Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ユキ
2025-12-25 16:03:41
33785文字
Public
🌲🎏
Clear cache
🌲🎏アドベントカレンダー
同棲している杉元と鯉登が過ごす12月をまとめたものです
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
【⠀12月9日⠀】
「焼きたてのパンの匂いってなんか幸せな気持ちになるよねぇ」
「
……
気持ちはわかるが嗅ぐな、恥ずかしい」
クンクン、と店の前でマスクをずらして鼻を鳴らしていれば通りすがりざまに背中を叩かれる
カランカランと鳴るベルの音
焼きたての小麦の香りで満たされた店内に痛い、とぼやきながら入るとすでにトレーとトングを手に持った鯉登がわくわくを隠しきれない顔で店内を見渡していて思わず笑ってしまった
「えぇー?全部美味しそうー」
うきうきと弾んだ声で何にする?と鯉登の後ろをついて歩く
トレーの上にそれぞれ選んだものを右と左に分けて、味が混ざらないように気をつけて
――
こういうお店で鯉登がトレーを俺に持たせない理由が、そこにあった
温めてもらったパンが乗った皿と温かいカフェオレがたっぷり入ったマグ
窓際のカウンターに二人並んで座って手を合わせる
「「いただきます」」
これ美味しいよ、と差し出した食べかけのパンにかじりついた鯉登がお返しに、と口元へ差し出してきたパンにかじりつく
おいしいねぇと笑うと、そうだろうと得意げに返されて
なんでお前がそんな偉そうなのと言えばふふん、と鼻で笑われて
そんな気の置けないやり取りが心地良くて楽しい
「ねぇねぇ」
「んー?」
お互いの皿の上が空になって、残り少ないカフェオレを飲む鯉登をぼんやりと見ていた時に良いことを思いつく。そわそわとしながら少し身体を寄せれば同じように身体が寄せられて肩がとん、と触れた
「クリスマスさぁ、ホームベーカリーとかどう?」
「
……
それいいな」
鯉登の誕生日が近いこともあるが、一緒に暮らし始めてからクリスマスは二人で使うものを買おうということになっている
色良い返事に早速どんなものがあるか調べようとスマホを取り出せば表示されていたのはそろそろ出た方が良い時間
「あぁー
……
もう行かなきゃだね」
「そうだな
……
私も良いものがないか調べておく」
結構乗り気らしい鯉登がそう言ってくれたのによろしく、と返して二人分のトレーを返却しに行く
その間にコートを羽織っていた鯉登の手には去年あげたマフラー。外に出てからするつもりなんだろうなと思いながら渡されたリュックを背負った
暖かかった店内から外に出た途端に寒さに襲われてぶるりと身体を震わせた鯉登の手からマフラーを取り上げる
いつもこいつがしているような巻き方に挑戦してみたが上手くいかなくて、ただぐるぐると巻いただけになってしまったそれは酷く不格好で
悪戦苦闘する俺をくつくつと笑いながら待っていた鯉登はこれでいいと言ってくれたけど、やっぱりすごく悔しい
今度やり方教えてと頼めば任せておけ、と笑う鯉登がかっこよくてぐぅ、と唸ってしまった
「じゃ、ここで
――
いってらっしゃい」
「ん、いってらっしゃい」
ひらひらと手を振って別れ、人混みの中に消えていく背中が見えなくなるまで見送って踵を返した
すぅっと息を吸い込めば、まだ鼻の奥に甘くて香ばしい香りが残っている気がする
(
……
幸せの匂いだなぁ)
ふふ、と笑って数分後に出発する電車に間に合うように足を速めた
【⠀12月10日⠀】
「鯉登ー」
「? なんだ」
夕飯の片付けをしていた手を止めて振り返ると、リビングと廊下を繋ぐ扉から顔を出した杉元が手に持っているものを見せてくる
「入浴剤入れていい?」
「構わんが
……
買ってきたのか?」
手の中にある袋に見覚えが無い。たまにしか入れないからもしかしたら昔買ったのかもしれないがなんとなく、そう、なんとなく気になって聞いてみる
「いや、貰い物」
「
…………
誰からだ」
「え? 職場の先輩」
きょとんとした顔に後暗いところはなさそうだ、が
じとりと杉元の手の中にある入浴剤を睨め付ける私と、貰い物とやらを見比べた杉元があっ、と声を上げる
「あーいや違う! 違うって!」
「なにが」
「これくれた人奥さんも子どもさんもいるから!」
「
……
ほぅ?」
とりあえず聞いてやろう、と泡だらけの手を一度水で流して向き直ると、ほっと息を吐いて杉元が話し出す
「土産?」
「そ、温泉行ってきたんだって」
いいよねぇ
…
温泉、と言う杉元の手から袋を取り上げる。印字されている有名な温泉地の名前にもやもやしていた心が軽くなる
ん、と返せば今度は杉元が座った目で睨み付けてきた
「なんか言うことなぁい?」
「
……
悪かった」
まぁ悪い事をしたなと思ったので素直に謝罪すれば、目を丸くして固まった杉元がしばらくしてからなにやら慌てて額や首筋に触れてくる
「え? どしたの? 大丈夫? 熱でもある?」
「
…………
はぁ」
怒るのも面倒くさくて、ぐいっと近すぎる顔を押しのけて中断していた洗い物を再開した私の後ろであわあわと謝ってくる杉元がうるさい
ひたすら食器を泡だらけにして水で流して、十分ほどでシンクの中が空になる。手を拭きながら振り返ればそこに突っ立ったままの杉元、その顔があまりにも情けなくて思わず笑ってしまった
「
……
いっしょに入るか」
「え」
「ほらさっさと行ってソレ入れてこい、準備してから行く」
「
……………
お」
「お?」
「おさわりは、アリですか
……
」
「
……
言い方が気持ち悪いからナシ」
ええええ、とその場に崩れ落ちる杉元を見下ろして溜息をつく。ちらっとこちらを見上げながらだめ? と言ってきた男のつむじをぐりぐりと押せばぎゃっと汚い声が上がる
壁にかけた時計を見て、明日の出勤時間を思い浮かべた
「
……
チャンスをやろう」
「っえ!」
「私が風呂に行くまでに良い口説き文句を考えておけ
――
応えてやらんこともない」
くるっと踵を返して自室に服を取りに行く。後ろから聞こえてきた良い返事にふはっと笑いがこぼれる
さて、どんな言葉をかけてくるのやら
まぁ少しならいいかな、と思いながら浴室の扉を開けた
「もっと身体が熱くなることしない?」
「却下」
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内