トウメイ希望
2025-10-11 16:20:19
21571文字
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【ルデナナ】道の先へ

牧場物語「三つの里の大切な友達」の二次創作。ルデナナです。
 一年目。春から夏へかけてぐらい。
 憧れを胸にその道に飛び込んだお嬢さんが、現実を知って、悩んで、乗り越えて、強くなっていくのっていいよね。そんな妄想を収穫しました。
 ルデナナは甘さ控えめ、ほんのり香る程度。
 初めて書いたルデナナ小説です。今見返すと恥ずかしいよう。以前は某所で公開していたのですが、諸事情により非公開にしたためこちらで公開します。



 ああ、今日はルデゥスが集荷当番だったのか。
 買い取ってくれてありがとうよ。これからも贔屓にしてやってくれ。
 あいつは甘ったれだが、良いものを持っている。心から自然に奉仕できる奴は、そう多くない。

 ナナミはいい子だし、真面目だし、やる気もあるんだが……そういうやつは、テキトーな奴よりも、時として厄介だ。
 折れる時は根こそぎボキっと折れかねない。ああ見えて、相当ガンコだしな。
 だから父親も反対したんだろう。

 それで、どこから聞いていた? ……そうか。しかし、オマエも間の悪い男だな。

 もし、ナナミが牧場をやめたらどうする、って?
 そうだな……そういうこともあるかもしれねえ。勿体ないとも残念だとも思う。それに、寂しいな。
 だが、半端な覚悟でだらだら続けていたら、傷はもっと深まるばかりだ。
 家畜だってどんどん増えて、別れが辛くなるし、処分しなきゃいけないやつも出てくる。
 今なら、万が一辞めちまっても、こっちで引き取れる。

 ナナミが大きな動物小屋について聞いてきた?
 ……そうか、ルデゥスは大工だったな。
 今の狭さじゃ、牛が妊娠できない。だからナナミも動物小屋を大きくしようとしたんだが……
 子牛が生まれたら、オスでも育てたいと言い出してなぁ。
 そこからは、ルデゥスも聞いた通りだ。
 
 性別の分からない子牛を増やすよりも、メスを買ってくればいいんじゃないかって?
 ああ……ルルココ村は海があるし、果物も自生するから、家畜は飼わないんだったな。
 それじゃ知らないのも無理ないか。

 ナナミは牛を増やしたいんじゃなくって、今いる牛に牛乳を出してほしいんだ。

 ……意味が分からないって顔しているな。
 つまりだ、ルデゥス。人間の女も母乳を出すが、ナナミは出さない。何故だ?
 ……そういうことだ。牛だって同じさ。
 赤ん坊の母親じゃなきゃ、母乳なんて出ない。
 だから牛乳をもらうためにゃ、妊娠と出産を繰り返して、赤ん坊がもらうはずだった乳をいただかなきゃいけないのさ。

 ……正直、イヤな話だよな。残酷だから。
 ルデゥスが知らないのは構わないが、あいつは専門家になったんだ。
 げんなりするような現実も知っていかにゃ……

 しかし、ダリウス……兄貴は、ナナミを本当に牧場から遠ざけて育てたんだなぁ。
 この程度のこと、ウェスタウンの連中なら子供でも知ってるぜ。
 ナナミは女なんだから、メスってだけじゃ牛乳が出ないことぐらい、自分の体で考えりゃ分かりそうなもんだが……

 ……なんだ、その顔……夕陽じゃ誤魔化せないぐらい赤いぞ。
 ははァ、さては照れたな?
 はっは! そうかそうか、オレ達にとって繁殖は日常だから、つい忘れていたよ。
 硬派な顔して、ルデゥスもしっかり男なんだなぁ。
 ところでアンタ、恋人は? へェ!
 うちのナナミはどうだ? 少し甘ったれだが、見ての通り美人だし、気もいいぞ。
 あれはイイ女になる……悪かった、からかいすぎたよ。

 妹分、か。
 ナナミの家は女ばっかりだからなぁ。
 身内の男が頑固親父だけじゃ、あいつも気が滅入るだろう。
 アンタみたいな兄貴分を持ててナナミは幸せだよ。

 うん? ナナミは甘ったれずに十分頑張っているって?
 ……そうだな。オレも気負いすぎているのかもしれん。
 兄貴から頼まれた手前、半端なことはやりたくないからな。

 今日はありがとう。そっちでは「アリンガ」だったか?
 これからもあいつを気にかけてやってくれ。じゃあな。




 ──青年の背中を見送りながら、フランクはぽつりとつぶやいた。
……『可愛い妹みたいなもん』、ねぇ……
 その声を聞いたものは、居ない。