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ユキ
2025-12-25 16:03:41
33785文字
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🌲🎏アドベントカレンダー
同棲している杉元と鯉登が過ごす12月をまとめたものです
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【⠀12月5日⠀】
「おかえりー」
「ただいま」
ガチャリと玄関のドアが開いた音がして声を上げる。玄関の方から聞こえてきた寒いっと叫ぶ声に思わず笑ってしまう。その後も何を言っているかは聞き取れないけど多分寒さに対する愚痴をこぼしていて、これは先に風呂を勧めた方がいいかな、とコンロの火を止めようとしたらリビングの扉が開いて驚いた。元々綺麗好きではあるけどこの時期は特に気を使ってるこいつが洗面所よりも先にこっちに来るなんて
台所から様子を伺うと鯉登がテーブルの上にトン、と白い紙袋を置いた。そのまま洗面所の方に向かう背に、先にあったまっといでと声をかければ、んー、とヒラヒラと手を振りながら扉の向こうへ消えていく
特に何も言われてないしそのままでいいだろうとテーブルのど真ん中に置かれた紙袋は放っておいて洗い物に手を伸ばした
「杉元」
少し遅めの夕飯の後、来い来いと片付けを終えた鯉登に呼ばれてキッチンに向かう。ゴソゴソとシンプルだけど高そうな紙袋の中から取り出されたのは今ではもう見慣れたこの時期の定番
「シュトレンだ」
「ふふ、今年はチョコにしてみた」
丁寧に包装から取り出した白い菓子パンをまな板の上に置いた鯉登が包丁を手ににまりと笑う
「何センチがいい」
「
……
いつまでそれ言うのぉ?」
数年前、初めて鯉登の家で見たシュトレンを端っこから分厚く切って食べようとした事をこいつは未だにからかってくる
「うふふ、毎年言ってやるから楽しみにしておけ」
「
…………
やだぁ」
一瞬言葉が詰まった
顔を覆って俯く俺を見て楽しそうに鼻歌を歌いながら真ん中に刃を入れるこいつは気がついてないだろう
(毎年、かぁ)
火照ってだらしなく緩んでしまう顔を何とかするためにパン、と頬を叩く俺を見て引いている鯉登にちょっとだけイラッとして形のいい額を指で弾いてやった
ひとつの小皿に盛られた真ん中から薄く切られたシュトレン二切れとノンカフェインの紅茶
明日も雪だろうか、急に寒くなりすぎじゃないか
なんてことない些細な事を話しながら二人で少しずつ食べる毎年の楽しみ
こんな日がずっと続いたらな
そんな、改めて口に出すには気恥しいことを考えながら最後の一欠片を口に放り込んだ
【⠀12月6日⠀】
「やっぱりちゃんこじゃないか?」
「いやーチゲも有りじゃない?牡蠣売ってたよね」
土曜日の午後四時過ぎ、家から少し離れた大型スーパーの鍋コーナーの前でああでもないこうでもない、と話していればだんだんと増えてきた人手に少し脇に避ける
うんうんと両手に持った鍋の元を見比べる杉元の横に立ってちらっと周りに目をやってその手の中から袋を取り上げて二つともカゴの中に入れる
「二つとも食べればいいだろう」
カートを押しながら、具材を買いにもう一度入口に向かう私の横に立った杉元の顔はにやりと笑っている
「一日で?」
「一日で。シメは麺と雑炊にするか」
いいねぇ、と笑う隣の男につられてふっと口角が上がる
白菜とネギ、椎茸にえのき
豆腐とくずきり、油揚げに餅巾着
肉は鶏と豚の二種類、つくねに軟骨はアリかナシかをグダグダ話しながら海鮮コーナーへ
海老牡蠣ホタテ、鱈の切り身に魚のつみれも入れてみよう
どんどんとカゴの中に積み上がっていく食材に思わず顔を見合わせて笑ってしまった
「こんなに食べれるかなぁ」
「
……
誰か呼ぶか?」
今日は土曜日、そうでなくても頭によぎったのは誘えば大体乗ってくるような奴らばかり
少し早いが忘年会、ということで大勢で鍋を囲むのも良いのではないかと杉元の方を見るとなんとも言えない顔をしている
(
……
珍しい)
「嫌ならいいが」
「あーえっと
……
鯉登は?誰か呼びたい?」
「
……
いや特には」
そう答えるとあからさまにほっと安心したような顔をする男をまじまじと見つめる。本当に珍しい。あいつらと遊びに行くのもご飯を食べるのもいつも杉元から誘われるから喜ぶかと思ったのに
ちょっと減らそっか、とカゴへ手を伸ばす杉元の手をペシりと払ってレジへと向かう
「えっちょっと鯉登?」
「食べきれない分は冷凍しておいて次使えばいいだろう」
長くなり始めているレジ列の最後尾に並んでそう言ってやればへにゃりと笑ってうんと頷く
「
……
喧嘩でもしたのか」
「え?誰と?」
「白石たちと」
不思議そうな顔をしている杉元に一緒に食べるのは嫌なんだろう?と聞けばあぁーとまたあの顔を浮かべて唸り始めた
なんなんだ、と思って見ていれば順番が来たのでとりあえずずっしりと重いカゴを台の上に置いた
パンパンに膨らんだ袋をひとつずつ手に持ち家路に着く。空は赤く染まり遠くの方はもう夜になり始めている
さっきからずっと黙ったままの杉元に名前を呼ばれてそちらに目をやると、夕焼けで赤く染まった顔でこっちを見ていた杉元が口を開いた
「あいつらと食べるのが嫌なんじゃなくてさ」
「うん」
「そうじゃなくてえっと
……
二人が、いいなって」
「
……
うん」
「
……
そういうことです」
なるほどと頷いてやれば、うぁぁと唸りながら片手で顔を覆って立ち止まるから隣に並んで顔を覗き込む
夕焼けのせいではない真っ赤な顔、なんだよと涙目で睨みつけてくるのがなんとも可愛らしい
「んふふ
――
杉元は可愛いな」
「
……
うるせぇー」
ぶつぶつ言いながら早足で歩き出した男の隣に並んで手を握る。これだけ寒いのに少し汗ばんでいる手の平はいつもは不快に感じるのに今日はまぁいいかと許せてしまうのが不思議だ
「お前私の事大好きだな?」
「
……
知らなかったの?」
知ってた、とにやりと笑いながら言ってやればしょうがないなと言いたげな顔で笑う杉元は
私もお前のことが大好きだ、と言ってやればどんな顔をするだろう
手を繋いだまま前に回り込み、きょとんとこちらを見る杉元の目を見てにっこり笑いながら口を開いた
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