー

同棲している杉元と鯉登が過ごす12月をまとめたものです


【⠀12月13日⠀】

 ポツポツ、と降り出した雨にキュッと眉根を寄せた
 傘を取り出す人や酷くなる前にと走り出す人を眺めながらどうしようかな、とスマホを取り出す
 待ち合わせの時間まであと三〇分ほど
 雨雲レーダーでこの後もしばらく振り続けそうなのを確認して鯉登にメッセージを送る
 
『降ってきた』
『どうする?』
 
 すぐに付く既読マーク
 その間にも強くなる雨音と増していく寒さに、やっぱり今日はやめておこうか、と提案しようと視線を落とすとちょうど吹き出しが現れた
 
『行く』
 
 短い言葉と一緒に送られてきた到着時刻にしょうがないなぁと苦笑して駅前のコンビニへ足を向ける
 
「待たせた」
「待ったよーおかえりー」
 ただいま、と隣に並んだ鯉登にさっき買ってきた缶コーヒーを渡す。少しぬるくなったコーヒーがゆっくりと身体の中を落ちていくのにほぅっと息を吐いて横を見ると、同じように両手で缶を持った鯉登が白い息を吐き出していて思わず笑ってしまう
 
「寒いねぇ」
「あぁ……ありがと」
 鼻の頭を赤くしてふっと小さく笑う顔になんとなくむずがゆくなって、誤魔化すようにぐしゃぐしゃと綺麗にセットされた髪を乱せばやめろ、と思い切り脇腹を殴られた
 飲み終わった空き缶をゴミ箱に捨てて、二人並んで屋根の外に歩き出す。念の為にと持ってきていた傘をさして向かうのはこの間一人で見たクリスマスのイルミネーション
 
……やっぱり違う日にしない?」
「やだ」
 なぁに意地はってるんだか
 強くなる雨足にそう聞くと、むすりと顔をむくれさせて足を早めた鯉登の後を追いかける
「鯉登」
…………なんだ」
 分かりやすく拗ねてるのが可愛いなぁ、と思いながらさっき買っておいたものを渡す
 買ってすぐに袋を開けておいたからもう十分に熱くなっているカイロ
 ぱちぱちと瞬きをして受け取った鯉登が口をもごもごさせながら小さくありがとうと言うのに笑ってしまう
 
「ご飯何にする?」
……ラーメン」
 出来始めた水溜まりを避けながら、雨音にかき消されないように少し声を張り上げて会話する
 傘のせいでちゃんと顔が見えないのだけが残念だけど、時々ぶつかる傘から飛び散った水が当たって冷たい、と騒ぎながら歩くのも悪くない
 
「「おぉー」」
 雨のせいかあまり人がいない広場の真ん中で二人の声が重なって顔を見合せて笑う
 キラキラチカチカ
 水に濡れて輪郭がぼやけた光が綺麗だ
 この間見たサンタもピカピカ点滅しているのを見ていたらパシャリと音がする
 横を見るとスマホを構えた鯉登がいたずらっぽく笑いながら撮った写真を見せてくる
「間抜け面」
……お前ねぇ」
 消せ! とスマホに手を伸ばしても軽やかに避けられる。しばらく追いかけっこして思い切り水溜まりに足を突っ込んで
 なにやってんだろ、と二人で声を上げて笑った
 
……綺麗だな」
「うん、綺麗」
 二人並んで見る光景はやっぱり一人で見た時よりずっと綺麗で来てよかったな、と隣に目を向けてスマホを構える
 パシャリと響いた音にこっちを見た鯉登に、にひひと笑ってお返しとスマホを見せれば呆れたような顔で笑われる
 
「撮るぞ」
「はーい」
 なんとか後ろのイルミネーションも一緒に入るように鯉登が撮ったツーショット
 せっかくだしコンビニで印刷して帰るか、と話しながら二人並んで歩いていれば鯉登が傘を閉じる
 まだ降ってるのにどうしたのかと思えばぴたりと身体がくっついてきた
 
……濡れるよ?」
「がんばれ」
 無茶言うなぁと笑って傘を傾ければ、ふふと笑う声がさっきよりもずっと近くで聞こえる
 ひそひそ、とそんな必要は無いのに少しひそめた声で話しながら歩く
 
 こういうのも良いな、と新しい楽しみを見つけた冬の雨の日
 
 鯉登の誕生日まであと10日







【⠀12月14日⠀】

「っえっくしょいっ!」
背後から聞こえてきた声に振り返ると、杉元があぁーと低く唸って鼻を啜っていた
……風邪か」
「んやー?噂でもされてんのかな」
寒い寒いと、こたつにもぐりこむ男をじっと見るが、特に体調が悪いわけでも無さそうで――そっと気が付かれないように息を吐く
……心配してくれてる?」
「うつされたくないだけだ」
そっかそっか、とにやける男の顔が面白くなくてゲシゲシと足を蹴りつければうはは、と笑って足を捕まえられた

「あれぐらいで風邪ひくほどやわじゃないよ」
……ならいい」
捕まえられた足先がもみもみと体温の高い手に包まれてじんわりと温かくなる。無言でもう片方の足も寄せれば「おかわり?」と柔らかく笑って受け入れられるのがどうにも
……ムカつく」
「えー?ひどくない?」
むすり、と頬を天板につけてそんな悪態をついても何故かずっと嬉しそうなのが落ち着かない
十分温まった足はまだ杉元の手の中でやわやわと揉まれていて、どうしようとうろうろ視線を動かして目に入ったものに手を伸ばした

毎年ダンボールいっぱいに送られてくるみかん
かごに移してこたつの上に置いてあるそれをひとつ手に取った
つるりとした表面に指を入れると広がる爽やかな香り、むしむしと中身を傷つけないように指を実と皮の間に入れて、健康にはいいらしいが口当たりが気になるから白い筋も適度にとったものをひと房
……ん」
「え、おれ?」
ずいっと杉元の口元に差し出した
驚いて開かれた口の中に突っ込めば歯に当たったのか薄皮が破れて指が濡れて、果汁が喉に飛んだらしくごほっとむせた
指を引き抜いてもうひと房
「や、ちょっとまっ、ぐえ」
…………
何か言っている気はするが気にせずにどんどん押し付けていれば諦めたのか大人しく口を開くようになった

最後のひと房を口の中に押し込んでベタベタになった指をティッシュで拭っていれば今度は杉元が天板に頬をつけてじとりと見上げてくる
「なんなのもぉ……
「別に」
その顔にふふん、とスッキリした気持ちで鼻を鳴らす
はぁーと大きく息をついた杉元がよいしょと起き上がってみかんの入っているかごに手を伸ばした

……はいあーん」
………………んあ」

大人しく開けた口の中に放り込まれた白い筋が着いたままのみかん、口の中に残るそれが気になる
ちゃんと飲み込んで口が開かれるまで待っていた杉元の
甘酸っぱい果実をつまんだ指に噛み付いた


「いってぇっ!!」
「アルベドはもう少し取れ」
……なんて?」