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ユキ
2025-12-25 16:03:41
33785文字
Public
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🌲🎏アドベントカレンダー
同棲している杉元と鯉登が過ごす12月をまとめたものです
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【⠀12月1日⠀】
「ただいまぁ」
「おかえり」
明かりのついた部屋の中から返ってくる声に寒さに強ばっていた身体からほっと力が抜ける
かじかむ手を擦りながらアザラシのキーホルダーが付いた鍵を靴箱の上に置いて靴を脱ぐ。綺麗に手入れされた靴の横に並んだ自分の靴を見てそろそろ新しいの買おうかなぁと思いながら洗面所へ向かう途中でリビングの扉から顔をのぞかせた鯉登に声をかけられた
「杉元」
「ん?」
「風呂、先に入っておけ」
「ん、おっけー
……
鯉登は?」
「後で」
「
……
いっしょにはいる?」
「
……
明日も仕事だ」
馬鹿か、と言いたげな顔でそう言って扉の向こうへ消えた鯉登を見送ってから洗面所に入った
(
……
仕事じゃなかったらいいんだ)
ふんふんと鼻歌を歌いながら服を脱いでさっと風呂を済ませる。ふわふわと柔らかいタオルで髪を拭きながらリビングに入ればちょうどテーブルの上に出来上がった料理が並べられているところで、手伝おうとすればさっさと髪を乾かして来いと追い払われた
「「いただきます」」
お互いの予定が書き込まれた壁掛けのカレンダーは昨日から最後の一枚になっている
お互い仕事が忙しくなるだろうからこうやって二人揃って温かいご飯を食べられる日も少なくなるだろうなぁと、自分が作るよりも少し甘めの味付けの味噌汁を口に運ぶ
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした
……
片付けとくから風呂入っといでよ」
「ん、頼んだ」
鯉登は使ったものを洗いながら作ってるから、残ったものをタッパーに移して食器を洗って、ある程度片付けてから、コタツにもぐりこむ
二人で使うには小さいから引っ越した時に買い換えようかと思っていたのにこれでいい、と鯉登が言うからそのまま持ってきた小さいコタツ。今度なんでか聞いてみようかな、ぺたりと冷たい天板に頬をくっつけて目を閉じた
「起きろ」
げしっと背中を蹴られて目が覚めた。どうやらあのまま寝てしまっていたらしい。ぼんやりとする頭を振って眠気をはらう自分の横にどかりと腰を下ろした鯉登がん、とビールの缶を差し出してくる。まだ寝るには早い時間なのを確認してプルトップに指をかける。缶を一度合わせてからぐっと呷り息を吐く。おっさんくさい、と隣で笑う鯉登がもたれかかってくる。風呂上がりの身体はほかほかと温かく、しっかりと乾かされた髪がサラサラと首筋を撫でる
兆しそうになるものを、明日は仕事とひたすら唱えて落ち着かせているこっちの苦労も知らずにくぴくぴと缶を傾ける鯉登が可愛くて憎たらしい
「
……
お前分かっててやってる?」
「んー?
……
ふふ、どうだろうな」
じとりと睨みつけても、くふくふと笑う鯉登に大きく息を吐いてぐしゃりと髪を撫でてやる
ちらりと目をやったカレンダーの下の方に咲いている花丸は買ってすぐに書き込んだ二つのうちの一つ
やめろと言いながらも楽しそうな恋人の誕生日まであと少し
【⠀12月2日⠀】
「杉元」
出掛ける準備を終えて入った部屋の中、ひやりと冷たい空気から逃れるためかすっぽりと頭まで布団に潜り込んでいる同居人に声をかける
ベットの端に腰掛け、もぞもぞと動く布を持ち上げて中を覗き込めばぎゅぅっと眉間に皺を寄せた杉元が薄らと目を開けた
「おはよう」
「んん
……
おはよぉ」
ぱちぱちと瞬きを繰り返す杉元がくわりと欠伸をこぼして身体を起こそうとするのを肩に手を置いて阻止し、そのままめくった布団を元の位置に戻してぽんぽんと叩く
「まだ寝てていいぞ」
カーテンの向こうはまだ薄暗い
もごもごもぞもぞと動く杉元を宥めるようにリズム良く手を上下させていれば五分ほどでようやく大人しくなった
ベットサイドで緑色に光る時計の針はそろそろ家を出ないとまずい時間を示している
そろそろ行くか、と起こさないようにそっと立ち上がろうとした時ぎゅっと手を握られた
「いってらっしゃい」
「
……
いってきます」
布団から顔を覗かせた杉元がぼんやりと、けれどしっかりと目を合わせてそう言ってくるのに、きゅっと手を握り返してからそう返せば満足そうに笑って力尽きたのか布団に顔を落とす
力が抜けた手を外してすぅすぅと穏やかな寝息をたてる杉元の頭を軽く撫で、音を立てないようにゆっくりと部屋を後にした
自動ドアから一歩踏み出した途端に吹き付けてきた冷たい風にぶるりと身体が震える
鞄を一度持ち直してコートのポケットに両手を収め、だんだんと明るくなる街に足を踏み出した
冷たく乾いた空気にピリピリと痛む顔をお気に入りのマフラーに埋めてカサカサと音を立てる黄色い落ち葉の上を歩く
コートのポケットの中で軽く握った右手がいつもならすぐにかじかんでしまうのに、今日はまだぽかぽかと温かいままなのがなんだか面白くてふふ、と笑みがこぼれた
夜のうちに雨でも降ったのか、少し濡れた道の上を滑らないように気をつけながら歩いていれば徐々にほかほかと身体が温まってくる。布の内側に籠ったぬるく湿っぽい空気に少し息苦しくなって顔を上げた
はぁと空中に吐いた息が白く染まり、どんよりと曇った空に消えていく
「
……
鍋、食べたいな」
何がいいかな、やっぱり肉だろうか
いや蟹なんかもいいかもしれない
一緒に食べたいから後で杉元の予定も確認しておかないと
そんなふと思いついた、なにかと忙しないこの先の小さな楽しみに心を弾ませながら駅へと向かう足を速めた
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