ユキ
2025-12-25 16:03:41
33785文字
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🌲🎏アドベントカレンダー

同棲している杉元と鯉登が過ごす12月をまとめたものです


【⠀12月21日⠀】

目が覚めると朝だった

…………6時」
ちらっと上に視線を向けてぼそりと呟く。真っ暗な部屋だと今何時なのかが分かりにくいが、もうそろそろ日が昇る時間。背中にぴたりとくっついている男を待っていたはずがいつの間にか寝てしまっていたらしい

もぞもぞとまとわりついている腕の中で寝返りを打って抱きついていた男の顔をじっと見る
半開きになった口をきゅっと指で閉じるとうごうごと動いて逃げようとする。時々喉がイガイガするとか言ってたがこれが原因なんじゃないか?
そのままついでに鼻もつまんで様子を見ていれば、だんだんシワが寄っていく眉間と逃げようとする顔

…………ぶはっ」
「おはよう」
……はよ?」
かっと目を開き思い切り顔を動かして息をしている杉元に声をかければぜぇぜぇと荒い息をしながらもちゃんと返ってくる声に満足した
「え、なに、朝?何時?」
「6時」
「あ、ありがと……えっ今なんか無かった?気のせい?」
呼吸が落ち着いてきょろきょろと周りの様子を伺う杉元に急に起きたからびっくりした、とさらっと嘯いて身体を起こす
「なぁ杉元」
「なんか鼻と唇が痛い……ん?どしたの」
「朝食べないといけないものってあったか」
えー?とごろりとうつ伏せになった男の跳ねた髪をちょいちょいと整えてやりながら自らも冷蔵庫の中身を思い出す
無かったと思う、としばらくしてから告げられた言葉にひとつ頷いて、どうしたのとこちらを見上げている男と目を合わせる

「パン屋さん行きたい」
……あぁ、あそこ?」
うんと頷けばいいよ、と笑いながら手を伸ばしてくるので少し頭を下げる。ぐしゃぐしゃと髪を混ぜられるがまだ今日はセットしてないから気にならない
よいしょ、と声を上げながら起き上がる杉元におっさんくさいと言ってやればやめろ、と食い気味に返された――最近気になっているらしい

もこもこのスリッパに足を入れてひんやりした部屋を二人で出る。そのまま並んで洗面所で身支度を整えて、着替えるためにそれぞれの部屋へ
「7時出発ね」
「んー」
寝間着を脱いでクローゼットから取り出した服に袖を通せばひやりとした生地の感触にぞわっと鳥肌がたつ
もそもそとボタンを止めながら早く暖かくなってくれないかと思うがまだまだ春は先で思わず溜息がこぼれる

鞄の中を確認して部屋から出れば、先に準備を終えていた杉元がリビングの椅子でスマホをいじっている
近付くとこの間行ったパン屋さんのSNSを見ていたようで、新商品が出ているとうきうきと声を弾ませて教えてくれた
……美味しそうだな」
「ねー見てたらお腹空いてきた」
行こっか、と立ち上がりダウンを羽織る杉元に朝のあれはちょっと悪かったかな、とほんの少しだけ思った
「悪かった」
……え?何が」
「別に」
なんか怖いんだけど、と何故か怯える杉元の手にマフラーを渡せばスルスルとぎこちないながらも丁寧に作られる結び目
「どう?」
……うん、上出来」
ふふん、と得意気に笑う杉元に調子に乗るなと釘を刺す
二人並ぶには狭い玄関で順番に靴を履いて外に出て、何を食べようか、と話しながら日曜日だからかいつもよりも人が少ない街を歩く

自分で結ぶよりも少しきつい首元、ちょっと苦しいけど解く気にはならなくて
肌触りの良い布に顔を埋めてふふ、と笑った






【⠀12月22日⠀】

「ただいま」
「おかえりー」

ドアを開けたままだった風呂場からひょこりと顔を出すと、靴を履いたままの鯉登がくん、と鼻を鳴らしている
「柚子湯?」
「うん、今入れたところ」
まくっていた袖を下ろしながら鯉登に先に入っといで、と言えばどこかぼんやりした声が返ってくる――疲れてるなぁ
いつもスタスタ歩いてる鯉登がちょっと足を引きずりながら廊下を歩いてきて、ぽすりと身体を預けてきた
……だいじょうぶ?」
「んーー」
ぐりぐりとしばらく頭を擦り付けてからぱっと身体を離して風呂、と一言残し自室の方へ向かう鯉登を見送ってどうしようかな、と少し悩む

「鯉登」
「なんだ」
スーツを脱いでどこかぼんやりしたまま風呂場へ向かおうとする鯉登に声をかける
「風呂、一緒に入るよ」
…………好きにしろ」
少しだけ眉根を寄せてから出された『よし』
先に行っといて、とぽんと頭を撫でればこくりと無言で頷いて風呂場へと歩いていく

「一緒に入るんじゃないのか」
「入ってるでしょ」
そういうことじゃない、と浴槽の縁に頭を預けている鯉登は服を着たまま入ってきた自分が気に入らないようで唇を尖らせている
「痒い所はありませんかー」
「ある」
いやどこだよ、とぐりぐりつむじを押しても無言のままネットに入った柚子を手の中で泳がせている鯉登に苦笑する
「良い匂いだねぇ」
……うん」
……それさぁ、鯉登さん家から送ってきてくれたやつなんだよ」
え、こっちに顔を向けようとする鯉登の頭を軽く抑えて泡を流す。シャンプーの次ってこっちでいいんだっけ、とちょっと迷っていればそっち、と違うボトルを指さされる。こっちのは何用なの、と聞けば三日事にするやつと言われた
「で?」
「んー?」
「これ、家からって」
ひょいっと持ち上げられた柚子は大きくて立派なもので、今日届いた荷物の中にあったのを見つけた時は結構びっくりした
「プレゼントも一緒に入ってたから明日渡すね」
――――ん」
手に持った柚子に顔を近付けて良い匂い、と小さく呟く鯉登の顔はすごく嬉しそうで、良かったとほっと息を吐く
ふんふん、と鼻歌を歌えるくらいには元気が出たらしい鯉登の髪を洗い流してぽん、と叩く
「じゃあ、俺は出るけどゆっくり……
「杉元」
ん?と名前を呼ばれて立ち上がろうと腰を浮かせたまま覗き込めばふにゃり、と笑った鯉登から思い切りお湯をかけられた
「ッッッ何すんだよ!!」
「あっははは!」
頭からお湯を被った俺を指差して笑う鯉登が浴槽の縁で組んだ腕にこてん、と頭を乗せて見上げてくる
「さっさと服脱いでこい」
…………はぁぁぁ」
軽く水気を絞った服をその場で脱いでぽいっと外に放り出す。後でちゃんとするから今は許して欲しい
色々諦めて髪と身体を洗っていれば早くしろ、と横から煽ってくるお馬鹿の顔にシャワーを当ててやる
洗い終わった自分と交代で外に出て身体を洗う鯉登から目を逸らしながらぷかぷかと浮かぶ柚子を持ち上げてすぅっと息を吸い込めば鼻の奥まで爽やかな柑橘の香りでいっぱいになる
「つめろ」
「へいへい」
ばしゃりと身体を洗い終えた鯉登が浴槽に戻ってくる。背中を向けて寄りかかってくる身体を抱え込めば、すっぽりとはいえないがぴたりと上手い具合に収まる身体
目の前にある肩に顎を乗せればこてんと頭が寄せられる
「後で電話しようかな」
「うん」
気持ち良かったですって伝えておいてくれる?と頼めば代わるから自分で言えとごつりと頭をぶつけられた
ぷかぷか浮く柚子をつんつんと突く鯉登の指をぼんやりと見ながら今何時かな、と考える
最初は出来れば俺がいいけど、それはちょっと心が狭い気がするから言えないし

そんな事をぐるぐる考えていればぎゅっと鼻をつままれる
「言いたい事があるなら言え」
……言いたくない」
こいつがどれだけ愛されてるか知ってるから邪魔はしたくない
ふん、と鼻を鳴らした鯉登の身体をぎゅうっと抱き締めて肩に顔を埋める
知ってるからそれは言わない、けど
「最後は俺にちょうだいね」
…………欲張りめ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる
お湯が動く度に広がる強い柚子の香りに頭が少しクラクラしてきた

ぽかぽかと温まった身体で夕飯を済ませ、スマホを手に持った鯉登をぼんやりと眺める。ぱっと明るくなった鯉登の顔にふふ、と顔が緩んだ
差し出されたスマホの向こうにいる鯉登のお母さんにお礼を伝えれば、きばいやんせと優しい声が返ってくる
はい、と頷いてスマホを鯉登に返し楽しそうに会話する鯉登を見てきゅっと目を細める

明日は、鯉登の誕生日だ